黒酢摂取による持久的トレーニングの効果
〜第5回日本黒酢研究会


2018年6月22日(金)、早稲田大学日本橋キャンパス大ホールにて「第5回日本黒酢研究会」が開催された。この中から、八田 秀雄氏(東京大学大学院総合文化研究科)の「黒酢摂取が持久的トレーニングの効果に与える影響」を取り上げる。


運動で健全なミトコンドリアが増加

東京大学の八田氏らのグループは、黒酢の摂取がマウスの安静時や安静時のエネルギー代謝、さらに黒酢摂取が持久的トレーニング(有酸素運動)の効果に影響を与えるかを検討した試験を行ったと報告した。

そもそも運動は食事と同様に健康維持に不可欠である。運動の最大のメリットは、細胞内に健全なミトコンドリアを増やし、すでに傷ついたミトコンドリアを除去することが最新の研究で明らかになっているという。

ミトコンドリアの状態があらゆる疾病や老化に関与していることが近年知られてきているが、運動によって健全なミトコンドリアが増えることは体の成長と修復に密接に関与している。

そのため、どうすればミトコンドリアが増えるのか、あるいは減少するのかについて、さまざまな研究が進められている。

脂質酸化に関連するβ-HAD活性で有意に

栄養学でいうと、アミノ酸の中でもロイシンがmTOR経路と呼ばれる経路を活性することでミトコンドリアの合成に関与することが報告されている。

黒酢にはアミノ酸が豊富に含まれており、運動の前後に摂取すれば持久的トレーニングによってミトコンドリアを増やすなどの効果がさらに高められる可能性が推測される。

八田氏らのチームは、これまでにカゼインペプチドの摂取によって持久的トレーニングの効果が高まるという研究を報告しているが、同様の試験方法を黒酢に応用したという。

まずはメスのマウスによる試験を行った。メスのマウスに3週間高脂肪食を摂取させ、黒酢(200mg/kg)または水を投与したうえで、持久的トレーニング(投与30分後に25m/minで60分間走)を週5回行わせた。

トレーニング終了後24時間後に組織を採取し、対照群(何も運動させずに水の経口投与のみ)と比較した。その結果、マウスの体重・内臓脂肪量はトレーニングによって低下する経口が見られたが、黒酢によって有意に低下するという影響は見られなかった。

ただし、脂質酸化に関連するβ-HAD活性のみ黒酢摂取トレーニング群が対照群に比較して有意に上昇したという。

血中乳酸濃度で有意差

一方、オスのマウスによる試験では若干異なる結果が得られたという。3週間高脂肪食を摂取させ、黒酢(200mg/kg)または水を投与した条件で、持久的トレーニング(投与30分後に25m/minで30分間走)を週5回行わせた。

メスの時より運動量を減らし、トレーニング終了後24時間後に組織を採取、対照群(何も運動させずに水の経口投与のみ)と比較した。

その結果、各群の体重には有意差が見られず、脂肪量についても黒酢の影響は見られなかったが、トレーニング直後における血中乳酸濃度が黒酢摂取群で有意差が認められたという。

運動前の黒酢摂取、脂質代謝が亢進

まとめると、メスの場合は黒酢+持久的運動で筋の脂肪酸活性が上昇し、オス場合は黒酢とやや短い持久的トレーニングで内臓脂肪が少なくなる傾向があった。

また運動直後の血中乳酸濃度も水を摂取した群より黒酢摂取群のほうが低下する傾向があり、これは運動時に脂質代謝が亢進することで、糖代謝が低下している可能性が考えられる。

つまり運動前に黒酢を摂取することで、運動時、運動直後の脂質代謝が亢進する可能性がある、という。

さらにこの結果について、黒酢に含まれるアミノ酸の影響だけでなく、他の基質、特に糖関連の中間代謝基質による影響を考えることができる、と八田氏。

今後、脂質代謝への影響をさらに詳しく検討したり、黒酢投与量を増やしたりすることで、黒酢と運動の相乗効果の可能性をさらに検討したい、とした。


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