次世代型ヨーグルト、腸内でポリアミンを産出〜健康博覧会2021セミナー

2021年1月27日(水)〜29日(金)、東京ビッグサイトにて「健康博覧会2021」が開催された。同展示会セミナーから、松本光晴氏(協同乳業褐、究技術開発グループ主幹研究員)の講演「アンチエイジング物質ポリアミンの新しい摂り方とその効果」を取り上げる。


次世代型ヨーグルトで腸内細菌の代謝をコントロール

腸には免疫担当細胞の60〜70%が集っており、私たちの健康を左右している。腸内細菌叢を整えるためにヨーグルトがよく知られる。

さまざまな機能性ヨーグルトが登場しているが、従来型のヨーグルトは乳酸菌やビフィズス菌などのプロバイオティクスを摂取することで、腸内細菌叢に働きかけ、腸内の有害物質の吸収を阻害するというメカニズムで健康効果があるとされている。

しかしそのメカニズムについてはわからないことも多い。そこで松本氏らの研究チームが考えているのが「次世代型ヨーグルト」だという。

次世代型ヨーグルトは腸内細菌の代謝をコントロールすることで、生理活性物質(腸内細菌の代謝産物)までもコントロールできないか、という考え方に基づいている。

長寿者はポリアミン血中濃度が高い

サイエンスの分野で近年注目されている物質に「ポリアミン」がある。ポリアミンはアミノ基が2つ以上結合した脂肪族炭化水素の総称で全生物に普遍的に存在し、生命活動の本質に関与している。

体内ではDNAの修復や、アミノ酸・タンパク質の合成、細胞の分化や増殖、酵素活性のレセプター発現などにも関与し、細胞の正常化の維持には特に欠かせないことがわかっている。

ポリアミンは加齢とともに減少し、特に60歳〜80歳の間に多くが失われてしまう傾向にある。

しかし、百寿者と呼ばれる健康な100歳はポリアミン血中濃度が高い傾向がある。炎症抑制や遺伝子保護、細胞内のゴミ掃除(オートファジー)などに不可欠なポリアミンは、健康や寿命の鍵となる物質なのではないかと、近年盛んに研究がされている。

まさに「代表的アンチエイジング成分」ともいえるポリアミン。腸内で産生されていることもわかっているが、腸内細菌叢の代謝産物には個体差があまりに大きく、制御することは極めて難しい。

しかし腸がポリアミンを自動的に産出する「ポリアミンタンク」のような役割を果たせば、私たちの健康が増強されることが期待できる。

次世代型ヨーグルト、腸管内でポリアミンを産出

メイトー独自で研究しているビフィズス菌LKM 512は非常に酸に強く、腸管への接着性が高いが、これを摂取することで、腸管内でポリアミンが増殖し、その結果、糞便中にもポリアミンが顕著に増加することが確認できたという。

しかし、腸内細菌がどのような代謝産物を産生するかは個体差が大きいため、他にもポリアミンの産出を増強してくれる物質がないかということがある。

そこで、221物質を調査したところ「アルギニン」に至り、ビフィズス菌LKM 512とアルギニンを配合したヨーグルトを開発。「腸管内でポリアミンを産出させる」という明確な働きを持たせた、まさに次世代型ヨーグルトが誕生した。

動脈硬化や認知症予防がマウス実験で確認

ビフィズス菌LKM 512とアルギニンが入ったヨーグルトでどのようにポリアミンが産出されるのか。この2つの成分が直接ポリアミンを産出するわけではないため現時点では研究段階だという。

おそらく複数の腸内常在菌が関与していることと、複数の菌の代謝経路が組み合わさり、アルギニンの代謝産物がポリアミンに変化されている可能性がある。

また、ビフィズス菌LKM 512はポリアミン産出の何らかの刺激となっているのではないか、という可能性が示唆された。

いずれにせよ、このヨーグルトの摂取でヒト試験でも狙い通りにポリアミン産出量を増やすことができ、動脈硬化予防や認知症予防の効果もマウス実験で確認ができているという。

まだまだ解明されていない部分もあるが、次世代ヨーグルトは腸内細菌叢によって確実にポリアミンを増やす機能があるためぜひ注目してほしいとまとめた。


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