新型コロナ、期待されるサプリ〜第11回慶応義塾生命科学シンポジウム

2020年12月16日(水)、web配信により「第11回慶応義塾生命科学シンポジウム」が開催された。この中から、蒲原聖可氏(DHC特別研究顧問 健康科学大学客員教授)の講演「新型コロナウイルス感染症の予防および治療におけるサプリメント・機能性食品の臨床エビデンス」を取り上げる。


ワクチン、持続期間や副反応などの課題

新型コロナウイルス感染の現状については、220カ国と地域で、7,100万人以上の感染者と160万人以上の死者を出し(12月15日現在)、日本国内では感染者数累計18万人以上、死亡者数2,649人(12月14日現在)と、収束の目処が立っていない状況だ。

主な原因はウイルスの飛沫感染と考えられており、感染した場合の症状は無症状も多いが、年齢や基礎疾患により重症化リスクが異なり、入院患者の症状も発熱や咳、呼吸困難や疲労感、筋肉痛や嘔吐など幅広い。

現在治療には呼吸管理や対処療法、薬物としてはムレデシビルなどが主に使用されている。感染者の80%の人が軽症のまま治癒しているが、20%は肺炎などで入院し、そのうちの5%がICU 、2%が致命的な結果となっている。

現状としては「感染予防」「重症化予防」による対策しかなく、ワクチンについても持続期間や副反応などの課題が残されている。

そのため、とにかくウイルスに暴露しないようにこまめな手洗い、マスクの着用やソーシャルディスタンスの確保、生体防御気機構である免疫の維持などしかできることがない。

ビタミンC、ビタミンD、亜鉛など期待

免疫については粘膜免疫を高めることが対策になると考えられるが、特に粘膜免疫の機能の維持についてはサプリメントや食品成分などにできることもある。

現在のところ感染リスク低減・重症化予防の成分として期待されているものに「ビタミンC、ビタミンD、亜鉛、オメガ3系必須脂肪酸、乳酸菌、ハーブのエキナセア」がある。

ビタミンDは免疫の維持に必須の栄養素で、特に粘膜免疫の咬筋ペプチドの産生促進などに関与していること、抗炎症作用やRAS系調整作用があることが知られている。

高齢者のビタミンD欠乏が懸念

米国には14,108人を対象にした研究で、ビタミンD欠乏が急性ウイルス性呼吸器感染症のリスクを上昇するといったものや、他にも複数の論文によりビタミンDの欠乏や低値が呼吸器感染症や肺炎のリスクを高めるといった報告がある。

また米国の高齢者や日本の学童を対象とした臨床試験の中にも、ビタミンDのサプリメント摂取が季節性インフル(A型)発症を有意に減少させたといった報告もある。

新型コロナウイルスについても、ビタミンD低値の患者の方が、重症化リスクが高いことや予後不良が生じやすいことが報告されている。

さらにビタミンDが欠乏している場合、感染リスクが1.77倍になることも米国シカゴ大学のコホート研究により報告されている。

日本人はビタミンDの摂取基準量が米国の半分以下であり、特に高齢者や若い女性にビタミンDの欠乏状態が懸念されるため、注意が必要である。

ビタミンCやエキナセアに有用性

ビタミンCについては、免疫の維持に必須の栄養素で風邪の予防や呼吸器感染症の罹病期間を短縮させたり、呼吸機能の改善などのエビデンスが多くある。

新型コロナウイルスについても、重症者にビタミンC欠乏傾向が見られ、米国では重症患者にビタミンC治療を行いその有用性が確認されているケースもある。

また米国でコロナ対策として、ビタミンC、ビタミンD以外の人気のサプリメントとして「エキナセア」がある。エキナセアはインフルエンザ対策や風邪対策に冬季の間などの継続摂取で利用されているサプリメントで、現在も非常によく売れている。

「腸肺相関」、プロバイオティクスの役割

プロバイオティクスについては、最新の知見で「脳腸相関」だけでなく「腸肺相関」があると考えられており、乳酸菌がウイルス性呼吸気感染症リスクや重症化リスクを半減させるという報告も上がってきている。

またCOVIT-19患者でも消化器官症状(下痢や嘔吐)が出るディスバイオーシス患者は、腸内のラクトバチルスとビフィズス菌が減少している傾向にある。

このようなことから、機能性食品・サプリメントとして現在COVIT-19の感染リスク低減・重症化予防の効果が期待できるのはビタミンCが1000〜2000mg(日)、ビタミンDが25〜50μg、ミネラルでは亜鉛、オメガ3系脂肪酸が1〜4g(日)、乳酸菌やビフィズス菌の積極的な摂取、そしてエキナセアが良いのではないか、とした。


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