そのため、ローリー氏らは微生物(さまざまな共生菌)を「オールドフレンド」と捉え、古来より私たち人間の免疫システムを担ってくれている大切な友人なのだ、と解説する。
炎症性の腸内細菌の増殖を抑制
体内で慢性的な炎症が起こると、精神障害の発症リスクを高めるが、炎症の軽減により、精神障害の予防や治療の可能性がある。
ローリー氏らの研究チームは、ストレスモデルマウスを使った試験で、心理的・社会的ストレスが腸内細菌叢を撹乱し、病原性微生物を増殖させたり、宿主の炎症を誘導することを見出しているという。
また腸内のディスバイオーシスが制御性T細胞を活性化し、抗炎症性サイトカインの産生を増加させることも見出した。
しかし一方で、免疫を調整する生物製剤(乳酸菌由来)であるMycobacterium Vaccae(Mバッキー)の加熱死菌体をストレスモデルマウスに接種すると、PTSD様の症状の進展が抑制されたことも観察された。
Mycobacterium Vaccae接種は、ストレスによって増殖する炎症性の腸内細菌の増殖を抑制したのではないか、という。
免疫を高め精神疾患を予防できる乳酸菌
また、Mycobacterium Vaccae接種は腸内細菌叢に働きかけるだけでなく、脳の海馬にも影響を与えることもわかっている。海馬は不安や恐怖に関連しているため、腸脳相関についてはさらなる研究が必要だという。
私たち現代人は、生活様式を大きく変えてしまったことで、オールドフレンドとの接触機会を失っている。
特にこの50年、オールドフレンドとの共存共生の機会を大きく失ったことと、精神疾患が先進国で急増していることと無関係とは言えないだろう、とローリー氏。
Mycobacterium Vaccae以外にも接種することで、免疫を高めて精神疾患を予防できるような乳酸菌や細菌が見つかる可能性は高い。
また、今社会から求められている「精神疾患の予防法の確立」についても、腸内細菌のディズバイオーシスを解決することが糸口となりそうだ、とまとめた。
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