機能性表示食品・化粧品販売の広告表現の実際〜ジャパンライフサイエンスウィーク2017

2017年4月19〜21日、東京ビッグサイトにて国際医薬品開発展〜ジャパンライフサイエンスウィーク2017が開催された。この中から、斎藤 健一郎氏(丸の内ソレイユ法律事務所 弁護士)の講演「知らなかったでは済まされない〜機能性表示食品・化粧品販売のための広告表現の実際」を取り上げる。


法規制対処、まず優先すべき事項から

コンプライアンスを遵守して、クリーンなビジネスを行いたいとどの企業も考え取り組んでいる。

しかし、とくに健康食品や化粧品などの企業は知らないうちに悪意なく法令を逸脱し行政から指摘を受けることが少なくない。

企業としてもどのように対応すべきか頭を抱える、などの相談をよく受けると斎藤氏。

健康食品の販売で問題を起こさないようにと、コンプライアンス遵守に資金を投入しようと考える企業も少なくない。

しかし、それもコストがかかりすぎる。まずは法規制の概要を頭に入れ、優先事項から取り組むのが得策だという。

薬事法の摘発や行政処分、年間100件近い

例えば、健康食品で重要な法律は「薬事法」「景表法」「健康増進法」「特別商取引法」だが、この中で最も指摘されやすく、また社会的インパクトやリスクが大きいのは「薬事法」「景表法」。

この2つは、場合によっては逮捕者が出たり、大きく新聞報道される。ネットでは、そのニュースが残り続け、大手ほど損失が大きくなる。

実際、薬事法の摘発や行政処分の件数は多く、逮捕者が出たり、刑事事件として摘発されるものが1年で100件近くコンスタントに生じているという。

まずは薬事法と景表法の遵守に注力

また、景表法については薬事法ほどのインパクトはないが、年間数十件程度の処分がコンスタントに行われている。

これには課徴金制度があり、過去3年に遡り、売り上げの3%を国に徴収される。

ちなみに特商法などは課徴金もなく、摘発の件数もほとんどない。そこまでコストをかけたり優先順位の上位となる法令ではない。

まずは薬事法と景表法の遵守をどのように行うかに注力すべきであろう、と斎藤氏。

パッケージのライティングで逸脱するケースも

機能性表示食品がスタートしたことで、薬事法と景表法で逸脱しているケースが多く見受けられるという。

機能性表示食品は4月13日現在、849件受理されており、今後もハイスピードで増えていくことが予測される。知名度も上がり利用者も増え、あらゆるメーカーが市場を注目している。

この制度の最大のメリットは、届出が受理されれば機能性が商品に明記できるということ。

もちろん受理された届出をそのまま記載することは問題ない。しかしそのままではわかりにくい、長すぎる、注意書きが多すぎる、書ききれない、といったデメリットがあり、多くの場合「より魅力的な形にリライト」される。

これが売り上げを左右するため、届出から逸脱したライティングを行ってしまう企業が非常に多いと斎藤氏。

逸脱した表記をしている企業が多い

例えば、商品そのものではなくシステマティックレビュー(文献調査)で受理してもらっているのに、あたかもその商品そのものにそのような機能があると書いてしまう犯しがちなミスもある。

体脂肪を減らすなどの機能が「脂肪燃焼、脂肪分解、どんどん痩せる」などに転換されてしまうと完全にNGである。

このような逸脱した表記をしている企業が多く見受けられる。「商品が受理されたから」とガードが緩み、「受理されたからOKだろう」と甘くなりがちになる。

これまでのところ行政指導が入った事例はないが、「それなら届出から多少逸脱してもOKなのでは」と考える企業や「せっかく受理されたのだから、多少逸脱してでも売りたい」という相談もあるという。

AIがネット上をパトロールし摘発

消費者庁の表示対策課長は今年2月、届出を出した全ての事業所に対し「逸脱した表記はダメ、景表法を遵守せよ、届出のあった全ての商品のウエブサイト等における表示の状況を確認&監視する、問題があれば法執行する」という内容の通達を出している。

この取り組みに、すでに国家予算も付いており、実際はAIがネット上をパトロールし摘発する仕組みになっているという。

これは東京都も行っているが、機能性表示食品の制度が始まり、商品も増え、多くの事業者の気持ちが緩み始めている今、消費者庁は「誇大広告の取り締まり」も考えているという。

届出の範囲を超えたライティングは危険

また、機能性表示食品として受理された商品のページを見ると逸脱しているものが多く、届出の範囲を超えたライティングは非常に危険であることを認識して欲しい、と斎藤氏。

最近多いのが、機能性表示食品の届出をしていないのに、あたかも機能性表示食品のような見せ方をしている健康食品である。届出していないにも関わらず、「機能性サプリメント」「機能性乳酸菌」と名乗る商品も、行政はしっかりチェックしており危険だという。

アフェリサイトも広告主が処罰対象に

また、自社サイトで控えめな広告をしていても、アフェリエーターに逸脱した内容を書かせている場合も処分の対象になる。

実際、消費者庁は28年6月、「アフィリエイト上の表示についても広告主がその表示内容の決定に関与している場合、広告主は景表法及び健康増進法の措置を受ける事業者に該当する」と通達を行っている。広告代理店経由でアフィリエイターを使っている場合も同様だという。

では、どのように広告やパッケージを展開させればより安全か。

それには、消費者庁の発表しているガイドラインに準じるか、業界団体(一般社団法人 健康職員産業協議会と公益社団法人 日本通信販売協会)が提案している「機能性表示食品適切広告自主基準」に準じるのが適切であろうと斎藤氏。

とはいえ、これもあくまで自主基準であり、消費者庁のガイドラインも自主基準の方も厳格すぎて機能性表示食品のメリットが活かせないという面もある。だが、法執行された時の損失を考えると、やはり慎重にならざるを得ない。

機能性表示食品のニーズが高まっているからこそ行政の監視も厳しくなっている。そこを注意してパッケージや広告展開を行って欲しいとまとめた。



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