アルギン酸エステルの特徴と利用技術
〜ifia2020セミナー


ifia2020・企業プレゼンセミナー(4月22日〜24日)で発表予定の潟Lミカの講演資料から「アルギン酸エステルの特徴と利用技術」を取り上げる。(※同展示会は新型コロナ感染拡大防止のため中止となりました)


国内では60年以上も食品添加物として使用

アルギン酸エステルは、化学名「アルギン酸プロピレングリコールエステル」の略名で、海藻に多く含まれる多糖類「アルギン酸」を加工して作られた増粘安定剤である。国内では60年以上も食品添加物として使用されている実績がある。

白〜黄白色の粉末で、冷水にも温水にもよく溶ける性質を持ち、粘度のある水溶液に変化させることができる。その粘度は食感に影響を与えない超低粘度のものから高粘度のものまでバリエーションを持たせられる。

pHの低い酸性のものにも溶けるため、ドレッシングや果汁飲料、ビール、発酵食品などpHの低い食品の増粘安定にも使用できる。

また、一般的なアルギン酸と違い、カルシウムを与えてもゲル化しないため、乳製品の増粘安定にも使用できる。しかも粘度低下しにくい。

こうした性質から、サンドイッチ、菓子パンなどのベーカリー、さまざまな麺類、飲料など身近な食品だけでなく、世界各国の加工食品に幅広く利用されている。

アルギン酸エステル、加工食品への使用例

アルギン酸エステルを使うことで加工食品にどのような良い影響がもたらされるか。

1、安定剤としての役割

まずは安定剤として最も利用されているのがドレッシング。アルギン酸エステルは親水性のアルギン酸分子に親油性をもつプロピレグリコールがエステル結合した構造であるため界面活性剤として働くことができる。

アルギン酸エステル自体が増粘効果を持つため、クリーミータイプのドレッシングの安定剤としてキサンタンガムと併用する形でも利用されている。

また、乳酸菌飲料にも安定剤としてよく使用されている。乳酸菌に加えられたアルギン酸エステルは、酸性乳のタンパクの表面に取り憑き、蛋白同士の凝集を妨げることで、凝集・沈殿を防ぐ。

さらにアルギン酸エステルであれば他の安定剤よりも少ない使用量でタンパクの沈殿を防ぎ、粘土は飲料の飲み口に合わせて選択することができる。

2、食感や形成を支える役割

パンの食感において大切なのが「ふんわり」「もっちり」であるが、冷蔵流通するサンドイッチのような加工パンの場合、食感がクチャッとしやすい。

小麦粉のタンパク質に作用して構造を強化

しかしアルギン酸エステルは小麦粉のタンパク質に作用して構造を強化し、柔らかいのに潰れない、硬くならない、クチャッとしにくい理想的なパンを作るのに役立つ。

アルギン酸エステルは、サンドイッチだけでなくさまざまなパンの弾力性の向上に役立つ。パンの復元生を高め、腰折れやしわを防ぐのにも役立つ。

また、パンだけでなく、チルド麺の食感改良にも役立つ。茹で上げ後の麺の食感を長時間維持し、ツルツルした舌触りを与え、美味しさを維持してくれる。

特に機械製麺されたそうめんや日本そばなど伝統的な乾麺も食感が柔らかくなりすぎる傾向があるが、アルギン酸エステルを配合することで、手延べそうめんと同等の歯応えや食感を得ることができる。

菓子類においてはしっかりと膨らませてボリュームアップする効果や、カットするときに切りくずが出にくい、ロール状に巻いたときに割れにくいといった効果が発揮される。

最近人気の高い「低糖質」「グルテンフリー」といった食品では従来と異なる原料が使用されるが、小麦以外の穀粉を使った麺やパンは成形が難しく、食感も悪くなりがち。しかし、アルギン酸エステルを加えることで形を良くし、食感を著しく改善してくれる。

ビールでは起泡タンパクに作用し、泡の膜を強化しきめ細やかで消えにくい泡を作るのに役立っている。同じく高品質なメレンゲづくりにも役立っている。

アルギン酸エステル、吸油抑制効果

3、その他

アルギン酸エステルには、吸油抑制効果もある。天ぷら、フライ、ドーナツなどをあげる際にアルギンさんエステルを加えると、食品中に残る油の量を減らすことができる。油ぎれをよくし、油っこさを改善することで、サクサク感が向上するだけでなく、摂取カロリーを下げることに役立つ。

天然海藻由来で、アレルギー等の心配もなく、安全性の高い添加物であるアルギン酸エステル。私たちの身近で非常に役立っている添加物の一つといえる。今後もさまざまな食品に活用されることで、食品の可能性がさらに広まることに貢献してくれそうだ。


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