ニューノーマル時代に摂りたい栄養素とは
〜DSMオンラインセミナー


2021年4月26日(月)、web配信によりDSMオンラインセミナー「食品への微量栄養素強化の重要性」が開催された。この中から佐野こころ氏(医学博士・保健師・看護師、叶Hのおくすり代表取締役)の講演「ニューノーマル時代に求められる微量栄養素とは」を取り上げる。


日本人の約77%が目に不安

新型コロナウイルスで社会的な変化が余儀なくされたこの一年、多くの人々に影響を与えたのが「働き方」であろう。

数年前までは「多様性に応じた職場環境作り」や「多様性のある食堂の充実」などが求められ、大手ではヴィーガンやハラールといった食事にも対応するほどであった。

しかし、新型コロナウイルス感染拡大以降テレワークが積極的に導入され、食堂も閉鎖に追いやられた。

こうした状況から、「ニューノーマル」といったさまざまな変化が余儀なくされている。

健康問題としては「1、PC時間の増加による目の健康不安」「2、人に会うことの減少や環境変化による心の健康不安」「3、在宅時間増加に伴う栄養バランスの不安」と、大きく3つの課題が指摘されている、と佐野氏。

特に「目」については日本人の約77%が不安を抱えているという調査報告もある。具体的にはドライアイ・眼精疲労・視力低下を多くの人が不安に思っている。

日本人はルテインやゼアキサンチンの摂取量が少ない

ドライアイは涙のトラブルといえるが、栄養も関係している。例えばビタミンAは角膜に涙を保持する粘膜の層を作り、目を乾燥から守る働きをしている。

また、あまりよく知られていないがビタミンDも目の表面の炎症を抑制したり、涙の分泌促進に関与している。

視力については、ビタミンAが目の網膜に含まれるロドプシンの構成成分で、ルテインやゼアキサンチンは、目の黄斑部や水晶体に多く存在し、有害な光を吸収して目を守る働きをしている。

ちなみに有害な光の代表的なものがブルーライトだが、ブルーライトカットメガネには効果がないという発表が先日なされている。

とはいえ、ブルーライトが眼精疲労や視力低下の原因に関与していることに間違いない。

ルテインやゼアキサンチンを十分に水晶体や黄斑部に取り入れることが目を守る鍵となる。アメリカでは1日平均0.8〜1.1mg摂取しているが、日本では0.35mg程度の摂取である。

日本人は世界的にみてもルテイン・ゼアキサンチンの摂取量が少ないことが報告されている。

不安症状やうつ症状を訴える人が増加

心の不安についてはテレワーク推奨などに伴う急な環境の変化や、外出自粛制限、人との交流が激減していることで、国内だけでなく世界的にも不安症状やうつ症状を訴える人が増えている。

心の不安は、はっきり認識できるものではない。思考力の低下、集中力の低下、意欲の低下、あるいは睡眠障害、食欲異常、疲労や倦怠感など、さまざまな症状として現れる。

また複合的な原因によって症状が引き起こされる場合もある。もちろん、栄養面のアプローチによって症状を緩和させる方法はある。

例えば「鉄」は神経伝達物質の合成や代謝に関わる酵素で、不足すると集中力が低下したり、イライラの増加や興味関心の低下などにつながる。

また「亜鉛」は脳に多く存在し、脳の神経細胞のシナプスで神経伝達物質を貯蔵するなど、脳に非常に重要な栄養素である。

新型コロナウイルスで注目を浴びているビタミンDも前頭前皮質や海馬、視床下部などに多く存在する、精神の安定維持に不可欠な栄養素である。

ニューノーマル時代に摂りたい栄養素、ビタミンA・D、鉄、亜鉛

栄養バランスの不安については在宅ワークに伴い「朝食の欠食」が増えていること、「ランチタイムを軽視」しやすくなり昼食をレトルト食品で済ます人々が増えていることが問題となっている。

レトルト食品ではビタミンA、ビタミンB6、ビタミンD、亜鉛が不足しやすく、糖質や脂質、塩分が過剰になりやすい。

一方、人々の「免疫力を高めたい」という意識は高くなっており、健康志向の高まりからプラントベース食や大豆ミート、ゆるベジタリアンなどがちょっとしたトレンドになりつつある。

しかし、植物性の食生活では鉄分の中でも吸収率の高いヘム鉄が不足しがちとなる。また、タンパク質、ビタミンB12、亜鉛なども不足しやすくなる。

これら全体を考察すると、ニューノーマル時代に積極的に摂りたい栄養素は主に4つ、「ビタミンA」「ビタミンD」「鉄」「亜鉛」ではないか、と佐野氏。

アメリカでは主食に必要な栄養素を強化

食品関連企業においては、これらの不足しがちな栄養素が自然と摂取できるような食品開発を手がけることが差別化のポイントになるのではないか、と佐野氏。

アメリカでは小麦粉やとうもろこし粉に「ビタミンB1、B12、ナイアシン、葉酸、鉄」などを強化することで不足しがちな栄養素を主食から摂取できるように進めているという。

行動変容を起こすのは容易ではないので、やはり自然と健康になれる環境づくり・仕組みづくりを社会と個人、双方で行う必要があるのではないかとまとめた。


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