抗加齢やストレス対策にマグネシウム
〜健康博覧会2021セミナー


2021年1月27日(水)〜29日(金)、東京ビッグサイトにて「健康博覧会2021」が開催された。同展示会セミナーから、瀬尾 正氏(瀬尾クリニック院長)の講演「抗加齢医療とマグネシウム」を取り上げる。


マグネシウム、体内で300種類以上の酵素反応の補助因子として働く

マグネシウムはミネラルの中でも現代人が不足しやすいミネラルの1つとされる。

欠乏するとどのような疾患につながるのか。満尾氏は院長を勤めるクリニックに、実際に訪れる外来の患者さんの様子を通して「マグネシウム不足」を解説。

そもそもマグネシウムは体内に0.05%程度存在しており、鉄や亜鉛などの微量栄養素よりも多く存在している。

一般成人であれば一日400mg程度を食事から摂取するのが理想で、摂取したマグネシウムのうち3〜8割は血中に取り込まれ、残りは尿などから排泄される。

血中から取り込まれたマグネシウムは体内で300種類以上の酵素反応の補助因子として働き、私たちの生命維持に不可欠な役割を果たす。

また、骨や歯を作るのにも不可欠で、神経や筋肉の動きの調整も担い、血中カルシウム濃度を調整するなど、実にさまざまな働きをしている。

他にも、細胞内エネルギーであるATPを産生し、タンパク質の代謝やホルモン合成にも影響を与えている。そのためマグネシウムが不足すると疲れやすくなったり、肌が荒れたりさまざまな不調が起こりやすくなる。

疾病治療、マグネシウムが不足しやすい

マグネシウムは食事からの摂取で足りているという人もいるが、人によってはマグネシウムが十分に吸収されないケースもある。

マグネシウムの吸収阻害要因には、消化管の状態・副甲状腺ホルモンの上昇・脱水症状・鉄剤の使用・医薬品の影響、などがある、と満尾氏。

マグネシウムとカルシウムは「兄弟ミネラル」といわれ、生理的カルシウムとの拮抗作用は極めて重要で、体内では1:1のバランスで存在していることが理想で、このバランスが崩れていることも吸収阻害になる。

また、何らかの疾病で治療をしている場合などは特にマグネシウムが不足しやすい。

特に不整脈・動脈硬化・糖尿病・甲状腺の亢進などの患者さんはマグネシウムが不足しがちな一方で、マグネシウムを摂取してもらうことで症状に改善が見られるケースも多い。

一般的に、マグネシウムを食事以外から摂取する人は、便秘薬としてや高血圧の対策、骨粗鬆症対策などの目的で摂取する人が多く、それらに対する効果も高い。

疾病を持っている人に限らず、現代人はそもそもマグネシウム不足に陥りやすい、と瀬尾氏。

マグネシウム、ストレスで排出

ただ、マグネシウムが豊富に含まれる食材(主に葉野菜など)のマグネシウム量が年々減ってきている。さらにマグネシウムはストレスで簡単に外に出てしまう。

ストレスは「寒さ」「暑さ」といった外的なものだけでなく「運動」や「心理的ストレス」なども含まれる。

サッカー選手が試合中に足をつっているシーンを見かけるが、身体的ストレスによりマグネシウム不足が起こっている状態の一例で、高齢者が就寝中に足がつりやすいのも加齢によるストレスでマグネシウムが失われているサインだと考えられている。

さらにインスタント食品や塩分過多の食事などでもマグネシウムが摂取しにくくなる。

一般的に処方される医薬品、例えば利尿剤、副腎皮質ホルモン、経口避妊薬、ステチン(痰を出やすくする)、アミノグリコシド(コレステロール値調整)、降圧剤、などもマグネシウムの吸収を阻害する。

また、一般的な合成洗剤にもマグネシウムを阻害するという報告もある。つまり、多くの現代人はマグネシウム不足の可能性が極めて高い、と瀬尾氏。

加齢により血中マグネシウムが低下

マグネシウム不足で起こる症状には、頭痛・疲労・不眠・筋肉・鬱・便秘・骨粗鬆症・砂糖依存症・胃酸過多などがある。

しかも、成人や高齢者だけでなく、近年はこれらの症状が小学生や中学生にも起こっていて、小さい子どもであってもマグネシウム不足が深刻化している。

子どもに多い喘息の症状も気管が痙攣している状態であり、マグネシウム製剤の投与で症状が落ち着くこともある。

近年はマグネシウムと糖尿病に関する論文も出ている。マグネシウムのサプリメントを使った群では対照群と比較して、指標となる「ヘモグロビンA1C」の値が低下したという報告がある(250mg/day3ヶ月の使用)。

他にも、日本の調査で、食事からマグネシウムを摂取している量が多い群の方が虚血性心疾患発症が30%程度発症リスクが低下すると報告している。

そもそも加齢により血中マグネシウムが低下することがわかっている。また、それによってさまざまな炎症を起こす物質が増えることもわかっている。

全身の炎症こそが、老化や病気の原因ともいえるし、特にサルコペニア傾向にある人はマグネシウム量が少ないので、サプリメンから摂ることも選択肢の一つではないか、と満尾氏。

ビタミンDの代謝にマグネシウムが不可欠

今、海外では新型コロナウイルス対策にビタミンDが非常に注目されている。

新型コロナウイルスの感染予防だけでなく、重症化の予防、死亡率の低下にもビタミンDが有用ではないかという研究報告がいくつも発表されているが、ビタミンDを体内で代謝させるにもマグネシウムが不可欠である。

サプリメントからビタミンDだけを摂取してもマグネシウムが不足していれば体内で活性しない。そのため、ビタミンD摂取を考えるのであればマグネシウムにも注目すべきだ、と満尾氏。

マグネシウムはほうれん草などの緑の濃い葉野菜やナッツ、アボカド、チョコレート、魚(小魚)、バナナ、納豆などに多く含まれている。

何か体の不調が現れていたら、食事の見直し、マグネシウムの補充を考えてみても良いのではないか、とまとめた。


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