腸内とは、体の対外環境
腸内環境と免疫力の関係についてはよく知られている。感染症が蔓延している現状、いかに腸内環境を整え免疫力を向上させるかに、多くの人が高い関心を寄せている。
腸内環境を整えるために大切なことは「日々の食事の内容」であることが一般的に理解されている。しかし、まずは「腸内とは体の対外環境である」ことを理解して欲しいと福田氏。
つまり「対外環境であるから、個人差がとても大きい」ということ。腸内環境がほぼ同じような食事をしている家族間や遺伝子がほぼ相違ない双子であっても一人ひとり大きく異なるのは、「腸内環境」が「対外環境」であるからである。
腸の表面は「悪いことさえしなければどんな菌が住み着いてもOK」というスタンス、と福田氏。
また「免疫を高めるために腸内環境のバランスを整える」とよくいわれるが、「腸内環境のバランス」には個人差がある。そのため、免疫力にも個人差がある。
つまり腸内環境を整えて、免疫力を高める方法は、一人ひとりのアプローチ方法が違って当然といえる。
「IgA」という免疫、感染症を抑制
近年になり、腸内細菌の乱れが、全身疾患と関係していることが解明されている。肥満、糖尿病、動脈硬化、肝臓癌、認知症、うつ病、アレルギー疾患などさまざまな病気が、なぜ各個人の腸内細菌叢の状態と関係しているのか。
それは腸内細菌が作る代謝物質が、腸内だけでなく全身で細菌排除に役立つ細胞、免疫を抑制する細胞、ナチュラルキラー細胞などから、あらゆる免疫細胞の生成や分化に関与しているからである。
まさに腸内細菌が作り出す代謝物質によって我々の生体恒常性が維持されている、福田氏。
「免疫」そのものは「非自己を排除するシステム」といえる。免疫には大きく「全身免疫系(骨髄や胸腺)」と「粘膜免疫系(腸内細菌含む)」があるが、粘膜免疫系の中でも「IgA」という免疫が感染症発症の抑制に非常に重要な免疫である。
具体的には目や鼻、喉や消化管などに存在し、粘膜表面に付着した病原体や毒素に結合し、それらの機能を無効化することで私たちの健康を守る。
「IgA」は食物繊維などを食べた時に腸内で分解されて出てくる代謝物質「短鎖脂肪酸」によって促される。
他にも水溶性食物繊維である「イヌリン」を摂取すると腸内細菌の餌になることで短鎖脂肪酸である「SCFA」が発生し、これによりインフルエンザの感染が抑制される。
・
・