老化物質のAGEs、容易に測定する機器を開発〜ダイエット&ビューティーフェア2017

2017年9月11日〜13日、東京ビッグサイトで、第16回 ダイエット&ビューティーフェア2017が開催された。同展示会セミナーより、 永井 竜児氏(東海大学農学部バイオサイエンス学科教授)の講演「AGEs測定の意義 〜生活習慣病とそれを防ぐ機能性食品、その評価方法」を 取り上げる。


体内のAGEsで老化度が推測

老化の原因はプログラム説、テロメア説、エラー蓄積説、などいろいろなものがある。しかし近年は「糖化」に原因があるのではないか、と言われつつある、と永井氏。

日本人の国民病といわれる「糖尿病」も老化現象のひとつと言えなくはない。高血糖やインスリンの異常を放置しておくと70〜80代で血管の梗塞が現れたり、腎症や神経障害、網膜症などが起こる得る。

しかし、現役世代や20代でもそれらが起こるケースが増えており、問題視されている。

健康診断等で健康の指標や主要マーカーとしてよく知られているものの一つに「HbA1c(ヘモグロビンA1c)」がある。

赤血球中のヘモグロビンのうちどれくらい糖と結合しているかを示す数値で、糖化最終生産物であるAGEsの前期生産物の1つといえる。

「AGEsとは炭水化物からできる老化物質」とも言い換えられるが、このAGEsが体内にどれくらいあるかでさまざまな病気のリスクや体の老化度を推測することができる。

体内のAGEsの測定は困難

これまで体内のAGEsを測定することは非常に難しいとされてきた。というのも、AGEsは糖代謝だけでなく、脂質異常やミトコンドリア異常といったさまざまな原因や経路で発生し、種類が豊富なためだ。

AGEsはゆっくり生成されるのではなく、数日でできる。またAGEsの分子量は小さすぎてタンパク質から抽出するのが非常に難しい。

加熱により発生するため、試験中に人工のAGEsが発生してしまう。これらのことで、測定が難しかった。

しかし、AGEsは骨に蓄積すると、骨の老化(変形)が進む。また、眼の水晶体に蓄積すると視力が低下することもわかっている。

AGEsが骨に蓄積しやすい

特に人の体内において骨はAGEsが蓄積しやすい部位であることが近年さまざまな研究で明らかになっている。

これまで「骨密度が高くても骨折しやすい人と、骨密度が高くなくても骨折しない人がいる」ことが説明できなかった。これがどうやらAGEs値の違いで説明できるのではないかと考えられている。

つまり体内やターゲットとする部位にどれほどのAGEsが存在しているかを測定することは、健康維持やアンチエイジング、予防医学に有効と考えられる。

AGEsを測定する幾つかの方法

AGEsを測定する方法として幾つかの方法がある。その1つがケトン体を測定する方法。ケトン体から生成されるAGEsはCELと呼ばれる物質で、測定が容易である。

またHbA1cもHbA1cの前駆体であるからこれを測定することでAGEsを推測できそうだが、HbA1cでは糖尿病の合併症などまではカバーできない。

またミトコンドリア由来のAGEsを測定するには、血中の2SCという物質を測定するという方法もある。

2SC濃度が高い人ほど糖尿病が進行しており、合併症を発症している人の2SCは非常に高いこともわかっている。

指先でAGEsを簡単に測定

シャープライフサイエンス鰍ナは、永井氏らと共同研究でAGEsを指先で簡単に測定できる機器を開発したという。

AGEsは「褐色」で、黄色人種の皮膚では正確に測れないと考えられてきたが、手のひら、しかも指先には黒人でさえほとんどメラニンがない。

また静脈の影響も老けにくいことから、左手の中指だけで測定することも可能である。

血液の採取も不要で、1分程度指先を機会に挿入するだけで、AGEsの蓄積レベルが測定できるという。

これだけで完全に測定できるわけではないが、気軽に計測できるようになれば、食生活の見直しや運動習慣の改善など、健康への意識向上につながる。

遺伝子検査は1度すれば変化がなく終了だが、AGEsは生活習慣や食習慣の見直しで改善できる。

AGEsを指標とした生活習慣病の予防や治療、サプリメントの効果の見える化などにも有効活用できるのではないか、とした。


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