酵素抽出法で、植物の機能性成分を抽出〜ifia JAPAN2018セミナー

2018年5月16日(水)〜18日(金)、東京ビッグサイトにてifia JAPAN2018「第23回国際食品素材/添加物展・会議と第16回ヘルスフードエキスポ」が同時開催された。同展示会セミナーより三菱ケミカルフーズの「植物からの機能性成分の抽出に有効な酵素の紹介」を取り上げる。


若年層の健康意識の高まり

今、機能性成分素材の市場が右肩上がりで成長している。

前例のない高齢化社会を背景に、多くの高齢者は健康寿命を延ばしたいと考え、中高年層もストレスや食生活の乱れなどから生活習慣病への意識が高まり、機能性表示食品やトクホ食品が堅調に売り上げを伸ばしている。

また、これまで健康意識が低いと思われていた若年層にも、「スマホによる目の疲れ」「脳疲労」「睡眠トラブル」「精神疾患」などが増えており、以前より健康意識が高まっている。

特に若い女性たちの美意識は高く、さまざまな健康食材やダイエット食材情報などがSNS等で瞬く間に広がっている。老若男女問わずに健康意識が高まっているため、関連企業はこれらの消費者ニーズに応えられれば大きなチャンスを得ることになる。

植物由来の成分、種類が豊富

この健康食品を支える鍵となる「機能性関与成分」は大きく「動物系」「植物系」「合成系」に分類できる。この3つの中では植物系の市場は規模としては一番小さい。

しかし植物由来の成分は種類が非常に豊富で、市場も「ナチュラル」「オーガニック」「自然」「優しい」といったキーワードを求めているため注目度は高い。

植物系の機能性成分としては、例えば「生活習慣病対策」としてカテキン、リコピン、ポリフェノール、イソフラボンなどがあげられる。

「アイケア対策」ではアントシアニンやルテイン。「ロコモ対策」ではケルセチンやβクリプトキサンチンなどが知られる。

「酵素抽出法」が注目

これらの機能性に関するエビデンス研究も大切だが、その研究を発展させるためにも、また機能性成分の効果を十分に発揮させるためにも、原料から機能性成分やそのエキスをどのように抽出するかが非常に重要となる。

一般的に、植物性の機能性成分は原料植物が前処理された後、何らかの方法でエキスが抽出され、それをろ過・殺菌・濃縮、というプロセスを経て製品化(液体や粉末など)される。

この工程の中でもエキスを抽出する工程は、製品の品質だけでなく、最終製品のコストに大きく影響する最も重要な部分である。

現在、主にこの「抽出」に使われる溶液は「水」「エタノール」「メタノール」「ヘキサン」の4種類だが、それぞれにメリット・デメリットがあり、通常は「水」での抽出が多い。

水による抽出は安全性が高いというメリットがあるが、抽出効率が悪いというデメリットもある。

「メタノール」や「ヘキサン」を使用すれば、抽出効率が上がるが、食品用途には適していない。

そこで「水」に変わる「酵素抽出法」に注目が集まっている。水と同様に安全性が高く、一方、水抽出の弱点である抽出効率を高められるからだ、という。

酵素は、触媒機能を持ったタンパク質であり、微生物や発酵動植物から抽出されたものである。

酸性・アルカリ性といった化学触媒とは異なり、温和な条件で反応が進み、酵素活性が失活すれば原材料表示が不要となり、少量の添加で抽出効率を高めることができる、というメリットがある。

「酵素は活性が失活すると原材料表示が不要になる」という特徴から、食品の中でどのように利用されているかイメージしにくいが、実際は製パン・製菓などの場面でも当たり前に使用されており、私たちの食経験も長く豊富で安全性が高いこともわかっている。

植物由来の機能性成分を抽出

では実際、この酵素を使用してどのように植物由来の機能性成分を抽出するのか。使用する酵素は1種類ではないが、どの酵素を使うのが最適かは原料による。そのため原料植物の構造を確認することが第一。

多くの植物は一次細胞壁と二次細胞壁といった食物繊維による硬い細胞壁に覆われているため、これを最適な酵素で破壊する。

植物細胞壁を壊すのに最適な主な酵素は、セルラーゼ、ペクチナーゼ、キシラナーゼなどで、原料植物によって酵素1種類で十分抽出できる場合もあれば、複数の酵素をミックスする方が効率良い場合もある。

また酵素を使うことで水を使った抽出より抽出効率が高まるものがほとんどだが、それだけでなく前処理との組み合わせも鍵となる。

例えば、たまねぎエキスの場合は水と酵素を加えただけでなく、40度のやや低温に加熱することで抽出率が3%から7.6%まで上がるという。

りんごポリフェノールは60度の処理がベストで、ニンニクの場合は酵素を加える前にこまかくカットしてボイルする処理を加えておくのが最も効率的であるという。

素材によって最適なやり方を見つける

酵素抽出法は水抽出法より効率が高い抽出法だが、抽出率をもっと高めるためには適正な酵素を選ぶこと、または複数の酵素を組み合わせること、酵素の添加量を加減すること、反応表面面積を増やすためにカットや高温処理などをどのタイミングで行うかなども大切になってくる。

酵素を添加しさえすれば良いというわけではなく、素材によって適切なやり方は異なるので、そこは最適なやり方を見つけるための多少の労力が必要となる。

しかし、機能性成分や機能性素材そのものの安全性の高さを考慮すると、水と同レベル、あるいはそれ以上に安全性の高い抽出法である。

さらに、原料となる植物の資源循環や資源再利用、廃棄部分の処理の問題なども注目されているが、酵素抽出法なら、それらのニーズに応えられる可能性が高い、という。


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