日本は超高齢化社会という問題を抱えているが、解決策の見通しがなかなか立たない。「健康寿命」と「平均寿命」の間に十年の乖離があることもよく指摘されている。
しかし、この乖離も縮まらず、健康へのさまざまな取り組みがさほど成果を上げていないのが現状だ。
とはいえ、私たち一人ひとりができるのは、やはり基本となる「日々の食事」で「健康を作る」ことしかない、と柏原氏。
食や健康の情報は人気が高く、マスメディアでも多く流れている。しかし、情報が多い分、真逆のものもあり、正しい情報なのか判断が非常に難しくなっている。
中でも人気の「糖質制限」は日本人のソールフードである「お米」をも制限するよう指導しており、そのことに柏原氏は疑問を感じているという。
「お米をもっと食べること」を強く推奨
というのも、柏原氏はさまざまな食に関わる活動の中で、「お米をもっと食べること」を強く推奨しているからだ。
高齢者が寝たきりになる原因の1位は脳卒中で、2位が認知症である。つまり脳が健康でなくなった時に寝たきりになる可能性が高いが、脳の健康維持に「食」が大切であることはあまり知られていない。
3位以降には、転倒や体力・筋力の低下といったことが挙がってくるが、筋力や体力が低下する最大の理由は「食が細くなり、しっかり食べられなくなる」ためだ。
脳の健康維持、筋力や体力の維持のためにも、年齢を重ねるほどに「しっかり食べる必要がある」と柏原氏はいう。
もちろん、何かを食べてすぐに脳や筋肉が元気になるわけではない。そのため、「長期的な食の取り組み」が大切だが、すぐに結果が出るもの、目に見えて効果が感じられるものばかりが注目され、「食べない」「カットする」「節制する」といったダイエット法や食事法ばかりが流行りがちである。
ブドウ糖の摂取を減らすと、糖尿病になりやすい
そもそも、脳の健康を維持するのに一番必要な栄養源は「ブドウ糖」であることは誰もが知っていること。
最近、糖質制限の世界ではブドウ糖ではなく「ケトン体」が使われることが啓蒙されている。これは事実であるが、ブドウ糖が体内で枯渇した時の緊急事態のメカニズムであり、脳にとっての最善で安定したエネルギー供給源ではない、と柏原氏。
ブドウ糖が足りていないと、体は筋肉を分解して糖を作り出そうとする。つまり炭水化物のカットは筋肉量や代謝量の減少を招くことになる。
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