日本酒の機能性、美肌や肥満抑制など多彩〜第22回Bio Japan

2020年10月14日〜16日、パシフィコ横浜にて「第22回Bio Japan」が開催された。この中から幸田明生氏(大関椛麹研究所副所長)の講演「酒蔵発! 機能性素材の開発と麹菌によるタンパク質大量生産システム」を取り上げる。


日本酒、肌の美容効果

昔から、「日本酒はお肌をきれいにするのではないか」という説がある。

秋田美人、越後美人、加賀美人、松江美人などの言葉がよく知られるが、それらの県の一人当たりの清酒消費量は全国都道府県で上位8位以内である。

日本酒には、保湿、あれ肌予防、美白作用、アトピー予防といった効果だけなく、糖尿病、がん、心臓疾患、高血圧、脳血管疾患、肥満、肝硬変といった疾患への予防効果などの報告もなされつつある。

これについては、日本酒造りに鍵があるのではないかとも考えられている。日本酒は「並行複発酵」といって「糖化」と「アルコール発酵」が1つのタンクで同時に行われる。

つまり、米に麹を加え糖化させると糖分(ブドウ糖)が生成され、それに酵母を加え発酵させると日本酒(アルコール)ができるというプロセスである。

真皮のコラーゲン密度が増加

大関(株)ではこれまで清酒そのものや醸造副産物をターゲットに機能性素材を開発してきた。今回は2つの機能性素材について紹介した。

その1つがエチル-α-D-グルコシド。エチル-α-D-グルコシド(α-EG)とは一般的な純米酒の中に0.4〜0.8%含まれ、醸造酒の中でも特に日本酒に多く含まれる。

即効性の甘みと遅延性の苦味を持つのが特徴で、皮膚への塗布によって保温効果があることも確認されている。

皮膚は表皮と真皮から成り、真皮の部分には繊維芽細胞やコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸などが含まれる。

これらは加齢や紫外線の影響で徐々に減少し、皮膚からハリが失われ、シワやたるみの年齢肌が進む。

そこにα-EGを加えるとどうなるか、α-EG高含有純米酒エキスで臨床試験を行った。

α-EG高含有純米酒エキスを12週間、毎日飲用してもらい(100ml/day)、コラーゲン密度スコアを調べた(二重盲検プラセボ比較試験)。

その結果、4週で真皮そのコラーゲン密度がアップしたことが確認され、α-EGの飲用は真皮のコラーゲン密度の増加に寄与する可能性が十分高いことが示唆された。

肥満抑制や腸内環境改善でも有用

また、日本酒製造過程で生まれる酒粕の健康・美容効果にも近年注目が集まっている。その一つが酒粕から誕生したプロファイバーである。

プロファイバーとは酒粕を酵素と酵母で再発酵させることにより、体に吸収されない食物繊維やレジスタントプロテインを濃縮する。プロファイバーは多孔質であるため油の吸着効果も高い。

また不溶性食物繊維の素材であるためpHの低い胃液などでも油吸着効果が発揮できる。これによりプロファイバーには肥満抑制効果が期待できる。

コレステロール値及び中性脂肪値が基準値を超えた男性9名を対象にプロファイバー750mg(カプセル)を2ヶ月間継続摂取してもらう試験を行った。

その結果、体重・体脂肪・コレステロール値・中性脂肪のそれぞれが優位に低下した。

この試験により、プロファイバーには肥満抑制だけでなく、便通改善、腸内環境改善が期待できるのではないかとした。


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