ビタミンD、免疫に関する最新情報
〜DSMオンラインセミナー


2021年3月25日(木)、web配信にてDSMオンラインセミナー「ビタミンDおよび25(OH)Dと免疫に関する最新情報」が開催された。この中から乾泰地氏(DSMニュートリションサイエンス&アドボカシー APACリージュナルマネージャー)の講演「なぜビタミンDが必要か、免疫機能に関する作用機序と2020年の知見」を取り上げる。


COVIT19の感染拡大で注目

少し前までは「ビタミンD」といえば、カルシウムと同様骨の健康に役立つイメージを最初に思い浮かべた人が多かった。しかし、近年はビタミンDに多様な効能があり、健康維持に不可欠な栄養素である認識が少しずつ広まっている、と乾氏。

ビタミンDの機能としては、正常な骨や歯の発育、血中カルシウムの濃度調整、神経伝達や筋肉の収縮の正常化、などがある。

近年は脳の神経保護や糖尿病、がんなどとの関係も報告されている。さらに、COVIT19の世界的な感染拡大に伴い、ビタミンDと免疫との関係について注目が集まっている。

自然免疫のスイッチを入れる

ビタミンDと免疫の関係については次の3つが明らかになっている。「1、風邪のリスクを低減」「2、自然免疫と獲得免疫の中でも自然免疫機能を促進」「3、ビタミンDの体内濃度と感染症のリスクの相関」。

1については、複数の疫学調査の報告がよく知られている。2については、体内にウイルスなどの異物が侵入したときに、その異物を排除しようとする力が働く。

免疫の第一線が自然免疫だが、この自然免疫にスイッチを入れ、その後獲得免疫の反応を調整するのがビタミンDである。

3については、ビタミンDが単球やマクロファージ内での抗菌ペプチドの生合成を促進、免疫を調整し排除するだけでなく、過剰な炎症反応を抑制する。

また、ビタミンDは肝臓と腎臓で代謝され、1.25ジヒドロキシビタミンDと呼ばれる活性型ビタミンDに変化する。この活性型ビタミンDは免疫細胞でも作られることがわかっている。

免疫の過剰応答を抑制

具体的には、病原体やサイトカインを検知すると単球マクロファージは活性型ビタミンDとビタミンD受容体の生合成を増加させる。

また、活性型ビタミンDの複合体が抗菌ペプチドであるカテリシジンやディフェンシンの合成を促進させる。

ちなみにカテリシジンとディフェンシンは結核菌などの細菌に活性を排除することに寄与する。

カテリシジンは風邪の原因であるライノウイルスを含むウイルスに対して抗ウイルス活性があることが報告されている。

またビタミンDと獲得免疫については、ビタミンDが免疫寛容の正常を促す働きがあるため、ビタミンDの欠乏が自己免疫疾患と括られる免疫の過剰応答を抑制する可能性も示唆されている。

具体的に慢性炎症や過敏性腸症候群などもビタミンD欠乏との関係が示唆されている。

このように、ビタミンDと免疫についてはさまざまな研究報告が各国で行われている。特にビタミンDと風邪や季節インフルエンザAについては、複数の論文によりビタミンDのサプリメント摂取で罹患リスクが低減することが報告されている。

慢性炎症や過敏性腸症候群、ビタミンD欠乏と関係

新型コロナウイルスについては、現段階では決定的な臨床エビデンスは出ておらず、「コロナウイルスの予防や治療にビタミンDの摂取を勧めるべきではない」とされているが、研究者の間でビタミンDへの注目は高まっている。

現時点では「一般にコロナの入院患者の80%がビタミンDの欠乏状態」「ビタミンDの血中濃度が低い人ほどPCR陽性率が高い(米国における19万人を対象にした観察試験)」ということもわかってきている。

新型コロナウイルスは肺や鼻腔のタンパク質を利用し、細胞内で増殖し毛細血管に入って全身に運ばれる。

この際、糖尿病や老化などで弱った血管だとウイルスが全身に広がるだけでなく弱った部分で炎症を起こし、急速に多臓器不全を引き起こす。

これも免疫の過剰応答といえるが、この反応の抑制にビタミンDが関係していることは間違いない、と乾氏。

日本人の82%以上がビタミンD不足

ビタミンDは太陽のビタミンともいわれ、食事からだけでなく日光に当たることで体内合成される。

しかし日本人の82%以上がビタミンD不足とされ、特に緊急事態宣言以下のビタミンD不足は深刻化していることが懸念されている。

内勤者、夜勤者、北部に住む人、肥満、閉経後の女性、高齢者、介護施設入居者、魚食が少ない人などは特にビタミンDが不足しがちな傾向にある。

日本では成人の場合、ビタミンDの1日の摂取目安量が8.5μgとされているが、国際的には20μg(800IU)が推奨されている。

ビタミンD20μgの食品からの摂取では、しらす干しを33g、シャケは切り身半分など。ただバランスの良い食品だけではカバーすることが難しい。

ビタミンDについては摂取量を増やすことを意識し、血清濃度を75nmol/L(30ng/mL)以上に保つことは全身の健康維持に必要。75nmol/L(30ng/mL)以上に保つことにマイナスの影響はないと考えられている、とまとめた。


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