睡眠時に脳が行なっている作業は「1、記憶の消去と定着」「2、成長ホルモンの分泌」「3、老廃物の排泄」の主に3つ、と裏出氏。3つの睡眠機能のうち成長ホルモンの分泌は健康維持に特に欠かせない。
私たちの成長ホルモンは睡眠時に最も多く分泌され、徹夜をした場合は激減することがわかっている。
成長ホルモンにはさまざまなメリットがあり、60歳以上の高齢者であっても成長ホルモンを0.03mg6ヶ月投与すると、脂肪量が大幅に減少し、筋肉量・骨密度・コラーゲン量は有意に増加することが臨床試験で確認されている。
睡眠中、脳の老廃物の排泄が亢進
また2013年頃からわかってきていることが、睡眠による「3、老廃物の排泄」で、睡眠中に脳脊髄液の流量が著しく増加し、それに伴い認知症に関与することで知られるアミロイドβなどの脳の老廃物の排泄が亢進することが確認されている。
近年は睡眠に問題を抱える人が増えており、睡眠改善作用を持つ天然物質やそれらを利用したサプリメントなどにも注目が集まっている。
例えばバーベナに含まれるハスタトシド、しじみに含まれるオルニチン、サフランに含まれるクロシン、朴の木(ほおのき)に含まれるホノキオールなどは睡眠作用について有用であることが確認されている。
ここ数年の機能性表示食品では「ぐっすり感」や「目覚め」をサポートする成分としてグリシン・亜鉛酵母・清酒酵母などに人気が集まっている。
オクタコサノール、ストレス性の睡眠改善
サプリメントの販売に対して医薬品レベルの厳しい審査があるとされる韓国では「カジメポリフェノール」が人気になっている。
カジメとは済州島付近の海洋で取れる1メートルくらいの海藻で、このポリフェノールを摂取することで睡眠時にGABA受容体を活性化することで睡眠の質を高めることが臨床報告されている。
インドのアーユルヴェーダでは「アシュワガンダ」が抗酸化作用や強壮作用、抗ストレス作用で有名だが、この植物に含まれる「トリエチレングリコールにも睡眠誘発作用があることが確認されている。
また、サトウキビや米糠、蜜蝋などに含まれる長鎖アルコールであるオクタコサノールは、運動機能の改善などが確認されているが、ストレス性の睡眠改善効果もある。
これらの機能性成分の有効性の確認や、睡眠中に特異的に起きる脳機能の確認、それを健康維持に役立てるために、ウエアラブル脳波系の開発も進んでいる。
ウエアラブル機器やサプリメントについては実用化されていないものもあるため、今後の研究と実用化、有効利用が期待されるとまとめた。
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