ただし、オーガニックのものに限られているため、私たちは何を選んで何を食べるかが重要になる。ちなみに野生動物は自然にサルベストロールを豊富に摂取しているため、天然のがん予防システムが自然に生体に組み込まれていると柳澤氏。
ところが現代人のサルベストロールの摂取量は100年前の1/10程度にまで低下しているといわれている。がんは生活習慣病であり、がんが増えているのは先進国に住む人々やペットだが、サルベストロールの摂取量の減少と関係しているのではないか。
「栄養成分表示」は義務
現代人のサルベストロール摂取量の低下の原因は農薬の問題が大きい。農薬にさらされた農産物はサルベストロールが発生しないし、体内に農薬が存在していてもサルベストロールの働きが低下する。
また現代人は味覚が変化し、サルベストロールの味である「苦味」を敬遠する傾向にある。さまざまな農産物は品種改良が重ねられ食べやすい味に変えられてしまう。
しかしそれによりサルベストロールの含有量も減少する。また、サルベストロールは熟した農産物に最も多く含まれる。見た目が美しい農作物を店頭に並べるために、早い段階で収穫をするが、そうなるとサルベストロールは十分に生成されなくなる。
近年の研究では、サルベストロールが前立腺肥大など、がんではないが、がんと同様にCYP1B1が存在する前段階の症状にも有効であることが報告されているという。
体にやさしい治療がスタンダードに
CYP1B1を発見したダン・バーク教授のチームは、機械工学とハーブの専門家であるアンソニー・ダニエルズ氏らとともに、オーガニックジュースの破棄部分から得られるサルベストロールでサプリメントを作ることに成功した。
これにより、サルベストロールサプリメントの生産システムや商品化の流れも確立され、現在、ヨーロッパ、ニュージーランド、オーストラリア、カナダではドクターから処方される形で患者の癌治療に使用されている。
日本でも2年前から流通が始まり柳澤氏も自身のクリニックで使用しているという。
最新の研究では、CYP1B1は日内変動があり、活性がピークになる時間帯が午前6〜9時であるため、朝食前と昼食前に3カプセルずつ(計6カプセル/日)を摂取するのが効果的ということもわかってきたという。
日本では、統合医療の概念が周知されていないが、世界では「体にやさしい治療」、つまり食事療法や運動療法、ヨガや瞑想などを採用することがスタンダードになっている。
オーガニックの食品を選び食べることもその一つで、がんの治療も変わりつつあるが、こうした流れの中でサルベストロールは非常に期待される物質であると柳沢氏はまとめた。
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