キチンナノファイバー、安藤百福賞(発明発見奨励賞)を受賞〜2018年度 食創会「安藤百福賞」授賞式

2019年3月12日(水)、ホテルニューオータニにて、2018年度 食創会「安藤百福賞」授賞式が開催。カニ殼の主成分、キチンをナノ化した新素材「キチンナノファイバー」が安藤百福賞(発明発見奨励賞)を受賞した。


世界の食文化にイノベーションを

日清食品の創業者であり、世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」やカップ麺「カップヌードル」を発明し、世界の食文化にイノベーションをもたらした安藤百福氏。

安藤氏は、1983年に、「食とスポーツは健康を支える両輪」を掲げ、公益財団法人 安藤スポーツ・食文化振興財団を発足した。

さらに1996年には、「食創為世(食を創り世のためにつくす)」という理念から、食品産業の発展に貢献すべく「食創会」を立ち上げた。

「食創会」では創設年より、独創的な基礎研究、食品開発、ベンチャー等を支援する「安藤百福賞」の表彰を行なっている。今回は23回目となり、これまでに105件の食の研究や開発成果が受賞している。

ただし大賞の受賞についてはこれまでに10点しかなく、今年は記念すべき10点目に、森和俊氏(京都大学大学院 理学研究科 教授)による「小胞体ストレス応答の仕組みと意義の解明」が選ばれた。

また、優秀賞にはカリフォルニア工科大学 岡勇輝助教授による「水の摂取欲求と充足を支配する神経基盤」、大学共同利用機関法人 箕越 安彦教授による「代謝調節分子AMPKによる摂食量と炭水化物嗜好性制御機構の研究」、アサヒビール株式会社に所属する3名による「日本が世界に誇る生ビール、その製造における微生物品質保証技術の開発」の3件(7名)が選ばれた。

さらに、独創的な食品や食品加工技術、分析技術、流通システム等を開発した人に贈られる「発明発見奨励賞」には、伊福伸介氏(鳥取大学大学院 工学研究科 教授)のカニ殻由来の新素材「キチンナノファイバー」が選ばれた。

キチンナノファイバー、新産業の創出が期待

これまで、カニ殻の主成分であるキチンは、化学処理により、キトサンやグルコサミンとして、健康食品や抗菌製品などに利用されてきた。

キチンはカニ殻を粉砕するとキチンパウダーになるが、水に溶けにくいことから配合素材としては扱いが容易ではなかった。

そこで、伊福氏らの研究チームは、キチンパウダーを極限まで粉砕し、10ナノ(髪の毛の2万分の1程度)の極細繊維にすることを試み、キチンパウダーを水に均一に溶けるジェル状にすることに成功した。

キチンナノファイバーは、化粧品や食品への添加剤、フィルムなどの補強繊維、農業資源や医薬品などへの利用が期待されるが、スキンケアや創傷治癒、育毛、ダイエットなど健康・美容用途でもマーケットの創出が期待される。

伊福氏らの研究で、これまで廃棄物でしかなかったカニ殼から「キチンナノファイバー」を製造する技術が確立され、今後、一般食品・健康食品・医薬品への利用など、さまざまな展開が期待できること、また鳥取県の新産業創出につながることなどが高く評価された。

安藤百福賞の各受賞者には、食創会の会長である元内閣総理大臣の小泉純一郎氏より表彰状と副賞が直接手渡された。


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