パラミロンによる疲労軽減作用
〜パラミロン研究会セミナー


2020年11月24日(水)、WEB配信により「パラミロン研究会オンラインセミナー2020」が開催された。この中から、渡辺 恭良氏(理化学研究所生命機能科学研究センター 健康・病態科学研究チーム チームリーダー)の講演「パラミロンの疲労感・疲労軽減作用」を取り上げる。


未病の段階で病気を防ぐ

パラミロンとはユーグレナ属のみが細胞内に有するβ-1,3-グルカンの結晶物質で、健康効果や機能性に関する報告がここ数年で急激に増えているという。

渡辺氏らのチームは疲労の研究や疲労が生じるメカニズムについての研究を長く行っている。

私たちは健康な状態で寿命を全うできればいいが、残念ながら病気にかかりそれが原因で死に至ることが多い。しかし病気になる前段階には未病(=健康が損なわれている状態)が必ずある。

「未病の段階で病気を防ぐ、健康に戻す」のが先制医療であり、健康科学という「学問」として研究が進んでいる。

人間は生体防御システムを持っているため、調子が悪いと感じたり、元気の度合いを自己判断したりすることができる。その判断指針や基準として「疲労」や「倦怠感」が重要な情報の一つとなる。

疲労が感じられれば、それを回復させ、慢性疲労に陥らないようにすることは健康寿命を全うする上で必要なことである、と渡辺氏。

「疲労による経済損失」は約7兆円と推計

疲労のメカニズムは複雑で、疲労が起こる場所も複雑だ。心身・睡眠・意欲・痛み、抑うつ(うつ病)など、あらゆる疲労がさまざまな症状となって現れる。

特に、近年の研究では疲労が睡眠の質と密接に関係することが報告されており、睡眠の質の低下は生活習慣病、特に糖尿病と非常に関連性が高いことなどもわかってきている。また、原因不明の慢性的な痛み(疼痛)も疲労が原因である場合が多い。

国が以前行ったある調査では「疲労による経済損失」は1.2兆円と計算されている。ここに疲労が原因と考えられる交通事故や事故を含むと、少なくとも約7兆円の経済損失になるのではないか、と推計されている。

疲労の治療方法は確立していない

他にも、2015年には小中高生の疲労について調査が行われ、小中高生で1ヶ月以上の継続した疲労を感じている人が増えており、学習意欲の低下や不登校と関係していることが指摘されている。老若男女に関わらず多くの日本人が「疲労」を感じているのが現状だ。

そこで渡辺氏らは「疲労度を全般的な未病指標と考えられないか」と考え、疲労の測定や評価方法についてさまざまな研究を重ねてきた。一般的に、疲労の研究では「疲労・倦怠」は以下の4つが定義されている。

1.休めを命ずる重要な生体警報
2.ストレスが重積して陥る状態
3.多数の病気の下地(未病)→先制医療へ
4.多数の疾患で見られる症状の1つ

疲労、倦怠感はプライマリーケア主訴の第2位であるにもかかわらず、体系的な疲労の治療方法は今のところ確立していない。

ただし「疲労回復因子」がしっかり出ないと疲労が長く続くことがわかってきている。また日本の疲労科学や疲労研究は世界をリードしており、疲労の定量化におけるバイオマーカー(ものさし)も樹立、現在は疲労度が計れるようになっている。

活性酸素の発生が疲労の元

疲労で健康が損なわれるメカニズムについてはこうだ。「精神」「運動」「感染」のいずれかにより「細胞が過活動状態」になると、細胞内で大量にエネルギーが生産・消費され、生体内で処理できない活性酸素が発生する。

これが細胞を損傷させることで、慢性的なサイトカインが生じ、「酸化」「修復エネルギーの低下」「炎症」が起こる。このことが疲労であり、健康の脆弱化のメカニズムであることもわかってきた。

また細胞を過活動状態にしがちな刺激がいわゆるストレスであるが、このストレスにも「精神的ストレッサー」「身体的ストレッサー」「化学的ストレッサー」「物理的ストレッサー」「生物学的ストレッサー」がある。

これらのストレッサーを緩和させるさまざまな「抗疲労商品・疲労ソリューションアイテム」が機能性表示食品も含め、さまざま開発がなされている。

パラミロン、機能性表示食品として受理

こうした中、パラミロンが注目されている。パラミロンはユーグレナ属のみが細胞内に貯蔵する物質で、β-1,3-グルカンの結晶物質のことである。

すでにさまざまなヒト臨床試験が行われていて、例えば、健康な成人200名を対象に、ユーグレナグラシリスEOD-1株由来パラミロン350mg含有食品を4週間摂取してもらった(ランダム化二重盲検プラセボ対象並行群間比較試験)。

その結果、パラミロン摂取群の方が優位に「日常生活での歩行数の増加」「外出時間の増加」が見られ、「身体的疲労感の軽減」についても優位さが報告された。

また、同じく健康な成人66名を対象に行ったヒト臨床試験で、疲労感の改善についてVAS試験や採血(酸化マーカー)、自律神経測定で調査したところ、「疲労負荷作業の能率低下の抑制」「自律神経活動のバランスの早期改善」「潜在的注意力の維持」「抗酸化力の向上」などが確認できた。

他にも、パラミロン研究において「内臓脂肪低減作用」「慢性腎障害抑制作用」「粘膜免疫向上作用」、さらにユーグレナとしては「認知機能向上」といった研究成果も報告されている。今年の6月には機能性表示食品として「ミカレアのパラミロン」が届出受理された。

コロナ禍で慢性的に疲労が蓄積

コロナにより人々が慢性的に疲労を蓄積している状態が続いているが、それを軽視せず、家庭やオフィスで疲労を簡易に計測できるようにすることが大切である。

疲労度を数値で自覚することで、運動メニューや食事メニュー、休養メニューを個別に提供するような組織の樹立なども現在手掛けている、と渡辺氏。

特にコロナの感染データについては集計がなされているものの、コロナの影響による健康被害に関するデータについては断片的である。メンタルヘルスを中心に健康被害が大きいことは明らかだが、そこまで手が回っていないのが現状だ。

コロナ禍時代の健康計測として「疲労測定」や唾液中の「sIgA」を指標にした「免疫力測定」などの環境整備も推進していきたいとした。


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