感染症や大腸ガン予防にはたす
プロバイオティクスの役割


平成18年10月4日、渋谷公会堂(東京都渋谷区)で、第6回「21世紀の食と健康フォーラム」が開催された。当日、 服部幸應氏(服部栄養専門学校校長)、神谷茂氏(杏林大学医学部感染症学教授)、石川秀樹氏(健保連大阪中央病院消化器科部長)らが食と腸に関わる最新研究を報告した。

プロバイオティクス投与により旅行者下痢症の
発生率が2分の1近く減少

第1部のオープニング講演では、服部氏が「食育のすすめ」と題して講演。現代の日本の食文化の荒廃を指摘した。また昨年6月に成立した「食育基本法」を挙げ、子供たちが健康を維持する食べ物をきちんと選ぶ力、「選食力」を養う必要があると説いた。

また、神谷氏は「感染症予防におけるプロバイオティクスのちから」と題した講演で、プロバイオティクス(注1)投与により旅行者下痢症の発生率が2分の1近く減少することを指摘。また、プロバイオティクスにより抗菌薬関連下痢症の発生率が2分の1以下に低下することを報告した。

石川氏は、「食生活によるがん予防」と題して講演。大腸がんの確実な促進因子として、アルコール過飲、豚肉・牛肉の過剰摂取、野菜の摂取不足、運動不足を挙げ、肥満や喫煙についても可能性を指摘した。また、抑制因子として、野菜、運動、食物繊維などを挙げた。

さらに、日本人の大腸ガンの増加理由について、「食物繊維の摂取量の減少」や「植物性脂質の摂取量の増加」がこれまで指摘されていたが、むしろ「動物性脂肪の摂取量の増加」や「アルコールの摂取量の増加」、「運動不足」などが関係している可能性が大きいことを指摘した。

具体的に、大腸がんを防ぐための食生活やライフスタイルは、1)野菜不足を避ける、2)豚肉・牛肉は平均1日80gまで、3)飲酒は、1日男性1合、女性0.5合まで、4)適度な乳酸菌飲料の摂取、5)適度な運動、6)肥満にならない、7)禁煙、などとした。

乳酸菌摂取による大腸がん防止効果

4)の乳酸菌製剤が大腸腫瘍の発生を予防した理由として、腸管内の酪酸の増加、免疫能の改善、発ガン物質の吸着などを挙げた。

石川氏らは、厚労省の支援により、食物繊維と乳酸菌製剤を用いた大規模臨床試験を実施。大腸ガンの前ガン病変である大腸腺種が多発する患者390人に、 1)小麦ふすま摂取グループ、2)乳酸菌摂取グループ、3)両方を摂取するグループ、4)両方とも摂取しないグループ、に分け、4年間試験を行なった。結果、 小麦ふすまを摂取するグループは摂取しないグループに比べ、大きな腺種の発生が明らかに増加した。また、乳酸菌製剤では、摂取グループにおいて 大腸ガンになりやすいタイプの大腸腺種の発生が減少したことが判ったという。

(注1):生体内、特に腸管内の正常細菌叢に作用し、そのバランスを改善することにより生体に利益をもたらす生きた微生物(配布資料より)


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