オーガニック成分のサルベストロール、がんのアポトーシス(細胞死)を誘導〜ケアメディカル産業展2018

2018年11月21日(水)〜22日(木)、大田区産業プラザにて「ケアメディカル産業展2018」が開催された。同展示会セミナーより柳澤厚生氏(国際オーソモレキュラー医学会会長、点滴療法研究会マスターズクラブ会長)の講演「医師が実践、新しいオーガニック成分〜サルベストロールを活用した癌治療の可能性」を取り上げる。


オーガニックの果物や野菜はカビにくい

2012年から国際オーソモレキュラー医学会の会長を務めている柳澤氏。オーソモレキュラーとは分子栄養学ともいい、主にビタミンやミネラルの食事や点滴による治療・予防を行う最先端の栄養療法として知られる。

この学会には現在世界21カ国が参加しているが、ここ数年、がんの予防・治療の新成分として「サルベストロール」という成分に注目が集まっているという。

サルベストロールとは「植物が真菌(かび)感染の防御反応のために生成させるファイトアレキシンの一つ」で、よく知られている「レスベラトロール」というブドウから抽出される機能性成分は、このサルベストロールの一部である。

農薬を使った果物や野菜はカビやすいが、オーガニックの果物や野菜はカビにくい。オーガニックの植物は、カビ感染しそうになると自衛のためにサルベストロールを作り、防御するメカニズムを備えているため、と柳澤氏。

オーガニックの果物や野菜によく見られる黒い斑点のほとんどがサルベストロールだが、農薬を使うと防御作用が起こらず、サルベストロールはほとんど生成されない。

オーガニックの果物や野菜は、農薬無使用で体に良いだけでなく、サルベストロールを含むため、果物や野菜の本来あるべき成分や機能が十分に果たせる。

がんのアポトーシス(細胞死)を誘導

サルベストロールはどのようにして発見されたのか。1997年、スコットランドのアバディーン大学のダン・バーク教授のチームが、CYP1B1という酵素を見つけた。

この酵素はがん細胞に特異的に存在する酵素で、正常な細胞には存在しない。研究の結果、90%以上のがん、つまりほとんどのがん細胞にCYP1B1が発見され、人の原発癌に発現し、前がん病変にも現れる事もわかった。

このメカニズムをがんの診断や治療に役立てられないかと同じ大学のジェラルド・ポッター教授が研究を行ったところ、ある植物天然成分がCYP1B1によって代謝されると、その際にがんのアポトーシス(細胞死)を誘導することが分かった。

この研究により多くの果物や野菜の中に見つかる抗真菌成分を「サルベストロール」と命名した。

オーガニック摂取の重要性

サルベストロールの最も優れた点は、がん細胞の中ではCYP1B1と反応することで「抗がん物質」に変化するが、正常細胞にはCYP1B1が存在しないため、サルベストロールを添加しても何も起こらない、つまり副作用がないことである。

サルベストロールは、りんご、クランベリー、いちご、オレンジ、ぶどう、レモン、アボカド、ニンニク、オリーブ、玉ねぎ、キャベツ、カリフラワー、バジルやミントなどのハーブ類、ワインなど、私たちが日常的に食べるものほとんどに含まれている。

ただし、オーガニックのものに限られているため、私たちは何を選んで何を食べるかが重要になる。ちなみに野生動物は自然にサルベストロールを豊富に摂取しているため、天然のがん予防システムが自然に生体に組み込まれていると柳澤氏。

ところが現代人のサルベストロールの摂取量は100年前の1/10程度にまで低下しているといわれている。がんは生活習慣病であり、がんが増えているのは先進国に住む人々やペットだが、サルベストロールの摂取量の減少と関係しているのではないか。

「栄養成分表示」は義務

現代人のサルベストロール摂取量の低下の原因は農薬の問題が大きい。農薬にさらされた農産物はサルベストロールが発生しないし、体内に農薬が存在していてもサルベストロールの働きが低下する。

また現代人は味覚が変化し、サルベストロールの味である「苦味」を敬遠する傾向にある。さまざまな農産物は品種改良が重ねられ食べやすい味に変えられてしまう。

しかしそれによりサルベストロールの含有量も減少する。また、サルベストロールは熟した農産物に最も多く含まれる。見た目が美しい農作物を店頭に並べるために、早い段階で収穫をするが、そうなるとサルベストロールは十分に生成されなくなる。

近年の研究では、サルベストロールが前立腺肥大など、がんではないが、がんと同様にCYP1B1が存在する前段階の症状にも有効であることが報告されているという。

体にやさしい治療がスタンダードに

CYP1B1を発見したダン・バーク教授のチームは、機械工学とハーブの専門家であるアンソニー・ダニエルズ氏らとともに、オーガニックジュースの破棄部分から得られるサルベストロールでサプリメントを作ることに成功した。

これにより、サルベストロールサプリメントの生産システムや商品化の流れも確立され、現在、ヨーロッパ、ニュージーランド、オーストラリア、カナダではドクターから処方される形で患者の癌治療に使用されている。

日本でも2年前から流通が始まり柳澤氏も自身のクリニックで使用しているという。

最新の研究では、CYP1B1は日内変動があり、活性がピークになる時間帯が午前6〜9時であるため、朝食前と昼食前に3カプセルずつ(計6カプセル/日)を摂取するのが効果的ということもわかってきたという。

日本では、統合医療の概念が周知されていないが、世界では「体にやさしい治療」、つまり食事療法や運動療法、ヨガや瞑想などを採用することがスタンダードになっている。

オーガニックの食品を選び食べることもその一つで、がんの治療も変わりつつあるが、こうした流れの中でサルベストロールは非常に期待される物質であると柳沢氏はまとめた。


Copyright(C)JAFRA. All rights reserved.