近年わかってきて興味深い点が、レスベラトロールの腸管での働きである。生体に異物が入ると腸管でグロクロン酸抱合体化し、肝臓でメチル化や硫酸化が起こり、物質が無毒化されるようなメカニズムが働く。
基本的に無毒化された物質は活性が失われ、腎臓から排泄される。しかしレスベラトロールは、腸から吸収される時に抱合体になるが、標的細胞で元に戻り活性を示すことが確認されている。
体内で最も多く存在することができるレスベラトロールグルクロン酸抱合体は大腸がんの増殖を阻害するという報告もある。
抗老化や抗糖尿病作用
さらにレスベラトロールは節制(断食)に似た作用で抗老化、抗糖尿病作用を示す。
これはレスベラトロールが直接サーチュインに働きかけるのではなくフォスフォジエステラーゼ4という酵素(炎症性サイトカインの産生亢進に働く)の働きを阻害するからではないか、と佐藤氏。
そして最も注目したいのがレスベラトロールの「フレイル」に対する作用である。
フレイルは認知機能の低下と運動機能の低下と相関するが、レスベラトロールの認知機能改善や骨密度の改善、および運動機能の改善などが相次いで報告されている。
レスベラトロールの脳機能障害抑制効果については、ボルドー大学が1997年に「赤ワインを適量飲酒するとアルツハイマー病の70%程度が減少」と報告している。
アルツハイマー型認知症の原因であるアミロイドベータの前駆体からアミロイドベータを切り出すセクレターゼ作用をレスベラトロールが抑制するという報告もある、と佐藤氏。
認知機能や運動機能の維持に貢献
他にもレスベラトロールの認知機能に対する試験のメタアナリシス(対象は10研究)でも認知機能改善効果はある程度認められているが、試験件数が少ないため今後のさらなる研究が期待されている。
骨代謝やリウマチへのレスベラトロールのアプローチについては、おそらくレスベラトロールの炎症抑制効果や炎症改善効果によるものが有効と考えられている。
また、近年は骨ミネラルの改善効果も報告されている。いずれにせよ、レスベラトロールはシルバーエイジの認知機能や運動機能の維持に貢献できることへの期待が大きい、と話した。
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