近年は種々の原料を用いて健康酢が調製されるようになり、非精製の穀物を原料として製造された健康酢には、ぬか由来の生理活性物質が含まれている。
また、果実などの非穀物を原料として製造された健康酢にはその原料由来の生理活性成分が含まれるなど、それぞれ個性を持っている。
特に、果実や野菜から作られる場合、多様な抗酸化成分が含まれ、それらは複数の体調調製機能を有する多機能性因子であるため、未知の成分が含まれていることが考えられる。
さらにこれらの抗酸化成分は「ポリフェノール」と「非ポリフェノール」に大別されるが、特に「非ポリフェノール性」の抗酸化成分に関する情報やメカニズム研究は十分ではない。
抗酸化成分の分析
食品中のポリフェノール成分を除去するのにポリビニルポリピロリドン(PVPP)が汎用されている。これを用いることで、健康酢の中のポリフェノール成分を吸着除去することができる。
吸着した抗酸化成分を酢酸を用いて活性を維持したまま回収することができるため、この手法によって抗酸化成分の分析を行なっている。
また、抗酸化活性を直接測定するOn-lineアッセイ法というものがある。これにより新規抗酸化成分の分離分析も行える。
この結果、食品中の抗酸化成分は、PVPPに吸着するもの、吸着しないもの、酢酸で溶離できるものとできないもの、と大別できることもわかった。
例えばブルーベリー酢の中の抗酸化成分の約80%はPVPP吸着性のポリフェノール化合物であり、その大部分は活性を維持したまま酢酸の溶解する特徴がある。
また、ニンニクエキ酢中の抗酸化成分の約90%はPVPP非吸着性の非ポリフェノール化合物であり、抗酸化成分の分析にはさらなる検討が必要であることが明らかになっている。
美味しく食べやすいものに
他にも、緑茶中の抗酸化成分の約90%はPVPP吸着性のポリフェノール(カテキン類)であること。しかし紅茶の抗酸化成分の約45%はPVPP非結合性であることなどもわかった。
多機能性食品といっても、美味しく食べやすいものでなければならない。抗酸化成分の場合、過剰に摂取すると酸化毒性を発現する可能性もあるので、過剰摂取も控えなければならない。
多機能性食品の開発には新規成分を探索することも必要である。しかし、精製度を抑えることで多機能性因子の共存や相乗効果の発現を可能にすることのほうが多い。
機能性表示食品の場合、機能性関与成分が定量化できなければならない。しかし、健康酢や紅茶のように「成分や作用機序を同定できなくても美味しく効果もある」といった多機機能性食品にスポットを当てることも健康食品開発のひとつの可能性ではないか、とまとめた。
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