具体的に慢性炎症や過敏性腸症候群などもビタミンD欠乏との関係が示唆されている。
このように、ビタミンDと免疫についてはさまざまな研究報告が各国で行われている。特にビタミンDと風邪や季節インフルエンザAについては、複数の論文によりビタミンDのサプリメント摂取で罹患リスクが低減することが報告されている。
慢性炎症や過敏性腸症候群、ビタミンD欠乏と関係
新型コロナウイルスについては、現段階では決定的な臨床エビデンスは出ておらず、「コロナウイルスの予防や治療にビタミンDの摂取を勧めるべきではない」とされているが、研究者の間でビタミンDへの注目は高まっている。
現時点では「一般にコロナの入院患者の80%がビタミンDの欠乏状態」「ビタミンDの血中濃度が低い人ほどPCR陽性率が高い(米国における19万人を対象にした観察試験)」ということもわかってきている。
新型コロナウイルスは肺や鼻腔のタンパク質を利用し、細胞内で増殖し毛細血管に入って全身に運ばれる。
この際、糖尿病や老化などで弱った血管だとウイルスが全身に広がるだけでなく弱った部分で炎症を起こし、急速に多臓器不全を引き起こす。
これも免疫の過剰応答といえるが、この反応の抑制にビタミンDが関係していることは間違いない、と乾氏。
日本人の82%以上がビタミンD不足
ビタミンDは太陽のビタミンともいわれ、食事からだけでなく日光に当たることで体内合成される。
しかし日本人の82%以上がビタミンD不足とされ、特に緊急事態宣言以下のビタミンD不足は深刻化していることが懸念されている。
内勤者、夜勤者、北部に住む人、肥満、閉経後の女性、高齢者、介護施設入居者、魚食が少ない人などは特にビタミンDが不足しがちな傾向にある。
日本では成人の場合、ビタミンDの1日の摂取目安量が8.5μgとされているが、国際的には20μg(800IU)が推奨されている。
ビタミンD20μgの食品からの摂取では、しらす干しを33g、シャケは切り身半分など。ただバランスの良い食品だけではカバーすることが難しい。
ビタミンDについては摂取量を増やすことを意識し、血清濃度を75nmol/L(30ng/mL)以上に保つことは全身の健康維持に必要。75nmol/L(30ng/mL)以上に保つことにマイナスの影響はないと考えられている、とまとめた。
・