日本はヨウ素の資源国
ヨウ素が、実際にどのように私たちの生活に役立っているかはあまり知られていない。
特に近年は「放射性ヨウ素」が話題となっており、ネガティブなイメージを持っている人もいるかもしれない、と海宝氏。
しかし、ヨウ素は放射性ヨウ素だけでなく幾つかの種類がある。実は日本はヨウ素の資源国だということを知らない人も多い。
このヨウ素という資源をいかに利用するか、海宝氏は日々その研究をしているという。
そもそもヨウ素は1811年にフランスで発見された。原子番号は53番で元素記号は「l」。ナポレオン戦争の際に硝酸カリウムが大量に必要となり、海岸で海藻の灰を作り、ヨウ素を生産していたのが始まりであった。
そうした過程で、クールトアというフランスの科学者によりヨウ素が発見された。常温ではヨウ素は黒から紫がかった結晶の形をしているが、温めると紫色の蒸気が発生するという。
「かん水」を原料にヨウ素が作られる
ヨウ素の特徴としては、比重が4.9と重く金属に近い。また、融点が113.7度と低めである。フランスで発見されたヨウ素だが、その後ヨウ素の主要生産地はスコットランドやアイルランドといった海藻がたくさん取れるところに移動していった。
長い間、ヨウ素は焼却炉で海藻を燃やして生産されるのが一般的で、日本では1889年頃から千葉や神奈川、三重などで海藻を原料としてヨウ素の製造wを開始。これがのちの味の素、昭和電工といった化学企業のルーツになった。
その後、現在の最大のヨウ素生産国であるチリで「チリ硝石」の中にヨウ素が発見され鉱石から採取する方法が開発された。また、天然ガスと一緒に汲みあげる方法も日本やロシアで開発された。
塩分を多く含んだ水を「かん水」と呼ぶが、これにヨウ素が多く含まれており、日本では「かん水」を原料にヨウ素が作られている。
日本での生産増は困難
日本では江戸時代、千葉県大多喜町で天然ガスが見つかり、天然ガスから汲みあげる方法も採用された。
1935年頃にはかん水からヨウ素が「胴法」という方法で製造されるようになり、その後さらにいろいろな採取方法が研究開発され、現在は「ブローアウト法(揮発)」と「イオン交換樹脂法(吸着)」が主要な製造方法になっている。
世界ではヨウ素は年間3万トン以上生産されているが、日本が30%、チリが60%の生産を担っている。
チリのヨウ素は鉱山から採取されるが、日本はかん水から生産されるため、地盤沈下の問題が指摘されるようになり、生産量が増えなくなっている。
しかしチリでももちろん、産出に必要な大量の水の調達の問題を抱えており、いずれの産地でも急激に増産することが難しいという。
ちなみに日本国内では千葉が国内生産量の75%を占め、宮崎と新潟が千葉に主要生産地になっている。
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