口腔機能の多くが全身の機能と一致
今や人生100年時代といわれるが、私たちが最後まで健康に維持したい機能は「口」なのではないか、と斎藤氏はいう。
「口腔機能」といえば「食べる」ばかり注目されるが、口は「食べる」以外に「味わう」「噛み砕く」「消化する」「笑う」「話す」「表情を作る」「歌う」といった機能も兼ね備えており、消化器や感覚器としての働きの多くを担っている。
近年では口腔環境と免疫機能の関係にも注目が集まっており、口の中のアンチエイジングを行うことが全身のアンチエイジングや疾病予防につながることが解明されてきている。
さらに口腔機能の多くが、全身の機能と一致することが多い。例えば咀嚼力は全身の筋量と相関関係にあり、咀嚼力が低下すると筋量も低下傾向になり、ロコモやサルコペニア、骨粗鬆症の発見や予防にも役立つ。
唾液量は加齢とともに低下するとされているが、心身が健康であれば、そう簡単に唾液量は低下しない、と斎藤氏。
しかも、唾液量は全身のホルモン量と相関関係にあり、唾液の分泌が十分であればホルモン量も適正であるといえる。ちなみに1日に分泌されるヒトの唾液量は1〜1.5リットルだという。
オーラルケア市場は右肩上がり
咀嚼力や唾液力を担うのは健康な「歯」であるが、虫歯や歯周病で歯を喪失してしまうと、口腔環境は悪化し、身体機能だけでなく記憶力まで低下させることもわかっている。
特に歯周病は独立した疾患ではなく、全身に影響を与える疾患であり、糖尿病・肺炎などの呼吸器感染・心血管障害・妊娠異常・骨粗鬆症の原因になることもわかってきている。
超高齢社会では口腔ケアが必須で、実際、富士経済の調査によればオーラルケア市場は右肩上がりで成長している。
口腔環境を整える鍵となるのが「歯」であるが、実は「唾液」も同様に重要な存在で、唾液の分泌は自律神経の支配を受けているため、ストレス度の高い人であれば年齢に関係なく分泌量が低下傾向になる。
例えば、若い人の方が口角炎や口唇炎、なかなか治らない唇の乾きなどが起こりやすくなっている。
しかし、こうした症状に悩む患者の唾液分泌量は大概低下傾向にあり、唾液が低下することによって口の中の常在菌の一つである「カンジダ菌」が過剰になることでこれらの症状が起こっていることがほとんどである。
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