ナノ型乳酸菌の脳腸相関・感染防御作用
〜健康博ウェビナー


2020年7月28日(木)、健康博ウェビナーが開催された。この中から、蟹HM 原料開発チームによる講演「分散特許技術 ナノ型乳酸菌の脳腸相関・感染防御データ」を取り上げる。


乳酸菌、パイエル板への「吸収量」が大事

私たちの体内には私たちの細胞数より多い腸内細菌が生息している。

腸内細菌はヒトの健康状態を左右するほど重要で、「消化吸収を助ける」「ビタミンの産生を促す」「外来菌の増殖を防ぐ」「腸のエネルギー源を産生する」「解毒する」などの役割を果たす。

腸内細菌はヒトの体に棲みつくことで生育しやすい。栄養が豊富なため、外的刺激からも守られる。腸内細菌とヒトは共益関係にあり、特にヒトは腸内細菌なしでは生きていけないため、さまざまな食品から腸内細菌を豊かにする菌を摂取する。

その代表的な菌が「乳酸菌」。乳酸菌には整腸・抗アレルギー・美肌・生活習慣病予防など数々のメリットがある。

近年は、食品から摂取した乳酸菌を体内でより効果を発揮するためにどのように製品化すればいいか、ということが研究されている。

そこでわかってきたことが、食品から摂取された乳酸菌は「乳酸菌の生死」とは関係なく、腸内のパイエル板で吸収され、そこからさまざまな免疫物質を産生したり、生理活性に影響を与えるということである。

つまり、乳酸菌の生死(「いきた乳酸菌であるか」「生きて届くか」「死菌」か)ではなく、パイエル板への「吸収量」が大事であるというのが最新の知見である。

インフルエンザ感染防御や抗炎症作用

このことから、ここ数年は「死菌」に注目が集まっていた。一般的な製造方法で死菌を製造すると、「凝集体」となり、乳酸菌のサイズが大きくなる。これにより、パイエル板への吸収率が低下することがわかってきた。

そこでIHM社は、粒子の小さい乳酸菌がパイエル板への吸収率を高め、免疫細胞を活性することを突き止め、「分散処理」法で「ナノ型乳酸菌」を開発することに成功したという。

現在ナノ型乳酸菌にはヒト由来の「nEF」と漬物由来の「SNK」の2種類があり、いずれもインフルエンザ感染防御作用や抗炎症作用が確認されているという。

実際、無処理の乳酸菌と、分散処理(ナノ化)した乳酸菌では後者の方がNK細胞を活性するIL-12を大幅に誘導することなどが示されたという。

マウスを使ったノロウイルス感染試験では、蒸留水群・非ナノ化乳酸菌投与群、ナノ型乳酸菌nEF投与群の3群に分けて試験を行った。
すると血清中中和抗体価がナノ型乳酸菌nEF投与群が最も抗体量が増えていた。

また便中のウイルス量についてはナノ型乳酸菌nEF投与群が最も低下することが確認できたという。

マウスにおけるインフルエンザ感染予防効果測定試験では、ナノ型乳酸菌nEF投与群は感染初期に重要な自然免疫を活性させた。

また獲得免疫にも働きかけて中和抗体を増やすことから、感染リスクを低減させる可能性が期待できるという。

自然免疫を活性

また、「SNK」の方にも高いインフルエンザ感染予防効果が確認できているという。

マウスを3群(コントロール群:蒸留水投与、SNK群:ナノ型乳酸菌SNK投与、タミフル群:タミフル投与)に分け、インフルエンザウイルスを感染させる7日前から経口投与。

その後、感染3日後に各群の半数を剖検し、気道洗浄液及び肺のウイルスを測定。さらに、感染14日後に残り半数のマウスを剖検し、気道洗浄液及び血清中の中和抗体価を測定した。

すると感染3日後のウイルス量はSNK群で顕著に抑えられていて、14日後中和抗体価はSNK群でコントロール群だけでなくタミフル群よりも高い値を示した。

SNKの摂取で、やはり自然免疫を活性させ、獲得免疫にも働きかけて中和抗体価を上げたのではないか、という。

ナノ型乳酸菌、乳酸菌が持つポテンシャルがアップ

他にも「SNK」には神経栄養因子の上昇作用など最新の知見が確認されているという。

脳の神経栄養因子とされるBDNFは、記憶や学習、認知に関与し、海馬のBDNFが減少すると気分障害やうつ症状などが生じることがわかっている。

SNKの継続摂取でストレスを付加したマウスの海馬のBDNFが上昇することが確認されており、SNK摂取によって、ストレスやうつを改善する効果が期待できるのではないか、という。

分散処理によって生まれた「ナノ型乳酸菌」とは、粒子をナノ化したことで乳酸菌が腸内のパイエル板により多く吸収され、それによって乳酸菌が持つポテンシャルと人間の本来持っている免疫力が引き上げられることに貢献できる乳酸菌である。

乳酸菌関連で差別化を考えている企業などにもぜひ注目してほしい乳酸菌である、とまとめた。


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