コラーゲン、ヒアルロン酸増加や骨の健康維持に関与〜ifia2021セミナー

2021年5月12日(水)〜14日(金)、パシフィコ横浜にて「ifia/HFE JAPAN(国際食品素材/添加物展・会議)」が開催された。同展示会セミナーより野村 義宏氏(東京農工大学 農学部 附属 硬蛋白質利用研究施設 教授)の講演「コラーゲン摂取効果」を取り上げる。


コラーゲンの定義は非常に曖昧

東京農工大学農学部 附属 硬蛋白質利用研究施設が開設50周年を迎えたことを記念し、2020年10月に「コラーゲン 基礎から応用」がインプレスより刊行された。その執筆にあたり、野村氏が一番苦心した点が「コラーゲンの定義」であったという。

結論からいうと、コラーゲンの定義は非常に曖昧だという。コラーゲン・ゼラチン・加水分解コラーゲンの違いをそれぞれ説明することはできる。

具体的に言えば、コラーゲンは生体に存在している時は三重螺旋構造を持つ。ゼラチンは加熱や冷却でゲル化やゾル化など変性する特徴がある。

そして加水分解コラーゲンはゼラチンを酵素分解やアルカリ分解したものである。しかし加水分解コラーゲンはその濃度が高ければゲル化するものもあり、分子量で加水コラーゲンと定義されているわけではない。

定義は難しいが、基本的にはコラーゲンは動物の体を構成する主要なタンパク質であり、食品や医療、健康食品やコスメにさまざまな形で応用・利用されている。

組織内のヒアルロン酸を増加

野村氏はコラーゲン研究におい、特に「なぜ食べて効果を示すのか」を解明すべく、さまざまなコラーゲンを動物モデルに投与し、骨や皮膚の有効性を明らかにしてきた。

これまでコラーゲンは「肌を潤す」とか「骨の動きを滑らかにする」などの機能性が報告されている。

しかしその一方で、コラーゲンには必須アミノ酸が含まれておらず、アミノ酸スコアは0であり、また分子量の問題などから、コラゲーンが肌や骨に有効なはずがないと叩かれてきた歴史がある。

確かにコラーゲンを経口摂取してもそのまま吸収されることはなく、体内の酵素によってアミノ酸やペプチドに変化して吸収される。

しかしこれらは皮膚の細胞を活性化したり、組織内のコラーゲンだけでなくヒアルロン酸を増加させることが近年解明されており、「コラーゲンを摂取しても意味がない」という説が少しずつ下火になってきているのでは、と野村氏。

骨粗鬆症の予防につながる

近年は各企業において、血中で検出されるコラーゲンペプチドの種類やその含有量などに踏み込んで商品設計やエビデンス構築を行うところも増えてきている。

特に閉経後の女性に多い骨粗鬆症、また高齢化社会の日本において社会問題ともされる「ロコモティブシンドローム」や「サルコペニア」だが、これらの解決の糸口になる点は「疼痛を取る」ところにあるのではないか、と多くの研究者が指摘している。

加齢とともに骨や筋肉が減少しようとも、痛みがなければエクササイズやリハビリなど、回復や補強のアプローチができる。しかし、痛みがあるとそれができないことで、負のスパイラルに陥り、思うように回復を目指すことができなくなる。

一般的に骨量のピークは25歳であり、そこから閉経に向かって緩やかに減少、そして閉経を迎えることで女性ホルモンエストロゲンとの関係で骨量は一気に低下することがわかっている。

やはり50歳くらいをターゲットにコラーゲン加水分解物を摂取してもらうことで、骨量を増やすことはできなくても、骨の柔軟性を高め、骨折を予防することで骨粗鬆症の予防につながる、と野村氏。

コラーゲン投与でラットの方が骨密度が上昇

成長期に低タンパク質の食餌を与え、またその後に卵巣を摘出した骨の弱いモデルラットを2群に分け、1群には加水分解コラーゲンを、もう1群にはアルブミン(タンパク質)を摂取させ、骨密度を比較する試験を行なった。

結果、コラーゲン投与のラットの方が骨密度が上がることが確認されている。コラーゲンが皮膚だけでなく骨の健康に重要であるということは間違い無い、と野村氏。

同じく、女性に多い変形性膝関節症についても、ラットの試験においてコラーゲンを摂取したところ、骨そのものを増やすような影響は見られないが、痛みの減少や身体機能の改善などの効果が報告されている。

このことについては、おそらく関節や軟骨ではなく「滑膜」に何か影響を与えているのではないか、と近年は野村氏らの研究室でも滑膜に注目した研究を重ねている。

その最新情報として、マウスの試験において、やはりコラーゲン由来ペプチドを摂取した動物は滑膜細胞のヒアルロン酸量が増えていることが確認できているという。

ヒアルロン酸の発現や骨の健康維持に大きく関係

筋肉は、使わないと減少することは、ギブスなどで固定した後の筋量を測定すると明らかだが、マウスの脚をギブスで固定しても同じことが起こる。

ギブス固定中、およびギブスを外した後にコラーゲン由来ペプチドをマウスに摂取させた場合と、プラセボ群ではどのような違いがあるかを考察した。

この試験では、ギブスを固定している最中でもコラーゲン摂取マウスはヒアルロン酸量や筋肉量が維持される傾向が見られるだけでなく、ギブスを外した後のリカバリーにおいても優位に回復が早い傾向が見られた。

現時点では、これが何を意味しているのか、そのメカニズムなどについても明らかにされていない。

しかし、いずれにせよ経口摂取したコラーゲンが体内のヒアルロン酸の発現や筋肉量の維持、骨の健康の維持に大きく関係していることは間違いないのではないか、と野村氏。

近年はコラーゲンの原料も注目されており、牛や豚などの動物性由来だけでなく、サメや魚鱗などの海洋由来のマリンコラーゲンにも注目が集まっている。

また、原料の違いによる作用の違いだけでなく、適切な摂取量についてもまだまだ解明されていない部分が多く、研究課題は多いと話した。


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