レスベラトロール、脳機能や筋力の衰えの対策に〜ifia2021セミナー

2021年5月12日(水)〜14日(金)、パシフィコ横浜にて「ifia/HFE JAPAN(国際食品素材/添加物展・会議)」が開催された。同展示会セミナーより佐藤 充克氏(山梨大学ワイン科学研究センター・客員教授)の講演「レスベラトロールはやっぱりすごかった!フレイル対策(脳機能、筋力の衰えに)徹底アプローチ!」を取り上げる。


骨密度や運動機能の維持に

高齢化社会の国内において「フレイル」がキーワードとして取り上げられることが多い。

フレイルの問題を考えるにあたり「正しく介入すれば元に戻る(改善する)」ということを認識し、なるべく早期に適切な介入を行うことが必要だ、と佐藤氏は指摘する。

フレイルへの介入の一環としてさまざまな機能性成分が注目されているが、その中でもレスベラトロールは「寿命を伸ばす可能性があるのではないか」と一躍脚光を浴びた成分である。

最近はフレイルの分野、特に骨密度の維持や運動機能の維持にも効果があるのではないかと再注目されている、と佐藤氏。

1939年に日本人の高岡道夫氏が発見

レスベラトロールはブドウの皮に多く含まれる抗酸化成分(ポリフェノール)である。

1992年に「フランス人は脂肪をたくさん摂るが虚血性心疾患が少ない、その理由の一つが赤ワイに含まれるレスベラトロールのおかげではないか(フレンチパラドックス)」という論文が出た。

また1993年の「レスベラトロールのLDL-コレステロールの酸化阻害」に関する論文などが注目を浴びたことで有名になったが、1939年に日本人の高岡道夫氏が発見し命名したことはあまり知られていない。

レスベラトロールは植物(主にブドウ)が紫外線の害から逃れるために体内で産生するポリフェノールの一種である。

食品ではワイン、特にピノノワールやメルローなど皮の薄いブドウから製造されるワインに多く含まれる。

近年は化学合成されたレスベラトロールも多く流通している。

しかし、ブドウ由来のレスベラトロールの方が構造がより複雑で(二量体イプシロン-レスベラトロールを比較的多く含むなど)、種々の抗酸化物質が含まれ、互いに酸化を消去し、より安全性が高い、と佐藤氏。

大腸がんの増殖を阻害

レスベラトロールの寿命延伸作用については、最新の研究によると、老化や肥満による障害予防にレスベラトロールは有用だが、健常な人の寿命には影響がなく、寿命延伸効果はないと報告されている。

しかし、老化によるアルブミン尿症、白内障の減少、そして骨密度の維持には貢献することが確認されている、と佐藤氏。

近年わかってきて興味深い点が、レスベラトロールの腸管での働きである。生体に異物が入ると腸管でグロクロン酸抱合体化し、肝臓でメチル化や硫酸化が起こり、物質が無毒化されるようなメカニズムが働く。

基本的に無毒化された物質は活性が失われ、腎臓から排泄される。しかしレスベラトロールは、腸から吸収される時に抱合体になるが、標的細胞で元に戻り活性を示すことが確認されている。

体内で最も多く存在することができるレスベラトロールグルクロン酸抱合体は大腸がんの増殖を阻害するという報告もある。

抗老化や抗糖尿病作用

さらにレスベラトロールは節制(断食)に似た作用で抗老化、抗糖尿病作用を示す。

これはレスベラトロールが直接サーチュインに働きかけるのではなくフォスフォジエステラーゼ4という酵素(炎症性サイトカインの産生亢進に働く)の働きを阻害するからではないか、と佐藤氏。

そして最も注目したいのがレスベラトロールの「フレイル」に対する作用である。

フレイルは認知機能の低下と運動機能の低下と相関するが、レスベラトロールの認知機能改善や骨密度の改善、および運動機能の改善などが相次いで報告されている。

レスベラトロールの脳機能障害抑制効果については、ボルドー大学が1997年に「赤ワインを適量飲酒するとアルツハイマー病の70%程度が減少」と報告している。

アルツハイマー型認知症の原因であるアミロイドベータの前駆体からアミロイドベータを切り出すセクレターゼ作用をレスベラトロールが抑制するという報告もある、と佐藤氏。

認知機能や運動機能の維持に貢献

他にもレスベラトロールの認知機能に対する試験のメタアナリシス(対象は10研究)でも認知機能改善効果はある程度認められているが、試験件数が少ないため今後のさらなる研究が期待されている。

骨代謝やリウマチへのレスベラトロールのアプローチについては、おそらくレスベラトロールの炎症抑制効果や炎症改善効果によるものが有効と考えられている。

また、近年は骨ミネラルの改善効果も報告されている。いずれにせよ、レスベラトロールはシルバーエイジの認知機能や運動機能の維持に貢献できることへの期待が大きい、と話した。


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