老化や加齢に伴う疾患に炎症が関与
納豆のポリアミン、炎症を抑制


平成18年7月24日、有楽町朝日スクエア(東京都千代田)で、第3回「納豆健康学セミナー」(主催:全国納豆協同組合連合会)が開催された。当日、 早田邦康氏(自治医科大学大宮医療センター内科2 講師)、須見洋行氏(倉敷芸術科学大学教授)らが納豆研究の最新成果を報告した。

納豆に含まれるジピコリン酸(DPA)、
アスピリン以上に血小板の凝集抑制に効力

日本で団塊の世代の高齢化が進む中、アンチエイジング(抗老化)対策が関心の的になっている。 早田氏は、「ポリアミンを中心とした納豆の機能性。動脈硬化予防、炎症抑制効果」と題して講演。「アンチエイジングには、チーズやヨーグルト、大豆などの豆類、野菜や果物などの食品に多く含まれるポリアミンが関与している」と報告した。

また、ワインなどに含まれる抗酸化物質がフレンチパラドックス(注1)をもたらしたとする疫学調査に対して疑問点を挙げ、ワインとともに摂るチーズに含まれるポリアミンがフレンチパラドックスに深く関与していることを指摘した。

氏によると、老化や動脈硬化やがんなど加齢に伴う病気の発症・進行に炎症が深く関与するとされているが、ポリアミンは炎症を引き起こす炎症性サイトカインの産生を抑え、炎症を軽減させるという。ポリアミンは発酵食品に多く含まれており、世界の長寿地域でチーズやヨーグルト、納豆など伝統的に摂っていることからもポリアミンの老化因子を抑制する作用が裏付けられるという。

須見氏は、「納豆に含まれるジピコリン酸(DPA)はアスピリンよりも血小板の凝集を抑制する効力が強い」と報告。50gの納豆中には、10mg程のジピコリン酸が含まれているという。また、ジピコリン酸は納豆中の血栓溶解酵のナットウキナーゼやビタミンK2の作用を増強するという。

管理栄養士の金子ひろみ氏は、「マラソン選手の海外合宿における納豆の重要性」と題して講演し、 オリンピックの強化合宿などで海外に滞在した際、たんぱく質の供給源としてアミノ酸スコアの高い納豆や豆腐などの大豆製品をよく利用したことなどエピソードを報告した。

納豆に食後血糖値の上昇を抑制する効果

セミナー主催者の全納連では、納豆研究に携わる学生や研究者を対象に研究奨励金を支給している。今回、第一回「納豆研究奨励金」準入選の奥村 仙示氏(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部臨床栄養学分野)が、「納豆を利用した血糖値をあげにくい組み合わせ食品に関する検討」と題して講演した。
若年健常者を対象に、納豆食(米飯200g+納豆)、大豆食(米飯200g+大豆)をそれぞれ摂るグループに分け、血糖値の変動を自己血糖測定器で測定し、比較したところ、「納豆食は大豆食に比べ血糖値の頂値を低下させ、時間を遅延させる作用があることが分った」という。

また、若年健常者を対象に、粘性食(米飯200g+納豆、長いも、オクラ)、通常食(米飯200g・大豆、じやがいも、ブロッコリー)をそれぞれ摂り、血糖値及び血清インスリン濃度の変動を末梢静脈採血で測定したところ、「粘性食は通常食に比べ血糖値AUC(0−120分)が有意に低値を示したことが分かった」と報告した。

(注1):フランス人はイギリス人やドイツ人と同程度の動物性脂肪を摂っているにもかかわらず、動脈硬化による心筋梗塞などの疾患が少ないことが疫学調査で判明し、これを、フレンチパラドックス(フランスの逆説)と呼び、その原因がフランス人の愛飲するワインにあると着目され、医学雑誌「The Lancet」などでも取り上げられた。それ以後、ワインに含まれる抗酸化物質が動脈硬化防止やアンチエイジング(抗老化)に関与しているといわれてきた。


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