サバに含まれるセレノネイン、岩手県の復興支援でブランド化〜ウェルネスフードジャパン

2018年7月25日〜27日、東京ビッグサイトにて「ウェルネスフードジャパン」が開催された。同展示会セミナーより、上田 智広氏(農林水産省 食料生産地域再生のための先端技術展開事業における岩手県地域未利用資源を利用したセレノネイン含有食品開発 岩手県水産技術センター 上席専門研究員)の講演「DHA・EPAを超える魚の新機能性成分セレノネイン」を取り上げる。 


クロマグロに含まれるセレノネイン、強い抗酸化作用

セレノネインは、クロマグロの血液から日本人の研究者によって発見されたセレン含有の抗酸化物資で、マグロやサバなどの回遊魚に多く含まれ、強力な抗酸化作用を持つ。

これまで魚に含まれる機能性成分としてはDHAやEPAばかり注目されていたが、セレノネインは同じく強い抗酸化作用を持つ「エルゴチオネイン」と化学構造が似ており、活性酸素の除去作用は1000倍近く強い。

さらにメチル水銀の毒性を軽減する作用なども報告されており、まさに現代人に必要な機能性成分として注目を集めはじめている、と上田氏。

すでにセレノネインの単離にも成功しており、健康素材として商品化できる目処も立っているという。

岩手ブランドで新たな市場形成を

上田氏は震災復興の一環としても活用されているセレノネイン含有食品開発について報告。

東日本大震災から7年経過するが復興はまだ終わらず、遅々として進んでいない地域もある。

国としては復興支援事業をさまざまな形で行っているが、岩手県の沿岸部は震災後、漁業者が急激に減少している。

そのため、震災前の状態に戻すのではなく、新たな水産業のあり方やビジネスモデルの展開を考える必要に迫られているという。

中でも水産加工については震災前から問題があった。漁業が盛んな割には加工費用が高く、水産加工業は他の製造業に比べて原価率が高い。

また、さまざまな魚が獲れるのに岩手ブランドの魚が作られていないということも。例えば、鯖の水揚げ量は岩手県はかなりあるが、八戸前沖サバ(銀サバ)のようなブランド力はほとんどない。

震災後はゼロからビジネスモデルを構築する必要に迫られており、機能性成分などの付加価値をつけることで、新たな市場を形成することが復興支援事業として盛り込まれている、と上田氏。

セレノネインで、岩手県産の鯖をブランド化

クロマグロから見つかったセレノネインには優れた抗酸化作用があるが、実はサバからも豊富に抽出できることがわかっている。

鯖缶はすでにメディアの影響で品薄状態が続いているが、「鯖缶=ダイエット」だけでなく「鯖缶=アンチエイジング」「鯖=アンチエイジング」のイメージで、新たな鯖のブームが起こるかもしれない。

岩手で水揚げされた鯖は他の都道府県に送られることが多いが、岩手県内で加工されることも多い。もちろん鯖缶も製造されており、加工する際には残渣が大量に出る。

この鯖缶を作る際の残渣からセレノネインを抽出・加工することで健康食品に応用できれば、岩手県産の鯖がブランド化するのではないか。

これを復興支援に役立てることができるのではないか。この考えを基に商品開発が進められている、と上田氏。

セレノネイン、機能性の評価試験も完了

来年秋には陸前高田にセレノネイン加工工場が誕生する目処が立っており、すでに鯖から残渣を効率的に抽出したり、内臓からエキスを効率的に抽出する機械の開発と導入が完了している。

セレノネインの粉末やエキスを製造する下地はできており、後は量産や安定供給のための準備や、製造された粉末やエキスを健康食品などへ応用していくステップに入っている段階だという。

また、セレノネインの安全性試験や重金属のチェックなども問題なく完了し、機能性の評価試験も終わったという。

セレノネイン、健康食品として販売

この秋には鯖缶の残渣を利用したセレノネインの健康食品が販売される目処が立っているが、来年度は大規模製造に転換し、ある程度のロット数で生産を展開していく予定だ。

またサプリメントや健康食品の形での最終商品を開発し、販売するところまでしたいという。

これにより、岩手の水産業の復興や養殖魚の品質アップ、残渣の価値を高めることや、岩手の鯖のブランド化などにつながることを期待したいとした。

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