LPS、「自然免疫」を活発化
〜Care Show Japan2020セミナー


2020年1月28日〜29日、東京ビックサイト青海会場にて「Care Show Japan2020」が開催された。この中から、自然免疫応用技研鰍フ講演「機能性素材:免疫ビタミンLPS」を取り上げる。


LPS、自然免疫を担当する細胞を活性

LPSはLipopolysacchride(リポポリサッカライド)の略称で、グラム陰性細菌の細胞外膜の構成成分である。

LPSは、「糖脂質」「リポ多糖」とも呼ばれ、体内、特に皮膚の中で自然免疫を担当する細胞を活性する。

皮膚は私たちの体の中で最も外部環境に接している組織、器官であり、皮膚=人体最大の免疫器官といえる。皮膚の中にはまさに免疫担当細胞であるランゲルハンス細胞やT細胞、ケラチノサイトなどが豊富に存在する。

皮膚そのものの健康だけでなく、外部から病原菌が侵入することを防ぐなど、免疫器官として働いている。

「免疫力」といえば、腸内環境を整えることを思い浮かべる人が多いが、実は皮膚を丈夫にして皮膚の免疫力を高めることも免疫力を上げることに直接的に貢献する。

皮膚の免疫系に働きかける

皮膚の免疫力を高めるために必要なことは「皮膚細胞内の老廃物を速やかに除去する」「傷ついた皮膚細胞の修復を速やかに行う」「コラーゲンやエラスチンといった肌細胞の増殖を促進させる」の3つ。これらは皮膚の老化予防に効果的である。

ただ、皮膚には角質層の下にタイトジャンクションと呼ばれる密着結合が存在している。

そのため、簡単には外部から何かを侵入させることはできない。皮膚内部から何かが流出することもない。

コラーゲンやエラスチンを外から補っても意味がないといわれる理由がここにある。

LPSを外から与えた場合、LPSもタイトジャンクションを通過できないが、表皮に最も多いケラチノサイトや炎症を抑制するTreg細胞はいずれもLPSの受容体を持ち効果的に反応することがわかっている。

また有棘層に存在しているランゲルハンス細胞も角質層にまで樹状突起を伸ばしてLPSに効果的に応答する。

つまりLPSはタイトジャンクションの下に侵入できなくても、皮膚の免疫系に働きかけることができる。皮膚にLPSを塗布することで以下のことがおきる。
  1. 皮膚内のケラチノサイトを活性することで、バリア機能を増加し、保湿力を左右するNMFを増加させる。また感染を防御する。
  2. ランゲルハンス細胞を活性することで、傷を速やかに治癒させ、アレルギーを抑制する。
  3. Treg細胞を活性することで好中球を抑制し、炎症を抑える。
  4. マクロファージを活性することで線維芽細胞が増殖し、エラスチンやヒアルロン酸が増加する。
  5. 毛乳頭細胞が活性することで、血流が改善し育毛や発毛の効果が得られる。
近年LPSが健康やホメオスタシスを維持するために不可欠な成分であることが多くの研究によって示唆されている。

またLPSはさまざまな食用植物だけでなく、土壌にも多く存在し、私たちは普段の食生活から自然摂取していることも多い。LPSは口から入っても皮膚に触れても毒性がなく安全な物質であることもわかっている。

腸内や皮膚のLPS不足、免疫が低下

免疫には「自然免疫」と「獲得免疫」の2種類があるが、LPSは特に「自然免疫」を活発にする成分であり、腸内や皮膚のLPSが不足すると免疫が低下することもわかっている。

LPSの有用性についてはまだ認知度が低い。ビタミンB1が不足することで脚気が起こるということが知られるまでに時間がかかったのと同様、LPSの不足によって免疫低下やアレルギー患者の増加が起こっているということが少しずつ認知されるようになってきている。

まさにLPSは「免疫のビタミン」であり、食品にも化粧品にも利用できる優れた成分であるとまとめた。


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