ヨーグルト、乳酸菌のプレバイオティクスとしての可能性〜東京工科大学先端食品セミナー

2018年8月21日(火)、東京工科大学 蒲田キャンパスにて第5回「東京工科大学先端食品セミナー」が開催された。この中から、大力 一雄氏(竃セ治 研究本部 研究戦略統括部 参与 )の講演「ヨーグルトと健康〜乳酸菌のプレバイオティクスとしての可能性」を取り上げる。


ヨーグルト独自の「3つの力」

食品業界では空前のヨーグルト、乳酸菌ブームが起こっている。が、冷静に考えなければならないことは「ヨーグルトは本当に健康に良いのか?」ということ。

特定保健用食品や機能性表示食品として、効果効能を謳っているヨーグルト製品も増えているが、本当に効果が体感できるのか、人の健康に有効かについて常に研究し続ける必要がある、と大力氏。

ヨーグルトが健康食品とされる大きな理由は「乳酸菌が含まれるから」ということであるが、乳酸菌はチーズや味噌、醤油、そして泡盛やワインにも含まれている。ヨーグルトブームに代わる食品がこれから登場してくることも予想される。

しかしヨーグルトの魅力は実は乳酸菌だけではない、と大力氏。ヨーグルトが健康食品といえる理由はヨーグルト独自の「3つの力」があるからという。

「菌体の力」「発酵の力」「乳の力」

その3つの力とは「菌体の力」「発酵の力」「乳の力」であると解説。まず1つ目の「菌体の力」とは乳酸菌を中心に、ヨーグルトがプロバイオティクス(腸内細菌の餌としての働き)として働き、これによりヒトの免疫が賦活する。

そして「発酵の力」。ヨーグルトは発酵食品であるため、消化吸収に優れ、乳糖不耐を軽減し、腸内で乳酸や多糖体などの発酵生産物を生み出すことで腸内フローラを活性する。

最後が「乳の力」。ヨーグルトは貴重なたんぱく質・脂質・糖質・ミネラル・カルシウム・ビタミンなどの補給源であり、消化管に負担をかけずに栄養を消化吸収できる優れた食品であるということ。

つまり、ヨーグルトの魅力は乳酸菌だけではない。そのため、ヨーグルト消費大国のブルガリアの病院では、入院すると1日3食、1回につき250gのヨーグルトを食べることを指導されるほどだという。

腸のバリア機能が高まり、腸の老化を抑制

とはいえ、ヨーグルトがヒトに与えてくれる機能性の鍵はやはりその中に含まれる「乳酸菌」が握っている。

明治では、プロバイオティクス研究にも力を入れているが、中でも注目している乳酸菌が「LB81乳酸菌(ブルガリア菌)」「ブルガリア菌OLL1073R-1」「ラクトバチルスガセリOLL2716とPA-3」の3つ。

「LB81乳酸菌(ブルガリア菌)」は、トクホ商品で、腸内細菌叢を整え、便秘を和らげる効果が認められている。また、近年は腸の中で「抗菌ペプチド」の発現を高め、腸のバリア機能を高めることが解明されている。

ストレスや老化で腸のバリア機能はダメージを受け、病原菌や有害物質の攻撃を受けやすくなるが、「LB81乳酸菌(ブルガリア菌)」の継続的な摂取により、腸のバリア機能が高まり腸の老化を抑制する可能性があるという。

NK活性を高め、風邪やインフルエンザの感染リスクを低減

「ブルガリア菌OLL1073R-1」については、「R-1」の愛称で周知されつつある。日本人の高齢者で長期摂取の試験も行っており、R-1の継続摂取でNK活性(免疫細胞)が高まり、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかるリスクを低減させることが報告されている。

またアスリートなどは激しい運動でNK活性が低下しやすいが、これもR-1の摂取で抑制できるという試験結果が得られているという。

未病の段階で病気を防ぐ

「ラクトバチルスガセリOLL2716とPA-3」の中でもOLL2716は「LG21」と呼ばれるもので、明治が保有する2500以上の株から発見された「ピロリ菌の抑制効果」が高いと乳酸菌である。

すでに胃に生息しているピロリ菌の増殖を抑制する作用や、ピロリ菌だけでなく薬剤による胃の炎症を改善する効果も報告されている。ただし、ピロリ菌を除去、除染する効果はないという。

PA-3は「プリン体と戦う」のキャッチコピーで知られる乳酸菌で、こちらも明治の保有する菌株の中から選び抜かれたもの。

PA-3の摂取で血清尿酸値の上昇が抑制することがヒト試験で報告されている。

しかし、もちろん高尿酸血症の予防には食生活の改善や適度な運動が不可欠である。ヨーグルトはあくまで食品であり薬ではないが、ヨーグルトの適切かつ戦略的な摂取により、未病の段階で病気を防ぎ、健康寿命の延伸に活用することは十分できるのではないか、とまとめた。


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