ネットの虚偽・誇大広告の監視強化
〜薬健研「平成29年度シンポジウム」


2017年6月8日(木)、東京都主婦会館プラザエフにて、薬業健康食品研究会「平成29年度シンポジウム」が開催された。この中から、阿南 久氏(一般社団法人 消費者市民社会をつくる会ASCON代表)の講演「機能性表示食品の選択と利活用〜真に役立つモノにするために」を取り上げる。


機能性表示食品をより的確・適切な表示で

元消費者庁長官である阿南氏は、2014年に「消費者市民社会をつくる会ASCON」が設立した際、同会の代表を務めている。

ASCONとは、消費者が「消費力」を高め、企業が「消費者志向経営力」を持って運営できるよう、学び合いの場を設け、教育や啓発事業を推進するという団体である。

現在は主に学習会やセミナーを一般消費者向けに行っている。また、2015年10月には「ASCON科学者委員会」を設け、機能性表示食品を中心に健康食品を独自基準で評価している。

そして、その評価から生じた質問や意見を企業に提示、また企業からの回答をサイトに公開し、消費者の商品選択に役立つよう努めている。

こうした活動には、企業に機能性表示食品をより的確・適切に、分かりやすい表示で届け出してもらいたい、という狙いがいるという。

170製品の機能性食品を評価

ASCONでは、企業が的確に消費者ニーズを把握し、それに適った商品を提供できるようにすることを「消費者志向経営」と呼び、企業向けの「消費者志向経営」セミナーも開催している。

消費者と企業の双方の歩み寄りと対等な関係があってこそ、安心安全な市場の実現が叶うのではないか、と阿南氏。

また、ASCON科学者委員会では平成27年4月施行の機能性表示食品について、消費者庁に届けられた商品の科学的根拠をASCONの独自基準で評価、昨年は170製品が対象となった。

それらを、A(十分に科学的根拠がある)、B(かなりの科学的根拠がある)、C(ある程度の科学的根拠がある)、見解不一致(科学的根拠に達するための追加資料が必要)、の4段階判定を行った。

その結果、31製品がA評価、76製品がB評価、42製品がC評価、16製品が見解不一致になった、という。

虚偽・誇大広告の監視を強化

つまり170製品のうちの1割が見解不一致に相当したことになるが、その理由としては商品を使用する対象年齢を「18歳以上」としていたものがあったこと。

もう一つは、BMI値が30を超える被験者でも医師の判断で被験者に加えることができるかどうか、という点で独自の判断基準を持つ企業があったということが挙げられる。

今年2月、日本サプリメント株式会社が、景表法違反で消費者庁から措置命令を受けた。

また、5月にはトクホ商品買い上げ調査で、関与成分が許可申請所の記載通りに含有されていないとされ、株式会社佐藤園の2商品が自主回収となった。

現在は、ネット上における虚偽・誇大広告の監視が徹底しており(ロボット検索システム使用)、「がん」「動脈硬化」等疾病の治療や予防の表現が含まれるものや「ダイエット」「発毛」など容貌を変えるような表現への規制を強化しているという。

改善要請を受けた商品は501品

今や、ASCONのような市民団体や消費者団体だけでなく、消費者庁などの国の機関も健康食品の表示への監視を強め、安心安全な市場作りに努めている。

直近のインターネット上の監視では、平成27年度に501品が改善要請を受け、全て改善が完了しているという。

特に機能性表示食品制度については、事業者責任とはいえ、事業者以外の機関による事故情報の収集や買い上げ調査、収去試験などは必須であり、そうした皆で育てていく制度、表示、商品であることが望ましい、と阿南氏。

企業はホームページだけでなく店頭や工場見学など行い、消費者との対話の場をもっと設けるべきである。また、消費者も賢くなり自分の消費行動に責任を持たなければならないと阿南氏はまとめた。


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