リンが体内に少ないほうが寿命が長い傾向
体内に存在するミネラルのリンは、骨内に蓄えられ、体内ではカルシウムの次に多く存在する。リンは主に食事により私たち人の体内に吸収される。
近年、このリンが体内に少ない人や動物のほうが寿命が長い傾向があることが報告され、リンの代謝がどのように寿命をコントロールするのかについて注目が集まっている。
慶応義塾大学医学部の宮本准教授らのチームは、リンに対し、寿命を制御する分子「Enpp1」がクロトー(長寿遺伝子として最近注目)の発現に影響を与えていると報告。
また、この作用が老化や寿命と関係していることが明らかになっていると報告した。
リン、適切に代謝されないと老化に
リンは吸収後、腎臓などで全身に循環し、不要なものは排出されるようになっている。
このメカニズムが正常に働いているマウスと、リンが体内でコントロールできないマウスのそれぞれに、通常食の1.5倍〜2倍程度のリンを摂取させる試験を行った。
通常のマウスは、リンを1.5倍〜2倍程度増やしても老化の特徴は出ない。
しかし、リンを正常にコントロールできないマウスは、動脈効果や骨粗鬆症といった老化現象が8週間程で現れ、やがて死んでしまうことが観察されている。
この老化現象から死を迎えるまでのプロセスはヒトの死のプロセスと非常に似ていると宮本氏。
この研究から、リンが体内で適切に代謝されないと老化につながる可能性が高いとした。
高リン食、寿命の短縮に繋がる
また骨形成や糖尿病発症に関係するたんぱく質「Enpp1」の欠損したマウスにリンを過剰投与した。
すると、通常の野生型マウスでは見られない骨粗鬆症や大動脈の石灰化などの老化の進行が起こり、数週間で死に至った。
この研究により、Enpp1が食事の際に摂取されたリンを制御し、体内の石灰化などによる老化防止に関与している可能性があると宮本氏。
近年、長寿遺伝子として注目され、腎臓で老化を制御しているクロトーについても、Enpp1が欠損したマウスにおいてリンの摂取が増えると、クロトーまでも有意に低下することが分かったという。
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