腸内フローラを活用したマーケティング戦略〜腸内フローラ研究会「第2回腸内フローラと食品開発」

2018年4月27日(金)、腸内フローラ研究会による「第2回 腸内フローラと食品開発、マーケティング戦略について」が開催された。この中から、 斎藤康雄氏(江崎グリコ マーケティング本部ブランドマネージャー )の講演「腸内フローラを活用したマーケティング戦略」を取り上げる。


ヨーグルト市場、この10年で4000億円規模に

斎藤氏はグリコの乳業関連でトップの『Bifixヨーグルト』に含まれるビフィズス菌ビフィックスの発見者でもある。

グリコといえば『キャラメル』がよく知られるが、この商品には当初、滋養強壮に良いということで牡蠣から抽出されるグリコーゲンが取り入れられていたという。

同社は、菓子から栄養源を供給することを目指し、創業時から「健康」や「予防」、そして「おいしさと健康」を会社のスローガンにしていた。

グリコが提供するヨーグルトは大きく分けると4ブランドで、主力商品はビフィックス。同品は2009年に発売以降、売上が右肩上がりを維持しているという。

しかし、これは商品力というより、「腸内フローラ」や「腸活」がブームになっているからで、ヨーグルト市場もこの10年右肩あがりで4000億円を突破しているという。

昨年、ヨーグルト全体の売上が前年度割れ

しかしながら、昨年、ここ10年で初めてヨーグルト全体の売上が前年割れした。この原因についてはさまざまな意見が挙がっている。

よくいわれるのが乳酸菌の機能が広く認知され、納豆やチョコレートなどヨーグルト以外で乳酸菌を摂る消費者が増えていること。

またヨーグルトについての市場調査で、「ヨーグルト(乳酸菌)の種類が増えすぎてよく分からない」「食べているけれど体感できない」「腸内フローラの話が難しい」といった、消費者とメーカーとの距離が感じられる意見もあるという。

そこでグリコでは「腸内フローラ」をよりわかりやすく解説し、マーケティングに取り組んでいるという。

お腹で10倍以上に増殖

ビフィックスはグリコが保有していた1万株以上のヒト由来の乳酸菌から発見されたビフィズス菌の一種で、他の菌と大きく異なる特徴として「お腹の中で10倍以上に増殖する」という性質を持つ。

一般的に「売れている」乳酸菌は「お腹の中まで生きて届く」「胃酸に強い」がキーワードだが、ビフィックスの場合、食べると胃の中ですぐに増殖がはじまり、腸で10から最大で60倍にも増えることがわかっている。

それが1週間程度で外に排出されるため、継続して摂るとお腹を善玉菌が優位な状態に維持するのに役立つという。

実際、ビフィックスを摂ると、すぐに胃と腸でビフィズス菌の増殖がはじまり、速やかに腸内全体のビフィズス菌量も増えていく。

増えたビフィズス菌は翌々日から排泄が始まるが、排泄が始まる前にビフィックスを取り、腸内の善玉菌が優位の状態を保っておけば、便通については約1週間で改善が見られ、14日目には短鎖脂肪酸が増加、1ヶ月で悪玉菌が優位に減少、2ヶ月で内臓脂肪の低下が見られるという。

ちなみにビフィックスは「便通改善」で機能性表示をしているが、「内臓脂肪の低下」については、エビデンスはあるものの他社の二番煎じになるため申請していないという。

腸年齢が若返る

また、同社では社内から「腸内フローラって結局何?」という意見が複数あったことから、今春から「腸年齢」をキーワードとして新たなキャンペーンや広告を打ち直しているという。

「腸年齢」は腸内の善玉菌と悪玉菌のバランスと実年齢との掛け算で算出するが、「肉食女子ブロガー」や「社内の健康意識の低い40代男性(女性)」など、腸年齢が実年齢より低そうな層の人たちに協力してもらい、ビフィックスを継続摂取した後にどのような変化が起こるかを測定した。

その結果、「肉食女子ブロガー54名」については腸年齢が平均で7歳若返り、「社内の健康意識の低い40代男性(女性)70名」については、腸年齢が平均で5.4歳若がえったという(いずれも約2週間の調査)。

腸内環境がさまざまな疾病に関与

よく知られているように、加齢とともに腸の中で善玉菌の数は減少していくが、これによって腸の老化が起こると考えられている。

腸が「老化」したからといって、特定の病気になることはまだ解明されていないが、腸内環境がさまざまな疾病の発生に関与していることや、近年では性格や体質との関係も指摘されている。

TVや雑誌などのメディアでも「腸内フローラ」という言葉はよく聞かれるし、腸内フローラの検査もより手軽にできるようになってきている。

消費者は幅広いため、腸内フローラやビフィズス菌の働きについてよりわかりやすく啓蒙していくことが、商品の売り上げや新製品の開発に役立つのではないかとまとめた。


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