また、神野選手はEPAの摂取と腸内細菌の関係について、腸の調子がいいとコンディションやパフォーマンスが良いのは間違いないので、引き続きコンディショニングにEPAを利用して行きたいと話した。
オメガ3系とオメガ6系のバランスが大切
第二部では、日本陸連の科学委員会委員長であり日本体育大学体育学部教授を務める杉田正明氏より「EPAがアスリートに及ぼす効果」についての解説が行われた。
杉田氏は高地トレーニングの専門家としてこれまでサッカー日本代表や競歩、マラソンなどの合宿にも参加している。
近年、トップアスリートに求められるのはどの競技においても「技術の高難度化」と「スピードの高速化」で、そのため日々のハードなトレーニングが欠かせない。
しかし、ハードなトレーニングを毎日安全に続けるためには「リカバリー」が何よりも重要になってくる、と杉田氏。
リカバリー方法には、睡眠・休息・栄養などがあるが、さまざまな技術を使い自分の体調を数値化・可視化することで、それぞれ適切なリカバリー方法が見えてくる。
アスリートの体質やトレーニング内容に応じたリカバリー方法を適切に取り入れることで、パフォーマンスの高難度化やスピードの高速化が実現する。
神野選手に限らず、マラソンの選手はトップになるほど中性脂肪の値が高い傾向がある。これはマラソン選手にとって中性脂肪が重要なエネルギー元となっているため。
特に脂質の中でもオメガ3系とオメガ6系はバランスよく摂取することが非常に重要である。
普通に生活していると無自覚のうちに多く摂取しがちなオメガ6系のアラキドン酸は必須脂肪酸だが、過剰になると炎症や動脈硬化を促進させてしまうためアスリートにとっても注意が必要だ、と杉田氏。
EPA、炎症を抑制・緩和し持久力を高める
一方、オメガ3系であるEPAは赤血球の膜を柔らかくする働きがある。そのため毛細血管にまで血液を届けやすくし、全身へ酸素を効率的に回す役割を担う。
EPAを8週間継続摂取した後に運動試験を行うとEPA摂取群は赤血球の膜内のEPA値が増加し、血管の炎症が減少する。また、アラキドン酸の値も減少し、さらに運動によって1分あたりに消費される酸素量も減少することが確認されている。
つまりEPAは炎症を抑制・緩和し、持久力を高める効果があるといえる、と杉田氏。
現在、スポーツの世界では「エルゴジェニックエイド」という考え方がある。
これは「スポーツにおけるパフォーマンス向上が期待される手段」のことで、食品や微量栄養素の摂取タイミングなども含まれる。
EPAも単なるサプリメントとしてではなくエルゴジェニックエイドを目的に、アスリートがより安全に効果的に競技を行うために不可欠なものとして注目・利用されている、とまとめた。
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