ホルモンから考えるアンチエイジング
〜第2回ウエルネスフードジャパンセミナー


2017年7月25日(火)、東京ビッグサイトで、第2回ウェルネスフードジャパンが開催された。同展示会のセミナーから、堀江 重郎氏(順天堂大学大学院 医学研究科 泌尿器外科学 教授)の講演「ホルモンから考えるアンチエイジング」を取り上げる。


サプリメント研究、100人規模の試験が限界

泌尿器の領域で最も知られるハーブにノコギリヤシがある。

18世紀頃からノコギリヤシの効果効能に関する文献は存在し、アメリカンインディアンなども昔から排尿障害やED、男性更年期に役立つ民間薬として使用していた。

現在、ノコギリヤシは欧米や北米では医薬品として使用されている。

しかし本当に効果があるのかどうか、実際のところ専門家でも議論が尽きないのが現状だ。

サプリメントの研究では多くて100人規模の試験が限界のため、有意差が出ていても結論付けるのは難しい。

そこで米国の医師会JAMAでは、メタアナリシスによって包括的な結論を出すことにしている。

しかし、実際プラセボ群とノコギリヤシ摂取群で比較すると、体感でもノコギリヤシ摂取群の方に有意差が出るだけでなく、尿の出方について計測した場合でも有意に良い改善が見られる。

こうしたことから、現在のところ他覚所見でも有効と考えられており、ノコギリヤシのエビデンスはかなりの量が蓄積されている。

日本ではノコギリヤシは機能性表示食品と認可されていない。

機能性表示食品はあくまで健康な人を対象にしている。排尿障害や男性更年期に効果があることは書けない、と堀江氏。

テストステロンの低下、イライラや不安が増える

ホルモンにはさまざまあるが、女性ホルモンに比べあまり注目されていない男性ホルモンについて堀江氏は解説。

男性ホルモン「テストステロオン」は別名「冒険ホルモン・社会性ホルモン・競争ホルモン」とも呼ばれる。

テストステロン値が高い男性は意欲的で、我慢強く、社会性が高いためボランティアをしたり、不安を感じにくい、公平や公正を求めるようになるといった特徴がある。

しかしテストステロン値が低下するとイライラや不安が増えるだけでなく、痛みや疲れを感じやすくなる。

また、眠りが浅くなったりすることもわかっている。テストステロンは加齢とともに低下する傾向にあり、老化現象の1つと考えられている。

テストステロン、40代から減少

女性ホルモンのエストロゲンは閉経の少し前から一気に低下し、閉経後には確実に低下していく。これはすべての女性が避けて通れない。

しかし男性ホルモンのテストステロンの減少は、80代になってもほとんど低下しない人もいるなど個人差がある。

統計的には加齢とともに低下傾向にあるが、老化しても高い値を維持している男性は少なからずいる。

ちなみにテストステロンの減少は40代あたりから体感し始めることが多い。

40代〜60代において1日のテストステロンの変動を調査した試験によると、60代は日中変動が少ないのに対し、40代・50代は日中にテストステロン値が大きく低下するなど、日中変動が激しいことがわかっている。

これは「ストレス」の影響であり、男性ホルモンは加齢よりも環境に影響を受けやすい可能性があることが示唆される。

テストステロンの減少、生活習慣病や鬱と関連

必要以上にテストステロン値が低下していることを「テストステロン減少症」と呼ぶ。

テストステロンの減少が必ずしも加齢ではなく、ストレスなどを含め環境にあることを知って欲しい、と堀江氏。

実際、欧米では「テストステロン減少症」を病気として理解し、男性更年期についても理解が進んでいるという。

つまり「老化だから仕方ない」では済まされないということ。というのも、テストステロン減少症が生活習慣病やうつ、認知症などの原因にもなりうるからだ。

現在は保険外の治療になるが、いずれ一般的な疾病として治療できる日も遠くないかもしれない、と堀江氏。

前立腺がん、2015年に男性のがんのトップに

男性の更年期症状に良いとされるサプリメント成分に、玉ねぎなどのネギ類に含まれる含硫アミノ酸、亜鉛、レスベラトロールなどがある。

日本で男性更年期障害が増えているが、それ以上に多いのが「前立腺がん」で、2015年には胃がんを抜いて男性のがんのトップになっている。

現在のところ、前立腺がんも環境によって発症率が異なることがわかっている。

ちなみに、日当たりの良い国は前立腺がんになりにくい(おそらくビタミンDの作用と推測される)、乳製品や高脂肪食の国はなりやすい、オメガ3の摂取率の高い国はなりにくい(魚介類を豊富に摂取するイタリア人はなりにくいが、隣国のフランスは高脂肪食のため罹患率が高い)、大豆や緑茶の摂取が多い国もなりにくく、トマトの摂取が多い国もなりにくい、といった疫学調査がある。

他にも、ウコンに含まれるクルクミンや大豆イソフラボンの摂取も効果的で、これらは潜在的な前立腺がんの発症を、がん細胞のアポトーシスを引き起こすことで抑制していると報告されている。

医学的エビデンスの蓄積を

機能性食品の戦略的な成分、エクササイズ、ストレスマネジメントなどでライフスタイルを調整することで遺伝子の発現に変化が起こることがわかってきている。

日本はこれまで「若い世代に道を譲る」「定年」「引退」という考え方が主流であった。

これは先進国の中で日本だけの発想であり、高齢化社会・人口減が最大の問題となっている現在の日本でこの考え方は当たり前であるがもはや通用しない。

男性ホルモンは必ずしも加齢とともに減少しない。男性ホルモン減少のサインとしてほとんどの中高年男性が性欲減退を最初に体感するはずだが、それがEDにまで至った場合は、その背後に心臓、脳などの動脈硬化が始まっているサインと捉えた方がいい、と堀江氏。

医療費の問題もあり、サプリメントも知識を持って選べるようにするのが望ましい。そのために医学的エビデンスを蓄積したり、未病での介入試験を積極的に行う必要があるとした。


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