予防医学、根底に水や空気や土
山野井氏は、40年ほど東京大学医学部研究室で人工心臓のパーツ製作をはじめとした医工学技術の研究を行ってきた。その過程で予防医学の重要性に気づき、方向転換を図ったという。
私たちの生命力や自然治癒力に関わるものは、食事や生活習慣はもちろんだが、根底には「水や空気、そして土」がある。
そこで最初に研究したのが「空気」だった。その過程でマイナスイオンの研究に注力。現在はマイナスイオンの作用も一般にもよく知られ、ドライヤーや空気清浄機など家庭用品にも幅広く利用されるようになっている。
次に研究したのが「水」。水といっても産地によって物性が大きく異なる。水は飲むだけで健康になれる水もあるが、水素水は活性酸素を除去する働きがあることもわかった。
しかし水には効果効能を記すことはできない。同じ場所で採取される水でも毎日その物性が変質していて、評価することや定義することは科学者でさえも難しい。
微量ミネラルの摂取が重要
今、山野井氏が注目しているのが「大地=土」。私たちの足元の土に一番多く含まれるのが「ケイ素」という物質である。
ケイ素は別名シリカともいい、電子部品や半導体の材料として長く用いられてきた歴史がある。このケイ素が健康や美容にも影響を与えるということは、今までほとんど考えられてこなかった。
しかし、人間の体の構成から考えると、ケイ素は非常に重要なのではないかと山野井氏は考えるようになったという。人体を構成する元素は多い順から酸素、炭素、水素、窒素の4つで96.6%を占める。
しかし、残り約4%の「微量ミネラル」も重要で、多い順に、カルシウム、リン、イオウ、カリウム、ナトリウム、塩素、マグネシウム、ケイ素、鉄、フッ素、亜鉛、銅となる。
例えば、鉄(人の体に約4g含まれる)はわずかな欠乏でも、貧血や免疫力の低下など不調が生じる。もちろん、カルシウム不足も大きな問題となる。
つまり、人間の体はわずか4%のミネラルによって支配されている部分がかなり多いことが、これまでの多くの研究によって解明されている、と山野井氏。
世界各国で土を食する風習
ではケイ素はどのような役割を果たしているのか。ケイ素は漢字で「珪」と書くが、まさに「土」の「王様」で、地球の分身とも言える存在である。
ケイ素は半金属、金属、非金属全ての特性を持っているという極めて珍しい特徴もある。
最近は建築素材として「珪藻土」の健康効果に注目が集まっているが、ケイ素素材で有名なものといえば七輪で、七輪は軽量なだけでなく、断熱性の高さ、保温性の高さ、赤外線の発生量の高さなどから焼き物料理には欠かせない。
ちなみに、モンゴルでは幼い子どもに土を食べさせる風習がある。中国語で「腹」は「肚」と書くが、「おなか」と「土」には関係があることは誰もが知っている。
また、ネイティブアメリカンには土を癒しや心労回復のために食する風習があった。このように世界各国でケイ素が健康のために古来より利用されてきた。
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