脳機能原料、プラズマローゲンとは
〜Ifia JAPAN HFE JAPAN 2017


2017年5月24日(水)〜5月26日(金)、東京国際展示場で、ifia JAPAN 2017 第22回 国際食品素材/添加物展・会議 HFE JAPAN 2017 第15回 ヘルスフードエキスポが開催された。同展示会セミナーより、丸大食品(株)中央研究所/(株)IHMの「世界初!注目の脳機能原料プラズマローゲン食品素材化に成功」を取り上げる。


親鶏、リン脂質が豊富

産卵を終えた親鶏は肉質が硬くなる。そのため、食用として利用されることが一般的なブロイラーと比べると少ない。

しかし親鶏は年間数億羽も産出されるため、その有効活用方法を見出すことが長年の業界課題であった。

そこで、丸大食品は親鶏の有効活用を模索する中、親鶏に「リン脂質」が豊富に含まれていることを発見したという。

特に鶏ムネ肉にはプラズマローゲンと呼ばれる脂質が豊富に含まれている。

これが親鶏の有効活用の鍵になるだけでなく、高齢者社会を迎え社会問題の一つとなっている「脳機能や認知症の予防と改善」に役立つのではないか、と製品開発の背景を解説した。

そもそも脂質には「単純脂質」と「複合脂質」がある。「複合脂質」は「リン脂質」と「糖脂質」に分類される。

プラズマローゲンはこの中でも「リン脂質」に分類され、他にリン脂質に分類されるものにホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、グリセロリン、スフィンゴリンなどがある。

プラズマローゲン、脳に多く存在

プラズマローゲンは他のリン脂質と違い「ビニルエーテル結合」という特殊な結合を持つ。また、抗酸化作用を持つ脂質でもある。

プラズマローゲンは人の体内にももともと含まれており、特に人の体内のリン脂質のうち15〜20%がプラズマローゲンである。大量の酸素を必要とする脳や心臓、腎臓や骨格筋に特に多く分布しており、脳にはとくに多く存在している。

体内のプラズマローゲン量は血中から測ることができるが、通常17歳頃から加齢により減少が始まり、60代を迎える頃にはピーク時の40%も減少してしまう。

アルツハイマー病者、かなりの量のプラズマローゲンが減少

アルツハイマー病型認知症患者の脳で、かなりの量のプラズマローゲンが減少していることが海外の研究でも報告されている。

以来、プラズマローゲンは認知機能にも関わる成分として各方面で研究が進められている。ちなみに日本の認知症の67.6%がアルツハイマー型認知症であるといわれている。

プラズマローゲンが抗酸化作用以外にどのような機能を持つかを研究するために、九州大学と共同研究を行った。

その結果、脳内炎症の抑制、アミロイドβ蓄積抑制、神経細胞保護と伸長促進、記憶行動の改善の4つの機能が確認された。

こうしたことは、アルツハイマー型認知症の進行過程のそれぞれに非常に役立つ可能性が期待できる。

というのも、アルツハイマーはストレスや活性酸素により、脳内に炎症が生じることで、APPという物質が生まれ、それがアミロイドβに変化、アミロイドβが蓄積することで脳内に老人斑が形成される。

それが神経細胞死を招き、認知症を促進させてしまう、というメカニズムがある。プラズマローゲンはこの認知症のステップに有効に作用する可能性が高いという。

マウス実験で、アミロイドβの蓄積が抑制

実際、マウス試験で、脳内に炎症が起きたマウスにプラズマローゲンを投与したところ、非投与群と比較して炎症が優位に抑制されたという結果が出ている。

このマウスは、前頭葉と海馬においてアミロイドβの蓄積が抑制されていた。

また、神経細胞を低栄養下で培養した場合、プラズマローゲンを加えた神経細胞は非投与群に比べ生存率が優位に高まった。

さらに、神経細胞にプラズマローゲンを加えたところ、プラズマローゲンの濃度が高いほど神経細胞の突起の伸長が促進されたという。

学習記憶能力の向上が確認

また、認知機能に異常のない通常のマウスにおいても、プラズマローゲンを与え水迷路試験を行ったところ、非投与群と比較してもゴールにたどり着くまでの時間が短縮され、学習記憶能力の向上が確認できた。

プラズマローゲンはもともと人の体に存在している成分だが、現在、丸大食品では国産の鶏ムネ肉のみを原料とした商品も完成させている。安全性もヒト試験で確認されており、他商品への利用などが期待されるという。

プラズマローゲンの4つの機能がアルツハイマーの予防や遅延に寄与できるのではないか、また、健常な人の摂取においても認知機能の維持に貢献し健康寿命の延伸に役立つのではないか、との結論に至っているという。


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