アメリカ、EUで進められるサプリメントの安全性確保とヘルスクレームの法制化

2007年2月15日(木)、東京・虎ノ門パストラルで「第10回健康フォーラム」(財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会主催、厚生労働省等後援)が開催された。
「わが国でも、成分のみならず市販後の安全性確保が急がれる」

「食品の安全性/機能性のバランス〜海外動向を交えて〜」をテーマにした今回のフォーラムでは、まず大濱宏文氏(日本健康食品規格協会理事長)が、「サプリメント制度に関する欧米の最新の状況」と題して欧米視察の結果を中心に講演した。

EUでは、EFSA(European Food Safety Authority:欧州食品全機関)とEC(European Commission:欧州委員会)のHealth and Consumer Protection Directorate General(保健および消費者保護総局)に、またアメリカではFDA(Food and Drug Administration:食品・医薬品局)およびODS/NIH(Office of Dietary Supplements/National Institutes of Health:栄養補助食品室/国立衛生試験所)を訪問して、サプリメントに関して施行されている制度の現状と安全性確保に関して現在実施されている対応についての情報を入手。

アメリカ、EUともに、サプリメントと通常との間で、摂取目的に応じた制度上の明確な区別をして管理していることを、関連法規や定義などを取り上げて強調した。とくに、サプリメントに関しては定義を明確にして、目的を達成するための枠組みを設定し、安全性の確保についての処置に重大な関心を注いでいる点が際立っているとした。

ヘルスクレームの法制化については、サプリメントの法制化とは別の観点から進められており、食品全般にわたる表示についての配慮がなされているとし、アメリカ、EU双方とも安全性の確保が最大の関心事であるとした。

「健康食品の安全性自主基準と機能表示に関する健食懇の取り組み」と題した講演では、藤井幹夫氏(健康と食品懇話会理事)が、企画推進ワーキンググループリーダーとして進めている自主基準案を中心に説明した。

先月開催された「日本健康科学学会シンポジウム」に続いての発表であったが、今回も、エビデンスに裏付けられたすぐれた商品がある一方で数多い怪しげな商品が健康食品全体のイメージを悪くしていることを懸念。安全性や有効性に関する情報が正しく消費者に伝えられ、消費者が正確な情報に基づいて商品を選択できる状況が理想であるが、とりあえずは、「玉石混交」の健康食品の「石」でないことを確認するためのツールとして業界の負のイメージを払拭したいと強調した。

「健康と食品懇話会」(健食懇)としては、錠剤、カプセル状等食品の原材料の安全性に関し、@基原材料または原材料の食経験の程度、A調理・加工法の評価(成分の化学変化の有無および成分含量の著しい変化を伴うかどうか)、B摂取量の評価(各成分の摂取量が従来食品として摂取されてきた量と比較してどの程度となるか)、に基づいてランク分けを行い、安全性評価がなされた商品については、国立健康・栄養研究所のデータベース情報を活用できるものにしたいとした。

藤井氏はまた、講演の後のパネルディスカッションで、健食懇は健康食品を製造・販売する大手メーカーを中心とした39社からなる業界団体であるが、この安全性自主基準については業者の80%をめざしたいとの目標をつけ加えた。

「特定保健用食品の機能評価、リスク評価、製品管理の考え方」と題した講演では、井藤英喜氏(東京都老人医療センター院長・東京都老人総合研究所所長)が、健康食品の市場から利用状況・利用理由などを踏まえた上で、創設から16年になる特定保健用食品(特保)の現時点での有効性・安全性および製品管理の評価の考え方や基準について言及した。

井藤氏は、健康食品の利用者が80%超、別の調査ではこれが90%であることや、東京都の調査で健康食品に関心がある医師は約60%、薬剤師は約90%と、医師の関心は高くないが他の医療関係者は強い関心を持ち使用に肯定的であると解説した。

特定保健用食品については、機能評価(有効性の評価)の考え方や目安等を述べた後、その位置づけや有効性のエビデンスレベル、有効性の科学的実証が難しいことなど、具体的に述べた。

特定保健用食品の安全性評価・リスク評価を含めた製品管理の基本的な考え方としては、@有効成分が化学合成品でないこと、A有効成分が特定されており、その含量が測定可能なこと、B有効成分の含量のみならず、期待される機能も一定の力価であるように管理されていること、C減量購入ルートに問題のないこと、D製造過程に問題のないこと、とした。

特定保健用食品を含めた健康食品の安全な利用法について、厚生労働省や東京都の資料などを参考に具体的に解説。有効性や安全性、製品管理の評価の考え方や基準については、食品化学の急速な進歩により将来的には変化していく可能性もある、との考えを明らかにした。


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