拡大する機能性表示食品市場のマーケティング戦略〜ジャパンライフサイエンスウィーク2017

2017年4月19〜21日、東京ビッグサイトにて国際医薬品開発展〜ジャパンライフサイエンスウィーク2017が開催された。この中から、飯塚 智之氏(株式会社矢野経済研究所 フード・ライフサイエンスユニットフードグループ)の講演「拡大する機能性表示食品市場のマーケティング戦略」を取り上げる。


ヘルスクレーム、中性脂肪関連が最も多い

機能性表示食品市場は、制度発足初年度の2015年、446億円でスタートした。

次年度の2016年は約3倍の1,483億円に達することが見込まれ、制度と商品の本格化と市場拡大が確実になってきている。

機能性表示食品については、「明らか食品(加工食品と生鮮食品)」も表示可能となっている。

しかし、実際の食品別構成比をみると、サプリメント(錠剤のみ)が49.2%、加工食品が42.6%、生鮮食品が8.2%と、加工食品が検討しており、今後も伸びが予測される。

ヘルスクレームでは、生活習慣病関連(中性脂肪、血糖値、体脂肪、血圧)が最も多く、中でも中性脂肪関連は140件を超えている。

次いで、整腸系、肌(潤い)、アイケア、ストレス対策が多い。

難消化性デキストリン関連が多く届出

企業の届出では、松谷化学工業鰍フ難消化性デキストリンを含む商品が100件を超えている。

難消化性デキストリンは非常に使い易い素材で、どんな食品に添加しても元の味や風味を損なわないことが利点。

また、これまで特定保健用食品でも有効と認められてきた実績もあり、届出も比較的スムーズとなっている。

他に、よく使用されている機能性成分として、GABA、DHA・EPAがいずれも70件を超えている。

GABAはストレス関連か血圧対策のいずれかのヘルスクレームで届出が受理されている。

DHAやEPA、とくにEPAは医薬品としての実績もあることからエビエンスも豊富で、機能性表示食品に限らず、健康食品の主要成分として堅調に市場を拡大し、認知機能や中性脂肪などの機能性が認められている。

また、ビフィズス菌関連も多い。腸内環境や腸内フローラ、腸活の人気と共に注目される身近な機能性成分として成長している。

食品関連企業や小売業が参入

機能性表示食品への参入では、従来の健康食品販売業者だけでなく、食品関連企業や原料メーカー、小売業なども前向きに取り組んでおり、スギ薬局やイオンなどが届出受理となっている。

一般食品メーカーでは、ニッスイ(日本水産梶jが「海から、健康エパ(EPA)ライフ」というブランドで多数の機能性表示食品を展開している。

海産物加工品は中高年に人気だが、機能性表示を行ったことで中高年だけでなく、魚離れを自覚している若年層や女性層にも認知されている。

また、商品の美味しさも追求し、あらゆる世代に受け入れられることに成功している。

通販でも新たな顧客層を獲得

通販でコスメや健康食品を販売している潟tァンケルはもともと、20代〜40代の女性がメインターゲットであったが、「えんきん」のヒットにより40代〜50代男性の新たな顧客層の獲得に成功している。

ダイエット系サプリメントはブームやCMの有無で売り上げが流動しやすいが、ファンケルの定番商品の一つである「カロリミット」は、機能性表示を行ったことでリピートにつながっている。

カゴメのトマトジュースは、ブームにより売り上げが乱高下しやすかったが、機能性表示で40〜50代の男性が手に取るようになった。また50代の女性という新たな層を取り込むことにも成功している。

「機能性表示食品」の売り場整備を

多くの企業が機能性表示食品に前向きだが、トクホと同様、受理されたからといって商品が必ず売れるというわけではない。

とくにスーパーやドラッグストアで「機能性表示食品」という売り場が設置されるというレベルには未だ達していない。

その辺りも改善しなければ、苦労して受理されても売り上げにつながらないと声を漏らす企業もある。

とくに生鮮食品(機能性みかんやもやしなど)は新たな市場展開が期待されたが、実際は売り場との連動が図られておらず、目立たない販売になりがちだという。

国民の7割が機能性表示食品を認知

2016年に矢野経済研究所実施のインターネット調査(30歳以上の男女1193名を対象)では、機能性表示食品の認知については70%の消費者が知っていると回答、摂取の経験については20%程度となっている。

体の悩みについては「疲労、ストレス、加齢に伴う変化」が大きな割合を占めていたが、機能性表示食品に求める機能としては「内臓脂肪対策、中性脂肪対策」と、悩みと機能が必ずしも一致しない結果になっている。

また、機能性表示食品として望ましい食品として「お茶、ヨーグルト、生鮮食品(納豆など)、調味料」が挙げられ、嗜好性の強い食品や健康的な食品により付加価値があることが差別化になりそうだ。

健康食品にかける月額支出は3,000円ほど

体の悩みとして、「疲労やストレス」が多いにもかかわらず、それらは他に解消する手段があるため「疲労やストレスを食品でケアする」という意識や考えは消費者にはないようだ。

このあたりを戦略的にクリアすることが機能性表示食品の新たな市場開拓になるのではないか。

この調査で、消費者が実際に健康食品にかける月額の支出は3,000円ほどであることも分かった。

世代や性別にもよるが、商品は月3,000円未満に設計した方が継続性も高まり、消費者の手に取りやすいのではないか、とまとめた。



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