オタネニンジン乳酸菌発酵物、脳機能分野で期待〜食品開発展オンラインセミナー

2021年7月26日〜8月6日、Web配信にて「食品開発展オンラインセミナー」が開催された。この中から(潟iガセビューティケアの講演「オタネニンジン乳酸菌発酵物の開発と機能性」を取り上げる。


有効性の体感に個人差

オタネニンジンとは高麗人参、朝鮮人参とも呼ばれ、古くから漢方薬として使用されてきた歴史のある安全性の高い食品素材で、健康食品素材としての知名度も高い。滋養強壮作用や不定愁訴緩和作用が広く知られる。

有効成分はニンジンサポニン(ジンセノサイド)であり、漢方でよく使用される主根部分よりヒゲ根部分にジンセノサイドは多く含有されていることもわかっている。

広く健康食品に利用されているが、欠点としては有効性の体感に個人差があること。

ジンセノサイドは体内に吸収されると、腸内細菌によって代謝され、吸収活性型「コンパウンドK」という物質に変換されて効果を発揮するメカニズムも解明されている。

コンパウンドKは年々論文が増えている注目成分で、「がん」「生活習慣病」「脳・神経」「炎症」などの有効性が確認される論文も多い。コンパウンドKの最も優れた有効性は過剰な炎症に対する「鎮静効果」とされている。

日本人の約70%が代謝できない

しかし、さまざまな研究の結果、ジンセノサイドを吸収型コンパウンドKに代謝できない人がいることがわかってきている。

日本人は約70%が代謝できないため、多くの人がジンセノサイド(≒コンパウンドK)の効果を十分に得られないのではないか、ということがわかってきている。

つまり、オタネニンジンの効果の体感にばらつきがあるのも、腸内で吸収活性型コンパウンドKへ代謝できるかどうかの差ではないかと考えられている。

この個人差を解消するために、オタネニンジンヒゲ根を、キムチから分離された安全性の高い乳酸菌である「乳酸菌A221株」で発酵させた。

これにより、ジンセノサイドを効率よく代謝させた「オタネニンジン乳酸菌発酵物」を作り出した。この中には「吸収活性型コンパウンドK」も多く含まれる。

抗アレルギーや肝機能保護作用など

「乳酸菌A221株」については多くの乳酸菌からスクリーニングした結果、オタネニンジンをもっとも効率的に代謝する乳酸菌である。

実際に「オタネニンジン乳酸菌発酵物」と「オタネニンジン」をラットに投与し、比較した試験では、前者の方が明らかに早い時間に血中コンパウンドK値が上昇し、吸収率が約24倍になっていることが確認できた。

日本人では吸収率が58倍にも上昇したという報告もある。吸収率が高まったことで健康効果にどのような違いが出てくるかについては、「抗アレルギー作用」「肝機能保護作用」「体脂肪蓄積予防「血糖値上昇抑制」「抗酸化作用」など。

また「インフルエンザ予防」などはオタネニンジン乳酸菌発酵物を摂取することで、オタネニンジンを摂取した時よりも作用が強化され、オタネニンジンの摂取よりも高い効果が得られることが期待されている。

脳機能の改善効果が期待

オタネニンジン乳酸菌発酵物にはさまざまな健康効果が期待されるが、「脳機能素材」としての試験を行なっているという。

現在、脳機能の問題は「ストレスや不安増大による鬱症状の問題」「睡眠の問題」「高齢化社会における認知既往の問題」の大きく3つの分野があるが、オタネニンジン乳酸菌発酵物を摂取させるとそれぞれにどのような影響があるかを考察した。

記憶獲得トレーニングを5日間行なった後、脳虚血状態かつアミロイドβを処置した認知機能低下モデルラット(アルツハイマー型)に、「水」「オタネニンジン乳酸菌発酵物300mg/kg」「オタネニンジン300mg/kg」をそれぞれ投与し、モリス水迷路試験により動物の空間記憶力を測定した。

その結果、「オタネニンジン乳酸菌発酵物」を摂取したラットが最も早くゴールに到達することが確認された。

抗不安作用も確認

オタネニンジン乳酸菌発酵物の摂取でアルツハイマー型認知症による空間記憶能力の低下が抑制できたといえるが、そのメカニズムについても解説。

アルツハイマー型の動物の海馬は神経細胞の多くが脱落していることが確認されているが、オタネニンジン乳酸菌発酵物を摂取したラットにおいては海馬の神経細胞の脱落が抑制されていることが確認できた。

そのため、オタネニンジン乳酸菌発酵物の摂取は海馬部分の神経細胞死を抑制することで空間記憶力の低下を予防するのではないか。

抗不安作用についてもヒト臨床試験が行われている。不安の度合いを測定する一般的なペーパー試験STAI試験を利用し、健常者16名に対し1日1845mgのオタネニンジン乳酸菌発酵物とプラセボを7日投与した二重盲検試験を行なった。

その結果、オタネニンジン乳酸菌発酵物を摂取した群の方がテストのスコアが大幅に減少し、不安が緩和されたことが確認された。

脳機能分野に高い有効性が期待

抗ストレス作用については、健常者16名に対し、1日1845mgのオタネニンジン乳酸菌発酵物とプラセボを9日投与した二重盲検試験を行なった。

その結果、ストレスを与えた状態の後での睡眠の質を測定したところ1日1845mgのオタネニンジン乳酸菌発酵物摂取群はストレスを与えても睡眠の質が大きく低下しなかったことが確認された。

オタネニンジンで効果が実感できない、ジンセノサイドを代謝できないという人でも効果を体感しやすい成分が「オタネニンジン乳酸菌発酵物」で、特に今ニーズの高い脳機能分野には高い有効性が期待できるためぜひ注目してほしいとまとめた。


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