しかし、選手の多くがすでに高校時代に無月経などのFATを発症していることや、疲労骨折を受傷したほぼ全員の選手が長期にわたる減量を実施していることがわかった。
つまり、競技力向上のために早期により実施された食事制限が、結果として競技寿命を縮めたり、パフォーマンス向上を妨げている可能性が高い。
この考察から、海老氏は中学生での栄養教育が重要だと指摘。というのも、高校時代にFATを発症している人のほとんどが中学時代に食事制限を行っており、この時の習慣がその後も継続しているからだ。
中学生頃に第二次成長期を迎え、身体は急激に変化する。この時期に骨量をしっかり獲得し、FAT を起こさないように、また過激な減量が習慣とならないようにしなければ、その後のスポーツ人生だけでなく、成人した後の身体と健康状態にも悪影響を及ぼすことになる。
疲労骨折、14〜16歳の発症率が高い
また疲労骨折は14〜16歳といった成長期に発症する率が高い。これは骨が未熟な時期に過度な運動をしていることが主な原因である。
特に疲労骨折を起こしやすい部位の一つに腰椎がある。この場合、その後のスポーツ人生が絶たれてしまうこともある。
エネルギー不足(Low Energy Availability)によって起こる他の障害としては低BMI、血中ビタミンDの低下、筋肉疲労の蓄積、初潮の遅延などもある。
一方、野球などの競技の場合、男子アスリートの多くは増量を望むケースも多く、それに該当する子どもは非常によく食べるため、この場合はエネルギーを充分補っているイメージがある。
しかしバランス面が悪いことが多く、ビタミンDやカルシウムの不足により疲労骨折などの故障を起こしているケースが多数報告されているという。
また別の問題で「食トレ」といったことで「食べる」ことをノルマにしたり、無理矢理ごはんだけを「1食で3合食べるように」といった、誤った食事指導が未だなされている場合もあるという。
スポーツは人生を豊かにするアイテムの一つであるが、スポーツが食をも豊かにするのが理想ではないか、と海老氏。そのためにスポーツ栄養士の活用などを中心に、ジュニアアスリートの成長と子どもとしての権利を保護できるような食事指導が行われることが望ましいとまとめた。
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