心の不安は、はっきり認識できるものではない。思考力の低下、集中力の低下、意欲の低下、あるいは睡眠障害、食欲異常、疲労や倦怠感など、さまざまな症状として現れる。
また複合的な原因によって症状が引き起こされる場合もある。もちろん、栄養面のアプローチによって症状を緩和させる方法はある。
例えば「鉄」は神経伝達物質の合成や代謝に関わる酵素で、不足すると集中力が低下したり、イライラの増加や興味関心の低下などにつながる。
また「亜鉛」は脳に多く存在し、脳の神経細胞のシナプスで神経伝達物質を貯蔵するなど、脳に非常に重要な栄養素である。
新型コロナウイルスで注目を浴びているビタミンDも前頭前皮質や海馬、視床下部などに多く存在する、精神の安定維持に不可欠な栄養素である。
ニューノーマル時代に摂りたい栄養素、ビタミンA・D、鉄、亜鉛
栄養バランスの不安については在宅ワークに伴い「朝食の欠食」が増えていること、「ランチタイムを軽視」しやすくなり昼食をレトルト食品で済ます人々が増えていることが問題となっている。
レトルト食品ではビタミンA、ビタミンB6、ビタミンD、亜鉛が不足しやすく、糖質や脂質、塩分が過剰になりやすい。
一方、人々の「免疫力を高めたい」という意識は高くなっており、健康志向の高まりからプラントベース食や大豆ミート、ゆるベジタリアンなどがちょっとしたトレンドになりつつある。
しかし、植物性の食生活では鉄分の中でも吸収率の高いヘム鉄が不足しがちとなる。また、タンパク質、ビタミンB12、亜鉛なども不足しやすくなる。
これら全体を考察すると、ニューノーマル時代に積極的に摂りたい栄養素は主に4つ、「ビタミンA」「ビタミンD」「鉄」「亜鉛」ではないか、と佐野氏。
アメリカでは主食に必要な栄養素を強化
食品関連企業においては、これらの不足しがちな栄養素が自然と摂取できるような食品開発を手がけることが差別化のポイントになるのではないか、と佐野氏。
アメリカでは小麦粉やとうもろこし粉に「ビタミンB1、B12、ナイアシン、葉酸、鉄」などを強化することで不足しがちな栄養素を主食から摂取できるように進めているという。
行動変容を起こすのは容易ではないので、やはり自然と健康になれる環境づくり・仕組みづくりを社会と個人、双方で行う必要があるのではないかとまとめた。
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