ホスファチジルイノシトール、脳機能維持で注目〜食品開発展オンラインセミナー

2021年4月12日(月)、食品開発展オンラインセミナーが開催された。この中からユニテックフーズ鰍フ講演「ホスファチジルイノシトールの注目される機能」を取り上げる。


脳機能維持に極めて重要な成分

ホスファチジルイノシトール(以下、PI)は、リン酸にイノシトールが結合したグリセロリン脂質の一種。細胞膜を構成する成分で、主に細胞の内膜に局在している。

PIはイノシトールを有しており、イノシトールはリンを多く結合できるため、PIそのものが多彩な生理活性を有することが研究によって解明されている。

PIは生体内のさまざまなところに存在しており、中でも摂取3時間程度では腎臓と血漿に多く存在するが、時間が経過するにつれ特に肝臓と脳に多く分布する。

PIは脳にも多く存在しており脳細胞内の情報伝達に関与していることが知られる。具体的には脳内でリン酸化酵素・Ca感受性酵素を活性化し、細胞の活性化のスイッチを入れる役割を果たしている。

つまり脳機能維持にとって極めて重要な成分といえるが、加齢によって脳内のPIは減少することもわかっており、年齢に応じて補給することが必要とされる。

神経細胞の活性化に関与

ユニテックフーズでは独自技術により、世界ではじめて大豆を原料としたPIの高濃度化に成功。PIを50%以上含有している「ソイブレインP150」として製品化も行っている(特許取得済)という。

最新のPIの機能性研究によって、PIが脳の情報伝達に関与しているだけでなく、他にもさまざまな機能性があることがわかってきている。

本セミナーで「@記憶学習効果」と「A内臓脂肪抑制効果」「B化粧品への応用と美肌効果」について説明。

記憶学習効果については、そもそも生化学の分野においてPIが神経細胞の活性化に関与していることが明らかにされてきた。

ユニテックフーズによって世界ではじめて「経口摂取」によってもその効果があることが確認されているという。

ラットを用いた動物実験では、P150投与群とプラセボ群に分け2ヶ月後に観察。「迷路試験」と「ステップダウン試験」の結果で、PI経口摂取群のラットにおいて学習効果向上が確認できた。

メカニズムとしては海馬の神経細胞(C-Fos陽性細胞とBrdU陽性細胞)が活性されていることとの関与が示唆されたという。

イチョウ葉エキスやDHAとの違い

小規模臨床試験(ヒト試験)でもiPadを使った認知機能検査でPI摂取群において、認知機能が向上する傾向が確認されている。

脳機能改善素材として、現状としては「イチョウ葉エキス」が有名だが、イチョウ葉エキスは脳の血流を改善することで脳機能を改善するというメカニズムを持つ。

同じく、脳機能改善素材である「DHA」は細胞膜の流動性を亢進させ、遺伝子伝達を促進させることで脳機能を改善させる。

PIは脳神経細胞活性というメカニズムであり、他の2つの脳機能改善素材とも差別化できる。あるいはこれらの素材との相乗効果がある可能性が高いとして、今後の研究に期待が寄せられている。

肝臓の脂質濃度が抑制

内臓脂肪抑制効果については、ラット試験で食欲抑制ホルモンレプチンを変容させ過食によって肥満化にさせたラットに、PIを投与する試験を行った。

その結果、PI投与群は対照群と比較して、肝臓の脂質濃度が抑制され、脂肪肝や肝肥大が抑制されることが示唆された。

肝臓機能障害指標酵素としてASTとALTがあるが、これらの酵素値の低下も確認できた。こちらについても、EPA、DHAなどの共役脂肪酸との組み合わせによる生理活性の増強が期待されている。

食品から化粧品までさまざまに応用

化粧品への応用については、PIに保湿や抗酸化作用があることが確認されており、すでに化粧品分野で活用されはじめている。

PIには皮膚の保湿、美白、抗酸化作用が確認されており、これをリポソーム化したPrimeLipidPiという原料が開発されている。

ヒト試験では「ヒアルロン酸産生促進効果」「メラニン産生抑制効果」「活性酸素抑制効果」「乾燥時よる小ジワ改善効果」が確認されている。

食品から化粧品までさまざまな製品に応用できる可能性が高いホスファチジルイノシトール(PI)にぜひ注目してほしいとまとめた。


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