必須アミノ酸、ヒスチジンの抗疲労効果
〜食品開発展2017セミナー


2017年10月4日(水)〜6日(金)、東京ビッグサイトで、「食品開発展2017」が開催された。同展示会セミナーより、味の素鰍フ講演「日々の疲れにアミノ酸〜ヒスチジンの抗疲労効果」を取り上げる。


ヒスチジン、抗疲労成分として注目

「疲労」で悩む人が増えている。とくに若年層や幼児で疲労を強く訴える傾向が強まっているようだ。

疲労の解消には、睡眠や休養が一般的だが、近年は食品による疲労回復のアプローチが知られるようになり、そのメカニズムについても科学的な解明が進んでいる。

機能性表示食品の中でも「抗疲労」商品は人気が高く、抗疲労成分で注目されているのが「ヒスチジン」。

タンパク質の構成成分はアミノ酸で、500種類程度あるアミノ酸の中でもタンパク質の合成に関与しているものは20種類。

この中で9種類が体内で合成できない必須アミノ酸に分類される。

ヒスチジンはアミノ酸の一種で、体内で合成できない必須アミノ酸のため、食品から毎日摂取する必要がある(乳幼児だけでなく成人にも必須)。

ヒスタミン神経疲労仮説

脳内で神経伝達物質として働いている物質にヒスタミンがあるが、睡眠不足やストレス、過度な集中といったことで、脳内のヒスタミン神経が過活動状態になると、ヒスタミンが枯渇し、一時的に減少してしまう。

それに伴い、脳からのさまざまな指令がスムーズにいかなくなり、疲労を感じるようになる。このことは「ヒスタミン神経疲労仮説」として知られている。

ヒスチジンは体内でヒスタミンを合成するヒスタミンの前駆体で、血圧を下げたり、神経機能を補助する役割を果たす。

ヒスチジンを経口摂取すると、すぐに血中に取り込まれ、それが脳内でヒスタミンに合成され、脳の前頭前野へ投射される。

これにより疲労感が減少するというのが、ヒスタミンによる抗疲労のメカニズムである。

ヒスチジンの摂取で作業効率がアップ

実際、ヒスタミンを経口摂取して、疲労感がどのように変化するかのヒト試験の結果も報告されている。

試験方法として、疲労感が高く、睡眠に不満を抱える中高年男性20名にヒスチジンを1.65g/日、朝食後に2週間摂取してもらい、疲労感や頭の冴えやパソコンで行うトランプゲームでの作業効率について調査した。

調査の回答はあくまで主観と体感によるものだが、ヒスチジンの2週間の継続摂取により、緊張感、抑うつ、怒り、疲労、混乱のいずれも減少したことが報告された。

また、単純な記憶や判断を必要とする作業効率をチェックするためにパソコンのトランプゲームを使った試験を行った。

その結果、正解率はコントロール群と有意差が認められなかったが、「遅延再生」で明らかな有意差が見られた。

「遅延再生」とは、記憶力や判断力をチェックするもので、神経衰弱ゲームのような方法で確認。ヒスチジン摂取群は、より短い時間と正しい記憶力で、正解に到達する傾向が有意に示された。

これにより、ヒスチジンの摂取により作業効率が大幅にアップする可能性が高い、と結論づけられた。

約70%の男女が「疲労」を感じている

ちなみに摂取したヒスチジンが脳内で速やかにヒスタミンに合成されるにはビタミンB6の働きが欠かせない。

そのため、ヒスチジンはビタミンB6と一緒に摂るか、あるいは一緒に摂れるような商品開発を行うことが望ましい。

少し古い出典だが、1990年の厚生労働省の調査によると、疲労を感じている人は日本人の約60%以上といわれ、味の素の2014年の「健康ウォンツ調査」でも健康で気になっていることとして約70%の男女が「疲労」と回答している。

抗疲労商品はまさに現代人のニーズにマッチしたものであり、ヒスチジンはそのニーズに応えられるのではないか、とした。


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