ビタミンD、疾病予防で有用性報告
〜DSMオンラインセミナー


2021年5月25日(火)、web配信にて「第3回DSMサスティナビリティ経営フォーラム 持続可能な食料システムと栄養、健康な暮らし」が開催された。この中から浦島 充佳氏(東京慈恵医科大学 教授)の講演「疾病予防のための微量栄養素のエビデンス」を取り上げる。


ビタミンDの予防医学効果に着目

「白米は栄養が偏り、ビタミンB1の慢性的な摂取不足により脚気が生じるが、麦飯にして、おかずやタンパク質の摂取を増やすと脚気が激減させられる」。

このことを慈恵医大の学祖である高木兼寛氏はビタミンが発見される前に臨床試験で証明し、脚気を撲滅したことで知られる。

食事や栄養素で病気を予防、治療できるという予防医学の実践者でもある高木氏は、後に「ビタミンの父」と呼ばれ、今も日本より欧米において高く評価されている。

こうした微量栄養素の重要性について、浦島氏も数々の研究を重ねている。浦島氏は小児科の臨床医として週5日は患者の診察にあたっており、特にビタミンDの予防医学効果に着目しているという。

ビタミンD、インフルエンザ予防に有用

日本人のビタミンD不足は近年よく知られるようになってきている。ビタミンDは食事由来が全体の10〜20%、残りの90〜80%は日光に当たることにより体内で合成される。

ビタミンDに特に注目が集まるようになったきっかけの一つに、結核の患者が日光にあたると症状が改善する「サニタリー療法」と呼ばれるものがあった。

そのメカニズムについては長い間、解明されなかったが、100年経った2006年に「食事由来でも日光合成でもビタミンDが体内に取り込まれると、ビタミンDはウイルスの複製を低下させるカテリシジンやディフェンシンなどが分泌され、これが結核菌に効果を発揮している」という研究論文が発表された。

その後もビタミンD研究は盛んになり「季節性インフルエンザ」や「肺炎」に対しても、継続的に摂取することで発症を約2割軽減できるといった成果が発表された。

浦島氏が関わった研究では、冬季にビタミンDを摂取することで、季節性インフルエンザの発生率を下げることが確認できた。

気温が低く外で遊ぶことが少ない子供たちにとってビタミンDの豊富な食事やサプリメン、オイルなどを摂取させる事はインフルエンザ予防に有用であることを、国際共同研究として複数の医学誌に発表し認められている。

また、急性気道感染の予防についてもビタミンDの摂取により20%が予防ができるという論文や、風邪やインフルエンザにおいても子どもや老人に関係なくビタミンDの摂取で重症化を防げることを、やはり国際共同研究の研究成果として医学誌に発表されている。

新型コロナ、ビタミンDのヒト試験を開始

浦島氏の専門分野である小児においても、ビタミンDが小児喘息の悪化を予防し、発作を抑制する効果も認められている。

さらに、まだ統計学的な有意差が出せていないが食道がん、胃がん、大腸がんの最初予防にビタミンDの摂取が効果的なのではないか、という研究も行われている。

新型コロナウイルスについてのビタミンDの有効性については、ヒト試験も始まっており、何らかの研究成果がこの秋くらいには出てくるかもしれない、とした。


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