植物性たん白、栄養・生理機能で注目
〜Care Show Japan2020セミナー


2020年1月28日〜29日、東京ビックサイト青海会場にて「Care Show Japan2020」が開催された。この中から、一般社団法人 日本植物蛋白食品協会の講演「植物性たん白〜その利用と栄養・生理機能」を取り上げる。


植物性たんぱく質に注目集まる

近年、健康意識の高まりから「植物性たん白」(以下、植物性たんぱく質)に注目が集まり、需要も急増している。

植物性たんぱく質とは、一般的には大豆・小麦・米などの穀類を原料とし、それに加工処理を施したものである。

日本農林規格(JAS)では、大豆、小麦を加工して蛋白質の含有率を50%以上に高めたものを植物性たんぱくと呼んでいる。

形状が多様であることも特徴の一つ。例えば、大豆系だと「粉末状・粒状・繊維状」、小麦系は「粉末状、粒状、ペースト状」など、用途が広い。

美味しい加工食品を作るために欠かせない

一般的に植物性たんぱく質そのものを店頭で見かけることは少ないが、実は私たちの日常的な食品の中に豊富に含まれている。

例えば、ハムやソーセージの乳化剤や決着剤、保水成分として、あるいはかまぼこの保型目的に、ハンバーグやミートボール、パンや麺類の食感向上のために一般的に使用されている。

植物性たんぱく質は、食品の加工を助ける乳化性、保水性、決着性などの優れた機能性を持つ。

美味しい加工食品を作るために、現在植物性たんぱく質は欠かせない原材料の一つとなっている。

動物性たんぱくと比べ栄養価に遜色はない

植物性たんぱく質は1940年代にアメリカで開発された。日本にもその技術が導入され、1960年代後半に普及、1970年代に製造技術が確立、1975年に日本植物蛋白食品協会が設立、1976年にはJAS規格が定められた。

植物性たんぱく質は日本よりもアメリカを中心とした欧米での人気が高い。

世界各国で加工食品への原材料・添加物として利用されている他、欧米では宗教上の理由やベジタリアンの人々などが「植物性たんぱく質しかとらない」というケースも多い。

植物性たんぱく質は、体の血肉となる良質なたんぱく源であり、動物性たんぱくと比べても栄養価い遜色はない。

理想的な食事を摂ることが可能に

また動物性たんぱく質にはない、「コレステロール調整・血圧低下・動脈硬化抑制・血糖値低下・肥満改善」といったさまざまな生理機能が報告されており、健康面での効果も高い。

特に、日本の場合、幼児の肥満や成人病、中高年層のメタボリックシンドロームといった、食と健康の関わりが近年大きくクローズアップされている。

そのため、毎日の食事の中で脂質が少ない植物性たんぱく質の比重を増やすことで、たんぱく質の摂取量を減らさず、カロリーと脂質をカットし食物繊維を増やす、より理想的な食事を摂ることが可能になる。

しかも植物性たんぱく質は成分がはっきりしていて、栄養計算が簡単、安全性も高い。保存も可能といったメリットがある。

SDGs(持続可能な開発目標)に貢献

日本の主要な政策の一つに「食料資源の有効利用」という課題がある。

穀物から直接たんぱく質を摂取することができる「植物性たんぱく質」の普及は、動物性たんぱく質と比較して資源エネルギーやコストでも大幅に効率的である。

加工食品の一部の原材料や添加物として使用するだけでも栄養の強化や、食品の安定性の向上、食感の向上などに寄与することができる。

今後は植物性ミート、プロテインパウダー、グラノーラなどの主原料として植物性たんぱく質をメインに利用されることが増えることが予測される。

植物性たんぱく質がこれまで以上に普及することは、2030年までに達成が目標とされている「SDGs(持続可能な開発目標)」へ貢献することも可能。また一人ひとりが「ギルトフリーの食生活」を実現することにも貢献する。

たんぱく質は植物性からだけ摂取するよりは動物性と植物性の割合が1:1であることが栄養学的には望ましいとされる。

生活習慣病の予防には食生活だけでなく、正しい運動や睡眠も不可欠。植物性たんぱく質を利用すれば健康になれるということはないが、上手に活用してみてほしいとした。



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