脱毛を起こしたマウスの便からは特異的に「ラクトバシラスムリナス」と呼ばれる乳酸菌が増え、それらのマウスの腸内は激しいディスバイオーシスを起こしていることがわかった。
他のコントロールマウス群から「ラクトバシラスムリナス」は検出されず、「ラクトバシラスムリナス」はビオチンを消耗する菌であることが分かった。
これはマウスの試験だが、私たち現代人が、脱毛という現象に悩まされる背景には近代化した生活様式(過衛生)とビオチンが少ない食事によって脱毛を起こしやすい腸内細菌叢になっているから、と推察することができる。
逆に、この研究を深めていくことで、脱毛を予防する食事法や乳酸菌を見つけることも可能かもしれない、という。
免疫寛容、乳酸菌が急激に増加
次に「肝臓免疫寛容」と特定の乳酸菌の関係についても最新の知見を報告。ここ数年で肝臓の臓器移植がポピュラーになってきているという。
なぜなら肝臓の移植は成功率も術後生存率も高く、肝臓そのものが「免疫に寛容な臓器」とされているからだ。しかし肝臓の免疫が他に対して寛容である理由についてはほとんど解明されていないという。
ConA(Concanavalin A)という物質を投与するとすぐに肝障害が起こることが知られているが、1週間後に同じConAを投与しても免疫寛容が起こるため、肝障害は起こらない、という不思議な現象がある。
免疫寛容が起こるまでの1週間の間に腸では一体何が起こっているのか?
マウスの試験で調査したところ、ConA投与4日目で「ラクトバチルスジョンソニー」という乳酸菌が急激に増加していることを突き止めたという。
乳酸菌、ネガテイブな影響を与えるものも
そこでラクトバチルスジョンソニーを単離し、先にこれを投与した状態でConAを投与する試験を行った。すると、ConAを投与しても肝障害の値が低くなり、予防に役立ったことを示した。
このメカニズとしては、ラクトバチルスジョンソニーという特定の乳酸菌が、肝臓において、IL-10/TGF-β賛成樹状細胞を増加させ、肝臓の免疫寛容を誘導したのではないかという。
乳酸菌といえば、腸内環境、そして健康維持に不可欠ということばかり注目されているが、今回の2つの報告では、腸内細菌叢やヒトの体にどちらかといえばネガテイブな影響を与えるものもありそうだということ。
また他の臓器に特異的に働きかけるため、より予防に役立つ特徴を持つものもあるのではないか、と金井氏。特に他臓器への影響については今後のさらなる研究が待たれる、とした。
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