また、1日16gでも全死亡リスクが7%低下するという調査報告もある。
さらに1億3500万人を対象にしたコホート研究では、食物繊維摂取量の増加で全死亡と2型糖尿病のリスクが減少したという調査結果や、それが全粒穀物であった場合も同様の傾向であるといった報告もある。
全粒穀物の食物繊維効果
こうした調査研究からもわかるように、全粒穀物の効果は含まれる食物繊維による部分が大きいと考えられている。
近年、研究はさらに踏み込み、食物繊維の中でも水溶性食物繊維・オリゴ糖・難消化性でんぷんなどに効果があるのではないか、と考えられるようになっている。
これらの「水溶性食物繊維=発酵性食物繊維」を「MAC(Microbita-accessible carbohydrates)」と呼ぶが、MACが腸の健康維持に不可欠で、MACの摂取量が不十分であると腸内細菌は腸粘膜を餌にし、腸内膜が薄くなることなどが解明されてきている。
また、腸内細菌が全身に与える影響についてもよく知られるようになっている。がんや糖尿病のリスクを低下させたり、免疫を強化するだけでなく、うつの予防や睡眠の質の確保、脳機能改善、子供の成長促進、そして薬の効果を高めるといった作用があることなどが解明されてきており、腸内フローラ研究は今も盛んに行われている。
とはいえ、水溶性食物繊維が多い食材というのはそう多くない。例えば、らっきょう、エシャロット、かんぴょう、抹茶、などに多く含まれるが、量を食べられないものが多い。
米国、全粒雑穀市場が賑わう
一方、水溶性食物繊維を多く摂れる食品(1回あたりの食事で1g以上摂れるもの)として、大麦(押し麦)、ごぼう、そばがある。
特に、大麦は主食にも副菜にもなる。ご飯を炊くときに半分を大麦にした麦ご飯を一日2杯食べれば、もっとも健康効果が高いとされる一日90gの大麦=全粒穀物が摂れる。
国内においては、1970年頃から大麦はすっかり忘れられた食材になってしまった。しかし、2012年に冷めても硬くならない北米産のもち麦が輸入されるようになり、国ももち麦の品種改良やエビデンスの取得、作付け拡大を推進するようになった。
そうした流れもあり、現在ではローソンやセブンイレブンといったコンビニでも「もち麦おにぎり」がいつでも購入できる人気商品となっている。
朝、大麦を食べると一日中血糖値が上がりにくくなる。また、大麦ご飯を一日200g摂取すると内臓脂肪が減少する、糖尿病リスクが低減するなどの報告やエビデンスも集まっている。
さらに大麦にはフェルラ酸という抗酸化物質が含まれるため、脳(認知症)にも良いのではないかと研究が進められている。米国でも「腸」と「良い炭水化物」はトレンドで、全粒雑穀の食品が市場を賑わせている、と西沢氏はまとめた。
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