カニの廃殻を資源利用
鳥取県は日本で一番人口が少なく、現在はわずか57万人だが、カニの水揚げ量は日本で第1位を誇り、その量は10万トン(年間)を超えるという。
これは日本で第2位の北海道の3533トンと比較しても圧倒的な量といえる。特に境港ではズワイガニがよく獲れるが、その分大量の廃殻が発生する。
ズワイガニに限らずどのようなカニでも、食品などに利用される身の部分はわずか30%で、残りの70%は廃棄処分となる。
この廃殻を資源利用することができないか、という想いが伊福氏らの研究のスタートであったという。
カニの殻はキチンという高分子でできている。これは多糖類に分類され、カニだけでなくエビやきのこの細胞壁にも含まれる豊富なバイオマス資源である。カニの殻はキチンの他にカルシウム、たんぱく質、アスタキサンチンなども含まれる。
キチンナノファイバーでジェル状の分散液に
カニの殻では、足の部分からキチンが抽出されることが多い。抽出方法としては、カニ殻からキチン以外の成分を全て取り除くとキチンだけの真っ白な殻が残る。
これを粉砕するとキチンパウダーになる。キチンパウダーやキチンフレークは、化学処理でキトサンやグルコサミンになるため、健康食品や抗菌製品などに利用できる。
しかし、キチンパウダーそのものの状態では使用されることがほとんどない。というのもキチンパウダーは水に溶けにくく、すぐに沈殿して、扱いが難しいため。
キチンやキチンパウダーには創傷治癒の効果が認められており、怪我をした動物にキチンパウダーを塗布しても明らかな治癒効果が確認できるが、やはり水に溶けないと使いづらい。
そこで、伊福氏のチームは、このキチンパウダーをさらに極限まで粉砕し、10ナノ(髪の毛の2万分の1程度)の極細繊維にした。こうしたキチンナノファイバーにすることで、水に含ませジェル状の分散液にすることに成功したという。
育毛でも優れた効果が報告
天然のキチンはカニもエビもきのこもファイバーの形で存在しているため、抽出した状態でもファイバー状で出てくる。
ではこのキチンナノファイバーはどのようなことで利用できるのか。
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