この大きい目標の下にはそれぞれ個別目標が設定されているが、「飢餓ゼロ」の具体的な目標の一つに「2030年までにあらゆる栄養失調を撲滅し、若年女子、妊婦・授乳婦、および高齢者の栄養ニーズへの対処を行う」というもの。
健康リスクの早期警告
また、「食料適正価格の実現」「小規模食料生産車の所得倍増」などが盛り込まれており、「健康」の中でも「健康リスクの早期警告」「リスク管理のための能力強化」などが掲げられている。
日本学術振興会が提唱する「未病マーカー戦略研究」はこうしたSDGsの目標と深く関与している、と有本氏。
「未病マーカー戦略研究」とは、これまでは病気と未病の境界領域である人へのマーカーが主流であったが、これからは幼児から高齢者まですべての人々において「自覚症状はないけれど身体・心理状態に異常な兆候があるかどうか」をより的確に把握するための指標を研究し、確立するというものだ。
この戦略研究が推進されれば、21世紀の人の健康維持と増進には大きな貢献ができるだけでなく、SDGsの目標達成も叶うであろう。
高齢化は世界的な課題であり、「健康寿命」ではなく「健康労働寿命」を伸ばすことが急務とされているが、そのためにも人の持つ生体恒常性に注目し、恒常性維持の指標となる未病マーカーについてボトムアップで学術研究を行い、エビデンスを蓄積していくことは極めて重要である、と有本氏。
新たなイノベーションが期待
SDGsは地球規模の問題を解決するだけでなく、それによって各国の科学技術のイノベーションシステムやこれまでの常識を覆すような推進力になることも期待されているという。
例えば、大学では学部の垣根を超えた研究が必要となるし、国としては政治のトップダウンではなく、企業や市民からのボトムアップによる相互協力が不可欠であろう。
これからはSDGsの時代といわれる。SDGsのゴール達成に向けて、食と健康、医学と農業、企業と市民が連携し、新たなイノベーションが起こることが期待されている、とまとめた。
・