豚由来コンドロイチン硫酸、新たな切り口で提案〜食品開発展オンラインセミナー

2021年7月26日〜8月6日、Web配信にて「食品開発展オンラインセミナー」が開催された。この中から日本ハム鰍フ講演「豚由来コンドロイチン硫酸 機能性表示食品対応」を取り上げる。


日本人の2人に1人が膝の痛みを抱えている

ある程度の知名度と市場を獲得したコンドロイチンやグルコサミン商品は、差別化が難しくなっている。それでも関節向けの商品のニーズは高く、それらを製造したいという企業が多いが、成分選びが難しいという声をよく聞く。

日本ハムでは「膝の違和感」に関する独自調査結果を行い、その結果を報告。期間は2021年6月10〜6月14日、全国の50歳以上の男女2,111人に対し実施した。

設問内容は日常生活での膝の痛み、違和感の有無、どのような時に膝の痛みを感じるか、違和感を覚えるか、膝の痛み、違和感への対処法など。

日常生活で膝の痛みがある人は全体の58%以上で、日本人の二人に一人は当たり前のように膝に痛みを抱えていることがわかった。

さらに、日常生活の具体的なシーンとして「階段の昇降」「歩行時」「正座をする時」「椅子から立ち上がる時」などがあり、例えば商品開発にはこれらをキーワードにすると商品開発のポイントになるのではないか。

ロコモ市場が拡大

また、膝に違和感を感じている人の対処法として、「病院にいく」と回答しているのが全体で23%程度。77%が病院にはいかないと回答した。

年齢を重ねるほど病院に行く割合は増えるが、病院に行く人は多くない。また、何をもしていない人も全体の25%もいるという。

しかし早めに対処すれば重症化を予防でき、さらに年齢を重ねても病院に行かずに済むようになる。このニーズを汲み取る商品を開発することが市場ニーズではないか、と解説。

関節ケアも含めロコモ市場は拡大している。ロコモとは運動きの障害のために移動機能の低下をきたした状態で、進行すると将来介護が必要になるリスクが高くなる状態だ。

ロコモが要因で要介護となる割合は要介護者の22%と報告されていて、早期から予防に務める必要があることは周知の通りだ。

コンドロイチン市場は縮小傾向

現在ロコモに対応している成分には、コンドロイチンを含め、ヒアルロン酸・コラーゲン・グルコサミンなど10成分程度ある。

市場も700億円を突破していて、2028年には800億円近くまで拡大することが予測されるが、実はコンドロイチン市場は縮小傾向にある。

コンドロイチン市場が縮小傾向にある背景には、コンドロイチンがすでにマンネリ化していること、そして原料である「サメ」の捕獲が難しくなってきている(サメの供給不安)からだという。

そこで注目してほしいのが「豚由来のコンドロイチン硫酸」と紹介。膝関節向けのサプリメント原料には、コンドロイチンの他にコラーゲンペプチド、エラスチン、グルコサミン、プロテオグリカンなどがあるがいずれも魚介由来が多い。

豚由来のコンドロイチン硫酸、ほぼ無臭

一方、エクオールなど植物性由来のものもあるがまだ機能性表示食品対応しているものがない。

畜産物由来のコラーゲンペプチドやヒアルロン酸もあるが、「豚由来のコンドロイチン硫酸」は畜産物由来の中でも機能性表示にすでに対応しているため原料供給面からも狙い目である。

さらに、従来のコンドロイチン商品の多くが「機能性表示食品に対応していない」「臭いが強い」「剤形が限られている」といったデメリットがあった。

しかし、「豚由来のコンドロイチン硫酸」は機能性表示に対応できるだけでなく、「ほぼ無臭」で「さまざまな剤形のものが作れる」という。

そもそもコンドロイチン硫酸は軟骨に多く含まれる成分で関節のクッション材としての役割を果たす。軟骨だけでなく、関節、靭帯、皮膚、血管、眼球、角膜、粘液等の多くの部分に存在している。

さらに注目すべきはコンドロイチンの組成である。コンドロイチン硫酸は「2糖ユニット」といわれる状態で構成され、硫酸基の位置や数によってA〜Eに分類される。

しかし、ヒトと豚のコンドロイチンユニットは同じ「A,C」から成り立ち、サメやイカなどの魚介類のコンドロイチンは「C,D」または「E」などユニット構成がヒトとは異なることまでわかってきている。

医薬品として使用されていた

また、加齢とともにコンドロイチン硫酸は誰でも減少するが、その中でも「A」と呼ばれるユニットのコンドロイチン硫酸の減少が著しいことも解明されている。

豚由来のコンドロイチンはその組成がヒトと同じだけでなく、「A」ユニットが多く含まれているため、このような側面からも豚由来のコンドロイチンに注目が集まっている。

そもそも豚由来コンドロイチン硫酸は医薬品として使用されていたため、健康食品素材として原料を確保することが難しいとされていた。

しかし、日本ハムでは独自の原料供給ルートを確立し、安定供給が可能にしたという。

機能性表示食品として受理

また、豚由来コンドロイチン硫酸はそもそも医薬品だったため健常者を対象にした臨床データが取得できなかったが、この点についても自社で健常者を対象とした臨床データを取得済。

さらに最終製品での分析法も独自に立ち上げたことで、2021年3月に研究レビューでの機能性表示食品として受理された。

ヒト試験については、42歳〜65歳の膝に軽い違和感のある男女に対し350 mg/日(コンドロイチン硫酸)を3ヶ月間摂取してもらった。その結果、階段の昇降、正座時の違和感が有意に改善した。

ちなみに食品では摂取目安量が350 mg/日(コンドロイチン硫酸)であるが、医薬品は1560mg/日となっており、摂取量が少ない。

そのためハードルが低いということが「医者に行くほどでもない」「医薬品を取り入れるほどでもない」という健常者、あるいは軽度な違和感への軽減に最適なのではないかという。

「原料の供給」についても問題ない

ちなみに最終製品名は「P-コンドロイチンNHZ」で、コンドロイチン硫酸配合量は全体の65〜85%、摂取目安料は616mg/日(コンドロイチン硫酸としては350 mg/日)、表示例は「豚軟骨抽出物」とできるという。

研究レビューでの機能性表示を取得しているため、他の機能性成分とのWクレームなども可能、また臭いが少なく溶解性が良好でさまざまな食品に対応できるというメリットもある。

もちろんコンドロイチンとして最も懸念されている「原料の供給」についても問題ない。また価格も、サメ由来と豚由来で大きな差もないという。

高齢社会と膝関節の問題は切り離すことができない。マンネリ化しているとされるコンドロイチン市場だが、新たな切り口での商品提案は社会ニーズにも応えられるものになるのではないか、と話した。


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