コラーゲンの定義は非常に曖昧
東京農工大学農学部 附属 硬蛋白質利用研究施設が開設50周年を迎えたことを記念し、2020年10月に「コラーゲン 基礎から応用」がインプレスより刊行された。その執筆にあたり、野村氏が一番苦心した点が「コラーゲンの定義」であったという。
結論からいうと、コラーゲンの定義は非常に曖昧だという。コラーゲン・ゼラチン・加水分解コラーゲンの違いをそれぞれ説明することはできる。
具体的に言えば、コラーゲンは生体に存在している時は三重螺旋構造を持つ。ゼラチンは加熱や冷却でゲル化やゾル化など変性する特徴がある。
そして加水分解コラーゲンはゼラチンを酵素分解やアルカリ分解したものである。しかし加水分解コラーゲンはその濃度が高ければゲル化するものもあり、分子量で加水コラーゲンと定義されているわけではない。
定義は難しいが、基本的にはコラーゲンは動物の体を構成する主要なタンパク質であり、食品や医療、健康食品やコスメにさまざまな形で応用・利用されている。
組織内のヒアルロン酸を増加
野村氏はコラーゲン研究におい、特に「なぜ食べて効果を示すのか」を解明すべく、さまざまなコラーゲンを動物モデルに投与し、骨や皮膚の有効性を明らかにしてきた。
これまでコラーゲンは「肌を潤す」とか「骨の動きを滑らかにする」などの機能性が報告されている。
しかしその一方で、コラーゲンには必須アミノ酸が含まれておらず、アミノ酸スコアは0であり、また分子量の問題などから、コラゲーンが肌や骨に有効なはずがないと叩かれてきた歴史がある。
確かにコラーゲンを経口摂取してもそのまま吸収されることはなく、体内の酵素によってアミノ酸やペプチドに変化して吸収される。
しかしこれらは皮膚の細胞を活性化したり、組織内のコラーゲンだけでなくヒアルロン酸を増加させることが近年解明されており、「コラーゲンを摂取しても意味がない」という説が少しずつ下火になってきているのでは、と野村氏。
骨粗鬆症の予防につながる
近年は各企業において、血中で検出されるコラーゲンペプチドの種類やその含有量などに踏み込んで商品設計やエビデンス構築を行うところも増えてきている。
特に閉経後の女性に多い骨粗鬆症、また高齢化社会の日本において社会問題ともされる「ロコモティブシンドローム」や「サルコペニア」だが、これらの解決の糸口になる点は「疼痛を取る」ところにあるのではないか、と多くの研究者が指摘している。
加齢とともに骨や筋肉が減少しようとも、痛みがなければエクササイズやリハビリなど、回復や補強のアプローチができる。しかし、痛みがあるとそれができないことで、負のスパイラルに陥り、思うように回復を目指すことができなくなる。
一般的に骨量のピークは25歳であり、そこから閉経に向かって緩やかに減少、そして閉経を迎えることで女性ホルモンエストロゲンとの関係で骨量は一気に低下することがわかっている。
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