コーカサス地方と日本の伝統食素材が融合
米ケフィラン、予防医学で期待の機能性素材に


平成18年6月28日、東京国際フォーラムで「LK乳酸菌米培地生成物〜米ケフィラン」発表説明会が開催された。当日、食品関連企業や商社などの研究・開発担当者ら100名近くが参加。光岡知足氏(東京大学名誉教授)による基調講演「米ケフィランの食品素材としての有用性」の他、池田義雄氏(日本生活習慣病予防協会理事長)、北村進一氏(大阪府立大学教授)らの講演がおこなわれた。

農林水産省の助成事業として研究開発に着手
8年の歳月をかけ効率的生産技術を確立

米ケフィランは、世界有数の長寿地域コーカサス地方(旧ソ連)の伝統的発酵乳ケフィア由来の新食品素材。ケフィアはヤギの皮袋に牛乳や羊乳を入れ、ケフィアの素であるケフィア粒を加え、数日間の発酵過程を経て作られる。
ケフィア粒を構成する乳酸菌Lactobacillus kefiranofaciensは特有の粘性多糖ケフィランを産生し、抗腫瘍や免疫賦活、長寿に関わる生理機能など有用性が注目されていたが、工業的規模での生産は困難とされ、長らく開発が待たれていた。

同素材は大和薬品鰍ェ、農林水産省の助成事業(糖質工学を応用した炭水化物の多面的利用技術の開発事業)の一つとして研究開発に着手。乳酸菌研究の世界的権威として知られる光岡知足氏(東京大学名誉教授)の指導により、日本人の主食「米」を培地に独自の技術でL.kefiranofaciensを純粋培養し、およそ8年の歳月をかけ効率的生産技術を確立した。

冒頭挨拶に立った同社の二宮社長は、研究開発の基本姿勢について、「植物由来の機能性食品の開発をポリシーに、科学的な根拠に基づくデータの集積に努める」とし、米ケフィランの開発経緯について述べた。

汎用性が高く、幅広い食品に利用が可能

米ケフィランの有用性については、脂質代謝改善作用、消化機能向上・整腸作用、血糖上昇抑制作用、血圧上昇抑制作用などが報告されている。昨今、中高年層の疾患の引き金として話題になっているメタボリック・シンドロームへの対策素材として有用性が期待されている。
特長としては、熱やpHに強く汎用性が高いことから、さまざまな製品開発に利用が可能。また、脂質をほとんど含まず、低カロリーでヘルシーなため、特定保健用食品や健康食品、一般食品などに幅広く応用出来るという。


講演では、光岡知足氏(東京大学名誉教授)が発酵乳の有用性について報告。コーカサス地方の伝統的発酵乳ケフィアの素であるケフィア粒から分離された乳酸菌L.kefiranofaciensは動物実験でガン抑制などの有用性が認められていることや 免疫調整に関与することなど報告した。

また、池田義雄氏(日本生活習慣病予防協会理事長)は「メタポリックシンドロームの予防と米ケフイランの可能性」と題して講演。内臓脂肪の蓄積からさまざまな病気が引き起こされる状態を「メタポリックシンドローム」と呼ぶが、2004年の国民健康・栄養調査では内臓脂肪型肥満に高脂血症、高血圧、高血糖のどれか2つが合併したメタポリックシンドロームの該当者が約1300万人に達すると推定されていると指摘。「メタポリックシンドローム予防には肥満対策が欠かせない」とし、食物繊維や米ケフィランによる予防の可能性について報告した。

また、北村進一氏(大阪府立大学教授)は「乳酸菌が産生する多糖、ケフィランを中心として」と題して講演。これまでケフィランは、工業的規模での生産が困難とされていたが、「コメをアミラーゼやプロテアーゼで分解した培養液をL.kefiranofaciensを用いて乳酸発酵することにより、ケフイランの工業生産に成功した」とし、米ケフィラン開発の経緯を報告した。


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